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インプットログvol.2『葬送のフリーレン』

こんばんは、語部の郁です。
インプットログVol.2
今回は『葬送のフリーレン』アニメ版。

今回もログ程度にはなりますが
面白かったと思ったものの感想を
残しておきたいなって思います。

※批評ではなく、あくまで好み・感想です。
 誰かを批判するためではありませんので
 不用意な意見の切り取りなどはご遠慮ください。


【あらすじ】

ゆっくり楽しむためのあらすじは
このくらいでしょうか?

『魔王を倒した勇者パーティの
魔法使いとして10年の旅を
終えたフリーレン。

1000年以上生きたエルフの彼女にとって
たった10年の旅。
その後も魔法収集の旅に出る。

50年後かつての仲間、
勇者ヒンメルと再開するが
まもなく亡くなる。
葬儀へ出席し涙するフリーレン。

ヒンメルの死に際し、
人間を知ろうとしなかったことを悔やみ、
人間を知るためと
魔法を集めるための旅へ出発する。』

【きっかけ】

絵柄がとてもきれいで
マンガから気になっていたんですが
多忙で読めていませんでした。

アニメ放送が始まって
周りからの評判が
とてもよかったので
見始めたら本当に良かった…(感激)

勇者と旅に出る話はあるけれど
勇者一行の旅が終わった後の
しかも悔いから始まる物語は
スタートがとてもいいなと思いまして。

ファンタジー系で魔法関連の漫画は
読んできたつもりですが
大きな時間の流れになる作品は
久しぶりだったので楽しみでした。

初手から50年、20年と
エルフの時間軸で流れていきます。
主人公がエルフなんですから
そりゃそうです。

人間とエルフの違いを
様々な角度から体感しながら
見られるのは新しい感覚で
とても嬉しかったです。

【舞台設定】

舞台は架空の都市ですが
服装や音楽を総合して考えると
ドイツを中心にしているのでは?
という記事を見ました。

キャラクターの名前に関しては
ドイツ語を当てはめている様子。
意味合いなども含めて違和感は
なさそうです。なるほどなるほど。

ただ、サントラに関しては
アイルランドやアイスランドも含めた
北欧の魔法や妖精信仰のある地域の音楽
非常に意識していると思います。

王都に関する楽曲やファンファーレは
ゲーム音楽等でも使われる
中世ヨーロッパ風の音楽を
主軸としているように感じます。

しかし旅に出てからは
フィドル奏法が巧みに使われており
魔法と融和するような楽器たち
民族音楽の香り
がして素敵です。

作中で北へ旅に出ることから
北欧の民族音楽へとどんどんシフトする
音楽構成にしたのかもしれません。

【ドラゴン】

フリーレンは
非常に優しい話が続くためか
戦闘シーンの緊張感が
著しく高まります。

前述した舞台設定で
文化も欧州で確定している理由は
魔族やドラゴン(竜)に対する態度でも
よくわかります。

特にドラゴン(竜)に対する敵対心
欧州とアジア諸国では
決定的な差が生まれます。

欧州諸国では(イギリス等一部を除くと)
多くの国がキリスト教に改宗する前から
ドラゴンは悪意を持って人間を襲う
魔物、もしくは敵
として認識しています。

そして敵=退治できる
という考えから
武力による制圧に舵を切ります。

欧州でのドラゴンの特徴は

・空を飛ぶ
・硬い鱗(鎧)がある
・火を吐く
・地獄からやってくる
・人間を食べる

といったものが多くあります
※あくまで一例です。

もちろん良いドラゴンが
描かれる作品も多くあります。
『エルマーの冒険』『ヒックとドラゴン』
『エラゴン』などなど…

しかしあまり作品数が多くはありません。
かくいう『ロード・オブ・ザ・リング』でも
ドラゴンは主人公たちに敵対します。

ドラゴン(竜)が敵対する理由は
主に下記の2パターンです。
①そもそも人を食べる種類
②住処もしくは宝を守っている

フリーレンの紅鏡竜の場合は
①のパターンのようです。
直接人を食べる描写はありませんでしたが
村を襲うため、そのように判断するとします。

②のパターンは
仲良くなるorならない
の分岐が存在します。
なるかどうかは作品次第ですね。

一方アジア圏におけるドラゴン
龍と置き換えられるため
神様としての側面が強く表現されます。

もっと根本の話をすれば
西洋のドラゴンとアジアの龍は
別物
とする解釈もあります。

アジアの龍のイメージは
中国で醸造されたものが
アジア圏に拡大し
各国の文化に浸透しています。

中国では皇帝には”黄龍”がついていると
権力の象徴として珍重したり
四神には東の象徴として青龍
水を司る瑞獣として信仰されています

日本では八百万の神々として
各地にそれぞれの龍神信仰があり、
属性も水、火、土など様々存在します。

あくまで”神様”のため
人間側に不足であれば
災厄が訪れます。
でもそれは非難できません。

また、神様なので
討伐できませんし
してはなりません。

対処方法は、儀式・祭り等で
怒りを鎮めていただくしかないのです。
そのための取引のことを
儀式・祭りと呼称する側面があります。

外見的な特徴は
西洋のドラゴンと
それほど変わりませんが

・属性の種類が多い
・人間は食べない
・翼がない

といった点は上げられます。
供物として人間を捧げている場合も
時折存在しますが、
それほど多くはありません。

【エルフという種族】

エルフは北欧神話で最初に
登場した
といわれています。

神話や民間伝承では
妖精全般の総称を”エルフ”と
呼んでいたようです。

しかし現代の創作におけるエルフ像は
フリーレンのように「エルフ」という種族
登場することが多くなりました。

その種族「エルフ」は
J・J・R・トールキン著作
『指輪物語』によって作られた
断言してよいようです。

『指輪物語』に登場する種族「エルフ」の
特徴は主に以下の通り。

・寿命が長い。
・肌は色白か褐色が多い。
・髪は金髪、銀髪が多い。
・人里離れた渓谷に集団で生活している。
・首長は女王のことが多い。
・顔は均整がとれていて、耳が長い。
・魔法を操ることができる。
・戦闘に向いている種類のエルフもいる。
・感情が希薄なものもいる。

