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「党首公選」って何?(後編)

こんばんは、以上の前回の記事では、党首公選とはなんなのかという部分と、党内民主主義に必要な二つの要素について、簡単に書きました。

今回はそれを踏まえて、今の日本の主たる政党の党内民主主義がどういう状態にあるのかを考えてまいります。

表を作りました

言葉で説明しても分かりにくいと思いましたので、以下のような表を作りました。

基本的には図の通りなのですが、まずは以下にちょっとした説明を書いていきます。

二つの軸で表を作りました


まず、前回の記事を踏まえまして、二つの軸を使って表を作成しました。
一つは横軸の、党内民主主義の制度がどうなっているのかという部分です。

左に行けば行くほどに、党首公選的な考え方が強い制度となっており、右に行けば行くほどに、共産党のような、いわゆる民主集中制の考えが強い制度となっています。

もう一つの軸は、縦軸の「可視化された派閥」の多い少ないを示しています。
上に行けば行くほどに、党内に存在する派閥が多く、下に行けば行くほどに、党内に存在する派閥の数が少ないということです。

だったら「可視化された派閥」という変な言い回しではなくて、「派閥」で良いじゃないかと思われるかもしれませんが、これにはちょっとした事情があります。
派閥というのは、目に見えて存在しているものばかりではないからです。
民主的な組織であれば、派閥の存在が表面的に可視化されやすく、結果的に派閥が多く見えてきます。
しかし、非民主的な組織になると、潜在的な派閥の存在というのがあり得てきます。

表面的には現状の体制に不満は無いように見せているが、実は一定数、現状の体制に対して不満を持っているグループが、潜在的に党内に存在しているという場合があります。(例えば、新立憲民主党の枝野氏代表時代の、旧国民民主党派閥)

なので、一口に派閥が少ないと言っても、目には見えないだけで、実際には派閥のようなものが存在している可能性もありますから、あくまでも、可視化されている(対外的に目に見えている)派閥の存在が多いのか、少ないのか、という書き方を以て、その政党の党内民主主義の度合いを示しています。

枝野立憲も表に加えています

基本的には、2023年現在に日本に存在している政党を書いていますが、例外的に、かつて存在していた旧立憲民主党(いわゆる枝野立憲)を、表に加えています。
新立憲民主党(いわゆる泉立憲)との書き方の差別化として、旧立憲のロゴには枝野さんの写真を、新立憲の写真には泉さんの写真を入れています。

またこれは、党首自身の考えというよりは、旧立憲、新立憲それぞれの政党としての論評ということで書いています。

含まれていない政党もあります

現在、日本のいわゆる「国政政党」には、公明党、NHK党、参政党、れいわ新選組など、も含まれていますが、筆者自身がこれらの党への認識が浅いという点と、表の分かりやすさという意味を込めて、これらの政党については表には記載をしておりません。

各政党のファンの方、支援者の方、誠に申し訳ございません。

党首公選の左端=一人一票の党首選挙

さて、表を見ていきますが、自民党や国民民主党、ひいては立憲民主党などがこの表の左端に来ていないのはおかしいとお考えの方もいるでしょうが、この理由は簡単です。

確かに、これらの政党は党首公選の一定程度の仕組みが存在しています。
しかし私とすれば、これらの仕組みですら現状維持的で、不十分と考えています。

理由は簡単で、これらの政党はフルスペック代表選挙を制度として保持しているとは言っても、党首選挙において、一般党員が一人一票ではないからです。
例えば日本維新の会は、あくまでも制度上は、一般党員は一人一票を持っており、そういう意味では、他の政党よりもより制度としての党首公選の濃度は強いため、左端に書いています。

こことの相対で考えた時、一般党員がポイント制の自民、立憲、国民民主などは、特筆して制度面において党首公選の濃度が強いとは言えず、かといって日本共産党のように、党首公選から全く乖離しているわけでもないので、右でも左でもなく真ん中に座しています。

仮にこれらの政党が、これまでよりも一般党員の一票を強くするなど試みを行えば、維新のような一人一票とはいかないまでも、どんどん左側に行くものと思います。

現状、派閥がまともに機能しているのは自民と新立憲のみ!

表題の通り、自民と新立憲以外の政党には、まともに可視化された派閥が存在していないという認識を持っています。

理由としては、直近の党首選における候補者数などが影響しています。
立憲よりも自民の方が上にあるのは、数十年培ってきた党内政治での経験値という意味において、立憲は自民に劣ると考えてのものです。

ともあれ、この二党は相対的に民主主義の熟練度が高い状態にあり、腐ってもかつての二大政党だなあと、そう思います。
民主主義の制度については現状維持的ですが、それはプラスでもマイナスでもないと思うので、総合的に、私の中での評価は高めです。

国民民主は新立憲の下位互換!

