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【2019シーズンJ1第1節】湘南ベルマーレvs北海道コンサドーレ札幌マッチレポート

 長いオフシーズンも明け、週末が待ち遠しい季節が到来です。第1節について、北海道コンサドーレ札幌目線でのマッチレポートを書いていきます。
 チームとして18年もの長きにわたり開幕戦は勝利を収めることが出来ていないこと、そしてここ4年間は開幕戦は無得点試合となっていたこと。昨シーズンの好成績による期待値の高さがある反面、長期遠征を継続する中でシーズン開幕へ突入せざるを得ないことでのハンディキャップは今年も変わらず、苦戦を強いられる予感は拭えない試合でした。

向こうのゴールまでは果てしなく遠い景色の中、素晴らしいピッチコンディションに感動すらおぼえる。

 まだ2月ということもあり、16:00キックオフの試合は日没を挟むためまだまだ肌寒い。風も強く、声を張り上げていないと震えてしまうコンディションでした(雨予報から曇になり本当に良かった)。写真の通り陸上トラックもあり、視点も低めなので、向こう側のゴール付近に関してはほとんど見えません。失点の生まれたシーンはいずれも向こう側(HOME席側ゴール)だったため、1失点目については歓声で状況を把握しました。
 羨ましいと感じたのは、芝の状態の良さです。帰宅後にDAZNで俯瞰したときにも思いましたが、試合終盤まで良好に保たれたピッチコンディションには、普段からの手入れを思うと頭が下がるばかりです。

ベルマーレ選手紹介〜監督出演ムービーの流れ

 開幕セレモニーに市長・町長の多数参加、そして多くのサポーターも参加したムービー、商店街におけるグリーンカラー。同エリアにプロ野球チームもあり、かつホームタウンが広大になったコンサドーレに比べると、ベルマーレというクラブの活動密度の濃さ、浸透度の深さを感じました。

※選手紹介の際に出てくる各キャッチフレーズに、かつて週刊少年ジャンプに連載された名作漫画↑を思い出しました。各選手の特徴やらストロングポイントをイメージする上で、こういう風にしてしまえば新規層にもわかりやすいですよね。
↓に全キャッチフレーズ紹介があります。
http://www.bellmare.co.jp/210849

0-2(前半0-0)という最終スコアについて

 攻撃的サッカーを謳う以上、90分を無得点で終えてしまった事実は正直痛い。というのも、今後もコンサドーレに対しては以下2つの守備意識を各チーム持ってくることが想定されます。

①ネガティブトランジション及びDF・GK起点のビルドアップにおいて、前線からプレスを仕掛け、ボランチやサイドバックを主な取りどころにおきながらパスルートを誘導、有効なボール保持をさせない。ストーミング。
②ペナルティエリア付近中央において数的優位を保ちながら、選手間の距離が短いブロックを形成。ボランチやサイドバックにボールを持たせながら、トップへの楔のパスをインターセプトする。背走しながらの守備はプレスバックに限り、ブロックの外側をボールが通過するように待ち構えて守る

 基本的にはリスクを負うことを厭わず攻撃を展開するのがペトロヴィッチ監督の哲学です。J1では他に、ポステコグルー監督率いる横浜F・マリノスなども、リスクを負いながら攻撃的な組織サッカーを持ち味とします。しかし両チームともにその攻撃的なスタイルが故に、90分間の中で無失点を想定した試合運びはしていません。勝利のためには、2点以上取るイメージを共有しながら試合を進めていくことが肝要です。逆に言うと、失点が出来ないというネガティブなイメージの刷り込みがされていくと、監督の繰り返す"チャレンジ"や"ミスを恐れない"というスタンスが減衰、チーム内の統制が取れなくなりかねません。中途半端に個々の意識がズレていき、3ラインの距離が広がってしまい、カウンター戦術を優位に進められ徐々にボール保持を失う悪循環に陥ることが想像できます。
 次節浦和レッズ戦ではそれ故に、多くのチャンスを作り、何としても得点を上げることで“コンサドーレは点が取れる”という良いイメージをインプットし直す試合と出来ることを期待したいです。
 