2001年公開の映画
『ロード・オブ・ザ・リング』では
オーランド・ブルームさんが
エルフのレゴラス役を演じました。

あまり想像がつかない方は
映像でレゴラスをご確認ください。
まぁじかっこいい。

現代のエルフ像を1954年刊行の
ファンタジー小説が塗り替えてしまうあたり
絶大な売れ行きと影響力が伺えます。

フリーレンの作中では
「集団生活」と「女王の首長」は
あてはまりませんが
その他の特徴は持ち合わせています。

実は感情の希薄さも
エルフのコロニーにいると気づかなかった
という描写を入れる作品も多くあります。

フリーレンも気づいてはいましたが、
人間と触れ合ううちに感情の希薄さを
改めて感じたり、新たな感覚を愛でる様子が
アニメでも描かれていましたね。

その描写がとてもエルフらしさを
際立たせていて好きでした。
細かいところできちんと種族の違いを
わからせてくる感じ、最高です。

【勇者ヒンメル】

この作品でのヒンメルは
作品のコンセプトとしても
キャラクターたちの心の中でも
精神的支柱の役割を果たしています。

仲間たちはヒンメルの肉体的な強さではなく、
優しさ・精神的な強さ・他者への愛情を
信頼し、愛し、共有し、受け継いでいます。

全ては
勇者ヒンメルならそうする
この言葉に集約されているわけです。

そしてヒンメル自身も
きっとフリーレンなら
アイゼンなら、リヒターなら
そうしてくれると信じている。

明確な言葉で伝えてはいないけど
フリーレンは長い旅を振り返ることで、
アイゼンやリヒターは生活の中で
ヒンメルを大切に思い出している。

『上を向いて歩こう』などで知られる
永六輔さんはこうおっしゃっていたそうです。

「人は二度死ぬ。
一度目は肉体の死。
二度目は誰かの思い出の中で生きている私を
思ってくれる人が一人もいなくなった時。」

近年ではディズニー作品
『リメンバー・ミー』でも
同義のセリフがありました。
忘れられたとき、天国でも死ぬと。

この言葉を見てから
フリーレンを改めて考えると
きっと当分ヒンメルが二度目の死を
迎えることはないのだと安心します。

フリーレンという物語は
ヒンメルが与えたたった10年が
自堕落だったと語る
エルフの全てを変えたお話

ヒンメルがいないと始まらないお話だったのです。
意外とフリーレンが主人公の顔をした
勇者ヒンメルのお話だったりもするだと
拝見しながら感じていました。

勇者ヒンメルの言葉には
現代社会で勇気が出ない人の
背中を押すセリフもたくさんありました。

ネタバレにはなりますが、
私の大好きなセリフはこちらです。

「いいじゃないか、
偽物の勇者で。
僕は魔王を倒して
世界の平和を取り戻す。

そうすれば偽物だろうが
本物だろうが関係ない。」

これにすべてが詰まっています。

【せんせいの存在】

この作品はフリーレンの周りで
いくつか「せんせい」と「弟子」の関係
見ることができます。

フリーレンには
「せんせい」フランメ、
「弟子」フェルンがいます。

旅の仲間シュタルクは
アイゼンの「弟子」です。

戦闘でも技を介して
師弟関係の濃密さを
感じられるシーンが
いくつかありました。

フェルンが戦闘時に
一般的な攻撃魔法と
防御魔法しか使わないのは
フリーレンの教え

その時のフェルンのセリフで
”この時代の魔法使いには
その二つで十分だ”といった
意味合いのことを敵に話しています。

改めてセリフを見ると
フリーレンならではの教えだと思いますが、
基礎の熟練度が上がっていればいるほど
勝ち目がないのは、文武問わず事実です。

シュタルクとアイゼンの関係は
戦士らしくもっと直接的ですが、
誕生日だけはうまく伝えられなかった
不器用な師匠と弟子でした。

戦闘でアイゼンの技を真似る敵に
最初は動揺するものの
師匠の技を受けてきたからこそ
打開策を練ることができたシュタルク。

物理的な距離が離れていても
技にすべて師匠とのつながりが
見て取れる、感じ取れる
シーンに
なっていたと思います。

現実でも師匠と弟子は
