可藤 尚

古き友を捨て去り、頑固故、命の辺境まできてしまった。時が満ちて友の温かさを知る。いつ死…

可藤 尚

古き友を捨て去り、頑固故、命の辺境まできてしまった。時が満ちて友の温かさを知る。いつ死んでもおかしくはない歳になり、辛く暗きこの世は、結果、自分の感じ方一つと知れり。タルコフスキーの映画を愛している。仕事に疲弊する日々。隙間時間に本を読む。セネカ。宮沢賢治。土方巽。リルケetc.

最近の記事

限られた時の中で

昨年、父が癌によって七十二年の生涯を終えた。 母は住み慣れた長野を離れ、姉妹たちの住んでいる札幌へと越した。 父と母は離婚してから三十年以上経っており、それぞれに新しい伴侶を持った。 たまたまではあったが、父の死後に母は老いた身でありながら二度目の離婚を決めて、命の最後の時間を生まれ故郷で過ごしたいと言い、実行に移した。 別れて時が経ってはいるが、父が死んで母の心には寂寞としか言いようのない穴が開いてしまったように感じた。 この世を去るというのに、別の道を歩んでいるがために、

    • 海を見てその深さを知らず

      小説を読むのであれば、古典が良い。 古く残り語り継がれたものは 時の風化に耐え、行き届いた構造をもつ建築物のようである。 歳を重ねてくると、そもそも作り話に乗れなくなる。 人は、社会生活の中で 現実に押し流されていき、想像力が錆び付いてくる。 自己を失い、大切なはずの、少年の頃の眼差しや感覚を忘れてしまう。 昭和に起きた戦争は、歴史のこととして認識する現代人は 平和であるのに、絶えず争う。 身内と、妻と、友人と、恋人と、上司と、隣人と、、、。 そして、精神

      • 契約社員という生き方について

        この記事は様々な現場で働いている契約社員の方々の「考える」きっかけになってくれればと、淡い希望をもって記します。(正社員でバリバリ働いている方や個人事業主の人たちには不要な内容となります。笑) 私自身が現在契約社員の身であり、ハイエースに乗って都内の医療現場に医薬品の配達をする仕事をしている。 勤めて間もなく10年。一年ごとの契約更新をしつつ、今に至っている。 所属する派遣会社には正社員登用制度はない。どこもそうであろうが、契約社員は昇給もなく、退職金もない。ほぼほぼル

        • 落花狼藉①

          「落下狼藉」とは、物が入れ乱れ、取り散らされてる意。 何かを発信したいと思っても、いざ書こうにも纏まらずに文章が中々書けない今日この頃。 雑文に成りかねないから、この「題」を半ば言い訳にして付けた。 父の病気にふれ、最近は医療系などの本を読んでいる。 海外のホスピスに勤める看護師の女性の発言を集めた本の中に 「親密さとは距離である」という言葉があって、とても深みを感じている。 どんなに親しくても、人と接する上で必要とされる、忘れがちな感覚。 それが家族であっても

        限られた時の中で

          病と共に生きる父

          年末に体調を崩した父。年明けの検査入院で横行結腸癌であることが判明した。 cStageⅣ。家族の予想を超える結果となった。 告知を受け、父にとって当たり前の日常の色彩が変わる瞬間だったことを思うと、かける言葉が見つからなかった。兎にも角にも「励ます」しかないと思い、LINEでのやり取りをしている。 SNSで「癌サバイバー」の方たちの言葉を知った。闘病に当たり、何よりも「考え方」が大切であると言う。健康的な食事はその次ぎに来るし、治療や医師の重要性はむしろ下位にあるほど。

          病と共に生きる父