攻撃面での収穫と課題

 前半に関しては、昨シーズン同様にボール保持を高めながら前線に人数を割いていく、そしてピッチを広く使うことで相手の要守備範囲を広げ局面を希釈化させる、という狙いを随所に見ることが出来ました。
 その中で、①後方でボール保持をする際に相手のトップラインを昨年よりも引きつけてボールを離す②相手を背負った味方への縦横パスに対しては、受け手出し手以外により優位な視野を持った3人目の選手が必ず関与しワンタッチで叩き、ビルドアップしていく③ポジティブトランジションにおいては縦に早いタイミングでボールを付ける、等の+αの試みが昨シーズンよりも色濃く見て取れます。
 対して、後半はベルマーレの守備面での修正が的確に作用し、流れの悪い時間帯が続きました。前線からプレッシャーをかけながらパスコースを誘導し奪う場面と、ブロックを形成して待ち構える場面、その選択が非常に統制の取れたものになったように思います。ハイプレスをかける際には、宮澤の横パス、進藤の縦パスについては特に狙いどころにされていたと思います(インターセプトだけでなく、トラップ際やキープに入った後の挟み込みまで集中した勤勉な守備でした)。
 もちろん、コンサドーレの各選手狙われていることは察知していたと思います。ジェイへの縦パスは途中でカットされないようにロブパスにしたり、荒野を経由するパターンを増やすなどおそらくコンサドーレにも準備はあったものと思われますが、特にジェイへの守備対応が効果的で、なかなか思う通りの形が作れていませんでした。

 上図は、前半途中~後半において湘南守備陣が極めて有効なブロックを形成し守備がなされた際の選手配置一例です。
 右サイドの早坂が前を向いた状態でボールを保持し、ロペス、ジェイ、チャナティップがボールに向かって受けに行く形。結果、早坂は中央の荒野→深井を経由し最終ラインまでボールを押し返されます。この試合では、押し込んだ際に両サイドのスペースをあまり効果的に活用できていなかったことも挙げられます。相手DFラインの前で常にアクションを繰り返していたため、体の向きも悪く余裕を持って待ち構えられてしまいました。
 特に右サイドは打開できる場面が少なかったのですが、ブロックに対しロペスがハーフスペースで待ち構えジェイとの距離感を大事にしていたように思えます。早坂は個で縦を突破するタイプではないので、ロペスや荒野・進藤とのコンビネーションによりどちらかというと中央方向へベクトルを持った動かし方をしていました。そのため中央が更に密集し、ゴールへの距離は近い位置でボールを持てていても、なかなかシュートを打ち切れなかったのはこのあたりも要因なのではないかと思います。5-4-1の形でコンパクトなブロック形成をされた際でも、守備のギャップを生み出すために横幅を広く使うことで、もっと多彩な攻め方が可能になると考えられます。

守備面での成長と課題

 昨シーズンに比べ、相手のビルドアップに対してのパスコース限定、誘導によって狙いどころを決めた守備の形は作れていたように感じました。より良い位置でボールを奪うことでチャンスに繋がる場面が、今後増える予感がしています。
 他方、明確に狙いをもちながらゲームメイクをしてくるベルマーレに対し、守備全体に欠陥があったというよりも、特定場面での守備対応の約束事、チーム原則の徹底が不足していると感じました。例えばボールを奪われ攻守が切り替わった瞬間、後方で数的劣位になりうる状況でもボールホルダーに対して”ボールを奪うプレス”をかけてかわされる、パスをはたかれ突破される、という場面が散見されました。
 また、1失点目の起点となった左サイド菅の1対1についても、中央の人数は足りている中での守備対応としては判断が悪かったと言わざるをえません。この場合は相手に中へ侵入されることとノンプレッシャーの中でクロスの供給をさせない距離を取って守備をするべきでした。
 多くのピンチはファーストプレスを掻い潜られたことをスイッチに相手を加速させ、自陣へ背走しながらの守備に臨むことで生まれたものです。カウンターによる数的劣位での守備は今後も頻度高く発生しうる事象ですので、シーズンを戦う中でプレー選択の精度を高めながら、ブラッシュアップしていくことが必要です。

第2節(AWAY浦和レッズ戦)に向けて

 レッズが引き続き山中を起用してくるのであれば、右サイドの攻防が試合全体の主導権争いの鍵となってくるかと思います。山中を低い位置に押し込むために、ロペス・ルーカスの組み合わせや岩崎・鈴木武蔵の起用などもひとつの手です。守備安定を優先するなら右SHは早坂かと思いますが、その場合は鈴木武蔵を右CHに置くことで、相手3バックを外に広げられるような構成にするなど、そんなバリエーションも見てみたいところです。
 戦力においてはリーグトップクラスのレッズも、第1節まではあまりうまくいっていない部分も多いチームなので、ここで波に乗せてしまわないように、しっかりとした対策をもって試合に臨んでもらいたいです。そして、Jリーグ最高ともいわれるレッズサポーターを、一瞬でも沈黙させられるようなゴールを期待したいと思います。

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