片瀬ケイ@ダラス、テキサス

在米のライター、翻訳者。日常のどうでもいいような、どうでもよくないこと。とりあえず書い…

片瀬ケイ@ダラス、テキサス

在米のライター、翻訳者。日常のどうでもいいような、どうでもよくないこと。とりあえず書いておこう。Yahoo!ニュース エキスパートのブログはこちら→https://news.yahoo.co.jp/expert/authors/katasekei

最近の記事

旅する練習

いやー、一昔前なら高齢者にカテゴリーされていた還暦のワタシ。アメリカに住んでいるので、日ごろは周囲から年齢を意識させられるようなことはないのだけど、自分自身の意識の中で「やっぱ、年だわ」と感じることが増えた。 30代で「オズの魔法使い」くらいしか日本人には知られていない州に大学院留学でやってきて、卒業後は労働ビザを取るためにミシガン州で奴隷労働。内気で貧乏なアメリカ人ミュージシャンと結婚することになり、テキサス州に移り住んで、生活を支えるために労働者生活を続けた。 こんな

    • 夏の終わりの快挙!

      高齢者施設で、クッキー・モンスターとなっている88歳の母。認知機能に難ありで、大腸がん患者なのに、なぜか食欲旺盛でおやつの要求が激しい。部屋でやることがないから、食べるしかないと言い訳をするので、「塗り絵でもやる?」と聞いてみた。「やる!」という元気な返事は戻ってきたが、あまり期待はしていなかった。 1年ほど前だったか、塗り絵をやりたいと母が言うので、はりきって豪華50色の色鉛筆セットと、趣や難易度の違う塗り絵ブック3冊をすぐに送った。本にそのまま塗りたくないというので、施

      • ミッシェル・オバマさんの演説を聞いて、アメリカらしさを思い出した

        アメリカでは民主党の正式な大統領候補者を指名するための全国大会が行われている。久しぶりにミッシェル・オバマさんの演説を聞いて、スカッとした気分になった。 相変わらずよく通る声で、いかにも胆力があるって感じ。繰り返し訴えるのは、「良識と思いやりをもって、誰もが自分なりの成功や幸せをつかむチャンスがある社会」、そして「仕事や生き方、誰を愛するか、誰と結婚するか、何を信じるかを一人ひとりが自由に決めて、それをお互いが尊重する社会に向かって進んでいこう」ということ。 民主党がいつ

        • 予防接種も費用対効果だって

          米国は8月がワクチン啓発月間! 日本と比べて健康診断のメニューは貧弱だし、人間ドックなんて概念はなくて、医療費が超お高い米国だが、予防接種に関しては太っ腹なところがある。たいていのものは、自己負担なしで接種できる。 私も重い腰を上げ、近所の薬局で帯状疱疹の予防注射を受けてきた。薬剤師さんに、「ポテトもいかがですか?」というノリで、「一緒に、インフルエンザの予防接種もどう?」と聞かれた。2種類(ワクチンの種類によってはそれ以上でも!)の予防接種を一度に打っても「安全で効果に影

          母はクッキーモンスター

           高齢(88歳)で、認知障害があって、がん終末期(のはず)で、ホスピス型高齢者施設に入っている母。気力も体力も緩やかに下降を続け、施設内の廊下を歩いたりする以外は、テレビを見るしかやることがないとぼやき続けている。そのテレビだって、どれだけ理解できているのか?  折り紙や塗り絵などの道具があっても、自分でやる気はさらさらないようで、「おやつを食べるしか楽しみがない」とのたまう。食欲があるのは、いいことなのだろうけど、本当に消費量が爆上がり。以前はビスコ40個パックが1週間く

          母はクッキーモンスター

          大腸がん(特に直腸がん)が心配な人に覚えておいてほしいこと

           男女ともに大腸がんが増えています。がん検診(検便または大腸内視鏡)でほとんど予防と早期発見ができます。内視鏡は下剤をのむなどの準備があるので敬遠されがちだけど、ポリープの段階なら検査と同時に切除もできて、とても効果的です。  他の臓器に転移する前なら、手術と化学療法や放射線療法で治すことも可能。ただし、肛門に近い直腸にできたがんの手術では、早期であっても、その後に排便障害に悩まされることも多いんです。  今のがん治療では、腫瘍ができた場所だけではなく、腫瘍の特徴を遺伝子レベ

          大腸がん(特に直腸がん)が心配な人に覚えておいてほしいこと

          6月は子宮体がん啓発月間です

          同じ子宮のがんでも、子宮頸がんと子宮体がんはぜんぜん違うって知っていますか? 子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウィルス)が原因ですが、子宮体がんはエストロゲン(女性ホルモン)に影響されるので、HPVワクチンでは効果がないし、自治体がやっている子宮がん検診(これは子宮頸がんの検診)では発見できないんです。 日本はHPVワクチンの接種率が低いので、今も子宮頸がんによって年間3000人近い女性が死亡していますが、近年では子宮体がんによる死亡数もそれに近い水準まで上がっています

          6月は子宮体がん啓発月間です

          オパル・リーさん、97歳。日本に行くってよ。

          この人、「ジューンティーンス」6月19日をアメリカ合衆国連邦の11番目の祝日にする原動力となった超パワフルな女性。奴隷制度を守りたい南部テキサス州では、リンカーン大統領の奴隷解放宣言のニュースが伝わるのも遅くて、実際に黒人奴隷が解放されたのは、奴隷解放宣言から2年半以上すぎたあと。 「ジューンティーンスのおばあちゃん」とも呼ばれるオパル・リーさんは、ずっと自由の大切さをみんなに訴えてきた。円安も関係あるかもだけど、とにかくアメリカ国内だけじゃなくて世界にも「自由の尊さ」を訴

          オパル・リーさん、97歳。日本に行くってよ。

          私は母の恩人なのか?

