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深く吸い込む緑

先日、植物園に行った。
前々から気になっていて、やっと機会ができた。

自分は植物を見るのが好きだ。
と言っても、自宅で育てているわけではないし
花屋に通っているわけでもない。
道端に生えてる雑草とか、街路樹とか
歩いているときになんとなく見るのが好きなだけだ。

調べものをしているときに、たまたまその植物園を知った。
植物園なら一人でぼーっと木を眺めていても変に思われない。
そんな風に、ただそれだけで行きたくなった。

園内に入るとすぐに緑の匂いがした。
ほんの少しマスクをずらして、すぅーっと鼻から吸う。
ああ、久しぶりだ。
植物や土の匂いも、こうやって思い切り息を吸うのも。

木々の間を歩く。
どこを見回しても緑で、空も緑色に覆われている。
どの木も自分を見下ろしている。
もし、この葉っぱ一枚一枚が目だったら
なんてことをふと考える。
そうすると風で揺れる葉っぱたちが、瞬きをしているように見えてくる。
ざわざわ、ざわざわ
会話しているみたいだ。

怖い、というのとも違う。
ただ緑の濃い匂いを吸い込んで、
彼らが生きているという当たり前のことを思い出した。
道端に生えている雑草も街路樹も。
ずっと知ってはいたことだけど、なぜか新発見のように感じた。

園内を歩き回って気になる植物をじっと眺めて。
人によっては退屈に思えるかもしれないけど、
自分にとってはすごく充実した時間だった。
数年分の緑を見て吸い込んだ日だった。

季節が変わればまた景色も変わるだろうなぁ。

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