「もしときサバイバル術Jr」ファイヤー解説(指導用)
導入
この講習では、たき火を作れるようになるというゴールがあります。
火を使うというだけで、子どもたちのテンションは上がり気味になりますが、その前になぜ火を起こせた方がいいのかということを考える時間を持ちたいです。
冬に大災害が起こった時に、電気やガスが止まったらどうやって暖を取るのか、雨雪や津波などで衣服が濡れてしまったらどうやって乾かすのか、など具体的にたき火を起こせることで、命をつなぐことが出来るイメージがわけば、習得したいという意欲につながるのではないでしょうか。
それと同時に、火を使った経験がほとんどない子たちと、火を使うリスクについて事前に話し合っておくことで、火を扱う時にはどのような注意をしないといけないのかを認識してもらうとよいと思います。
自主的に行動するために大切なのは、指導者が火を使う前に注意しないといけないこととして、禁止事項を提示して守らせるのではなく、みんなでコンセンサスをとってそれを守るという形にすることです。
ステップ1 マッチで火をつける
いまどきマッチを使わないでしょう、という突っ込みが入りがちですが、マッチをあえて使う理由があります。
それは、火との距離感を知ることです。
どこまで火が近づいたら熱いのか、どのように持てば熱くないのか、などを知っておかないと、自然学校業界では伝説になっている、家がオール電化のために火を見たことがなく、たき火を見てきれいだと火を触りに行ってやけどをしたなどということが、起こりかねません。
26ページの上の図では、マッチの擦り方の選択肢がありますが、どちらでも火はつけられるはずです。
ただ、限られた本数しかない場合に、折って無駄にする可能性を減らすためにはどちらがいいのかということを、体験してみて考える機会として発問しています。
その下の設問も、同様で3つのパターンを基軸にいろんな向きを試してみると、こうした方がいいという答えが導き出されるのではないでしょうか。
体験を通じて発見できることは、体験で自ら学び、27ページのような体験では知りにくいことは、知識として教えるという構成でこの本は進んでいきます。
ステップ2 小枝を燃やして、火をキープする
28ページに書いてある設問も、少し知識のある子ならやる前に答えが出てくるかもしれません。
それでも全部を試してみましょう。
そうすることで、これは正解ではないと思っていたことが、これでも正解だったとか、間違いと思ってた方法でつけると火が長持ちした、などの新たな発見があるかもしれません。
一つの考え方に固執するのではなく、いろんなことを試して柔軟に考える癖をつけたいです。
ここでも29ページの設問のような知識については、しっかり教えることで、今後のステップでうまくいかなかったときに、何が足りないのかという原点に立ち返ることが出来ます。
ステップ3 たき火をする場所を選ぶ
少し火に慣れてきたところで、改めてたき火をしていいところ、ダメなところを活動場所を見ながら確認をしていくと、導入で話した危険性などの理解がより深まると思います。
また、楽しくなって次はどんな課題が出されるのだろうかと、指導者の話を前のめりに聞く体制になったころに、31ページに記載の環境のことや、防火対策のことを話しておくといいと思います。
ステップ4 安定したたき火をつくる
ここからは、トライ&エラーの繰り返しになります。
燃えやすいものはどれか、より太いものを燃やすためには何が必要か、火の三要素を確実に持続するにはどうしたらいいかなど、様々な工夫をして自分で学習する時間です。
うまくいかない子でよくあるパターンは、燃えやすい燃料の確保が足りず、太い枝などに引火する前に燃え尽きる、空気の通り道が塞がれて不完全燃焼して白い煙が上がっている、などです。
指導者は、まだ理解が浅いと思う子に対しては、時にはこれとこれのどっちが燃えやすい?などと選択肢を与えて発問したり、火の三要素のうちどれが足りてないのかを一緒に考えたりして、トライしてみたらよい課題を見つけるサポートをするといいと思います。
間違っても燃料の組み方などを指導者が得意げに教えるなどということは無いようにしましょう。
ここで学ぶべき本質は、火を要領よく起こし、たき火にするノウハウを知ることではなく、火の性質を理解して、どんな条件でもたき火が作れるようになることです。
指導者の自己満足のために学びを奪わないようにしましょう。
ファイヤーマスター検定
34ページの課題を提示して、見事にクリアすると実技は合格です。
協会の認定講習では筆記試験があり、それも合格するとファイヤーのワッペンが授与されます。
合格したとしても、35ページのような課題を次々と提示していくことで、ファイヤーの学習は継続していきます。
いざという時に、たき火が必要になったら、君たちが率先してすぐに火を起こせるように、時々練習をしておこうというミッションを与えることも学習の継続の動機につながるかもしれません。
ちょっと難易度が上がった次の目標を自分で立てて、練習し、出来るようになることを楽しいと思えるようにサポートをしていきたいですね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?