こういうことを書くと、一部の方にお叱りを頂きそうですが、あえて書きます。

一部では党内民主主義が優れていると思われている国民民主党ですが、直近の代表選挙の候補者数然り、上記のような風聞を見ていても、派閥の存在の多さは立憲や自民に劣っていると見ています。

一部では、前原氏が玉木氏とは別の路線を持っていると目されますが、他党と比較して、それが可視化された派閥という単位で存在しているのかと言えるのかと言えば、微妙なところだと思います。

そして、制度面で言えば、良くも悪くも自民並み、立憲並みの党首公選の制度にすぎず、これは必ずしも悪面とは言えませんが、その両党と比較して派閥の数で劣っている以上は、冷徹に評価を下すと、総合的には新立憲の下位互換に位置しているのではないかと考えています。

維新の会、制度は素晴らしいが……

そして、唯一左端にまで来ている日本維新の会ですが、派閥という意味では致命的です。

実質、馬場氏路線が党内の主流を占めており、党内にまともに派閥と言える存在が存在しているようには見えないからです。制度は優れているとはいえっても、内実は信任投票の党首公選でしょう。

直近の党首選挙では、三人もの候補が立候補したものの、実質的に、馬場氏ありきの出来レースという感は強く、いわゆる選挙干渉に類することもあったので、馬場氏以外の他二候補が、公然と派閥を形成できているとは言い難いでしょう。

これらを鑑みて、日本維新の会には可視化された派閥というものが存在せず、巨頭の馬場氏ラインと、その他多弱が点在しているという評価が正確ではないかと思います。

制度面は極めて革新的で評価に値するものの、肝心の運営手法がそれにそぐわったものとは言い難く、総合的には、立憲、国民民主などと同程度と私は評価しています。

先には立憲をそれなりに評価したものの、大きな目で見れば、
維新、立憲、国民民主は横並びのドングリの背比べであり、
これら三党が小競り合いをしたところで、大した意味は無く、不毛と考えます。
なぜならばいずれの政党にせよ、自民党を超克するような、新しい党内民主主義の在り方を示すには至っていないからです。

社民党はそもそも、まともに党首選挙が機能していない!

社民党の党の党首選挙の制度は、そこまで劣ったものとは思いませんが、
何分、直近の党首選挙を見ていても、選挙自体が成立していないので、
このあたりの座標かと思います。

旧立憲は共産の劣化コピーだった!

そして、唯一表に載せた旧立憲です。
新立憲はそれなりに評価していますが、旧立憲は別です。
今更、過去のことを取り上げて立憲を否定する意思は無いですが、
新立憲との違いという意味で書かせていただきます。

まず旧立憲は、自民党並みのフルスペック代表選挙すらも、その実施を忌避しており、制度面において、最低水準にすら位置していなかったというのが確かなところだと思います。

また派閥という意味でも、結党者の枝野氏の影響が強すぎて、派閥という存在が鳴りを潜めて、実質的には枝野私党の様相を示しており、表では下の端に書いています。

まさに、総合的には共産党の民主集中制の劣化コピー、端的に言えば、マイルドな民主集中制であったかと思います。

ここから、立国合流協議における玉木氏の活躍や、合流後の旧国民民主組の活躍、そして衆院選敗北後の枝野氏の「英断」もあって、緩やかに制度面の改善、派閥の可視化に繋がり、ようやく現在の姿(新立憲)になったというのが、私の見立てです。
この為に尽力したすべての人たちに敬意を表します。

共産は、ハッキリ言って論外!

あえて断言しますが、党内民主主義の観点から考えた時に、
日本共産党は全てがあり得ません。
制度面でも、広い合意形成をするという観点は弱く、
また、派閥の存在は公然と否定されている有様です。

日本共産党はこの百年、これでやってきたわけですから、今更これを改革するのは無理だと思います。下手に変えようとすれば党が崩壊するかと思います。そういう意味で私は、共産党は無理に変わらなくても良いのかなあと思いますが、昨今、共産党の閉鎖性が、共産党支持者、野党共闘支持者からも批判されている状況を見ると、なかなか難しい状況にあるなあと思います。

まとめ

さて、ざっと表に記載したすべての政党を見ていきましたが、
最後に、私が思う理想の党内民主主義を体現する政党はどういう政党なのか、軽く書いていきます。文句ばかりではいけませんからね、ビジョンも語ります。

表の左上に「筆者の理想の政党」ということで書いていますが、
制度面では、日本維新の会のような、一人一票の形式、それと同時に、自民や立憲のように、一定の派閥を保持するという具合です。

正直、現実的にはここまでの政党を構築することは至難と考えますが、妥協案として、維新の制度と立憲の制度との中間程度に、一般党員の一票を強めた制度の整備と、立憲程度の派閥の形成という水準ならば、現実的な範囲で目指せるのではないかと思います。

いずれにせよ、現状の日本において、私の理想とする党内民主主義を保持する政党は存在していません。
それぞれ違いがありますが、ドングリの背比べです。
そんな中で小競り合いをするのではなくて、例えば百年後の党内民主主義のスタンダードを新しく作る気構えで、党派的ではない、未来的な議論に発展する一石となればと、この記事を捧げます。

この記事のサムネイルは、1924年に大同団結し、わが国初の普通選挙制度を形成した護憲三派の各党首です。
まさにこの護憲三派の如く、百年後の「当たり前」が形成される流れになることを期待します。

以上を以て、前後編ともに終わります。ありがとうございました。

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