           今年の5月は、母にとってスペシャルな月だ。私はアメリカにいるが、日本の施設にいる母とは、1日おきに見守りカメラ経由で話す。母は大腸がんでもう抗がん剤も効き目がなくなって、ホスピス型老人施設に入ったのだけど、なんだか元気にしている。認知症もあるけど、話を合わせるのが上手い人なので、スムーズに会話できる時がけっこうある。  「今月は3つお祝いがあるじゃん。母の日でしょ、誕生日でしょ、それに米寿だね」と私が言うと、「あんたが送ってくれた母の日のクッキーが届いたよ」との返事。すご

          5月8日は世界卵巣がんデー

          卵巣がんはスクリーニング検査がなくて、自覚症状もお腹がでてきたとか、ちょっと食べただけで膨満感とか、腰痛や尿トラブルとかわかりにくくて、受診が遅れがち。結果的に診断された時にはすでに進行しているケースが多いので、要注意です。 婦人科検診というのは、子宮頸がんを見つける検査で、卵巣がんも子宮体がんも見つけることはできません。今日、5月8日は、そんな卵巣がんについて知ってほしいと、世界各地の卵巣がん患者団体が啓発活動を行う日。 日本でも「卵巣がん体験者の会スマイリー」が、卵巣

          5月8日は世界卵巣がんデー

          桜もいいけど、皆既日食もね

          3月下旬まで東京にいたのだけど、今年は寒くて私がいる間は桜が咲かなかった。残念。でも米国には、もうすぐ皆既日食がやってくる。今回の皆既日食は北米で3000万人が観測できるけど、日食の通り道にいなくちゃ見られない。私が住むテキサス州のダラスでは、4月8日の午後1時過ぎに皆既日食を見ることができるというので、旅行者が続々と集まってきているらしい。 数日前から、空港が混むとか、当日の交通規制やら、なんとダラス郡の役所は4月8日は事務所を閉めるとかの話題で地元のニュースは賑わってい

          桜もいいけど、皆既日食もね

          自由に生きる、さもなくば死を

          Live Free or Die. これはアメリカのニューハンプシャー州の公式標語。同じ意味のVivre Libre ou Mourir. は、フランス革命の標語でもあったから、はるか昔から生きるために自由は欠かせないものだったんだなと思う。 そして、ウチの母。高齢の一人暮らしで、大腸がんの抗がん剤治療も効かなくなって認知障害もではじめたため、一年半前に民間の住宅型ホスピス介護施設に入居させた。 私は現実主義者だ。一人娘でアメリカ在住であり、母の状態を考えると施設入居の一

          自由に生きる、さもなくば死を

          本屋さんで待っています

          順天堂大学のおしゃべり病理医こと小倉加奈子さんが、MEditLabに「医学に効くほん!」として、書評を書いて下さった。 このサイトには医学に興味のある中高生、そしてすべての人が、医療や社会の様々なコトを学べるような情報が盛りだくさんです。ここで紹介していただけて、本当に嬉しい。 不幸にもがんという病に関わりあってしまうことを、英語で touched by cancer と表現することがあります。がんを発症した本人だけにかぎらない。家族や友人など愛する人ががんになれば、周囲

          本屋さんで待っています

          タイトルは何でしょう?

          どうしても翻訳して、日本の人にも読んでもらいたいと思っていた本。念願かなって、筑摩書房から3月頭に発売になります。で、タイトルは「ファック・キャンサー」。くそったれのがんに対するパンチが文字通り効いていて、これ以上にピッタリな挿画ってある?という感じの松島由林さんのイラストと岩瀬聡さんのブックデザインです。 この本と出合ったのは、私自身がアメリカでの卵巣がんを治療を終えてから、数年たった頃。がん治療の悲喜こもごもにつきあってくれた配偶者、治療を通して出会った人々、職場での出

          タイトルは何でしょう?

          HPVワクチンと子宮頸がん予防のこと

          日本では2年前から積極的推奨が再開されたHPVワクチンの接種。かなり長い間、ほとんど接種を受ける人がいなかったから、案外、HPVワクチンと子宮頸がん予防について、ホントのところを知らない人が多いかも。 子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)って、キスでもうつるの? 何歳で、何回、ワクチン接種を受けなきゃならないの? 検診を受けていれば、子宮頸がんは防げると聞いたけど? 男子だってHPVワクチン受けるべきよね? 子宮頸部異形成なら、たいしたことないんでしょ? 

          HPVワクチンと子宮頸がん予防のこと