特殊な関係値で結ばれます。

親子ではないけれど親子に近い
愛情の何かがある人もいますし、
むしろ反面教師でいがみ合っているが
互いの情報は知っている関係もあります。

他人に教えることで
成長していく面がある
「せんせい」という立場の面白さ
上手く描かれていくのを愉快に感じます。

私にも師匠がいますが
師匠の細かい教えは
常に生きています。

リハーサル、本番、
作りものをしている最中
ことあるごとに
師匠の教えは活きてきます。

また自らが先生となることもあります。

自分で得た知識や技量を
かみ砕いて教えることもあれば、
師匠からこう教わったと
改めて伝えることもあります。

師匠が伝えていた方法は
どう見せたら正しく伝わるだろうか
とも考えることがあります。
とっても楽しいけれど難しいです。

【魔族と魔物】

フリーレンが執着している
数少ないもの。
魔法収集魔族のせん滅です。

フリーレンの師匠フランメは
魔族のことを「言葉を操る魔物」と定義し、
ほかの魔物とは別物としています。

フリーレンは魔族を
人の声真似をするだけの、
言葉の通じない猛獣

と表しています。

個人的に感じたこととして
魔物、特に魔族の描写の根本は
どちらかというと
悪魔に近い気がしています。

よくいる悪魔と言えば
甘言で人を欺き契約を取り付ける
・契約者から寿命を奪い、食糧を得る
・欲に忠実
・目的のためなら手段を問わない
・人間の欲望に沿った属性を持つ

などの特徴を見られることがあります。

フリーレンにおける魔族は
人間を捕食するという目的のために
魔王を中心とした
実力主義の軍隊を形成しています。

作品上の契約者は
存在しませんが
それ以外の特徴は
当てはまりそうです。

フリーレンや仲間たちの多くは
魔族に自分の家族や故郷を
奪われていました。

魔族の醜さや狡猾さ、
正面から向かってこない意地汚さを
心底憎んでいるように見えます。

魔族側から言わせれば
食糧を得るためにやっている
いわば狩りの戦法
一緒なのだろうと推察します。

魔族という言葉自体は 
作品によっては
魔物たちの貴族階級を指す
場合もあります。

作中でも魔族たちの身なりが
相当整えられています。
暗に特権階級に見えるような
意識付けも行っているのかなと感じました。

【魔法の扱い】

最後に魔法について
もう少しだけ触れようと思います。

”魔法”は作品ごとに
その重要性や便利さが
大きく異なります。

魔法で有名な他作品での
重要度や便利さを比べていきましょう。

①『ハリー・ポッター』
この作品では魔法使いであれば
あらゆる事象を
魔法と呪文操作で
行動に移せます。

魔法で物事を行うのが当たり前のため、
戦闘・防御魔法だけでなく
鍵を開ける魔法、浮遊する魔法、
家事魔法など種類がたくさんあります。

杖を媒介することで安定性が増しますが
杖がない状態でも魔法は使用可能です。
杖を選ぶシーンはとても有名です。

魔法界とマグルの世界が分かれているため
マグルのいる前で魔法を使うことは
禁止されています

あくまで魔法使いは種族に近い感覚です。

『ゲド戦記』
この作品では
魔法使いの類のものが
真の名を知るモノのみに
使用することができる
としています。

魔法使いとそれ以外の人間が
混在して生活
しており、
真の名を知られると縛られてしまうため
通り名で生活する世界です。

映画版では
魔法はみだりに使うものではなく
本当に必要な時にのみ使うもの
という表現もあります。

杖を使うものもいますが、
上記の通り”真の名”があれば
本来は十分です。

この作品での魔法使いの立ち位置は
魔法使いという種類の人間
というイメージでしょうか。

③『魔法使いの嫁』
この作品では
魔法と魔術という
2つの概念が出てきます。

魔法は妖精たちや自然の理に働きかけ
力を借りて作用する奇跡のこと。
魔術は科学を用いて理に干渉し
魔法と酷似した結果を生み出すこと。

コンピューターに例えると
魔法使いは管理者
魔術師はハッカー
と表現されています。

この世界でも魔法は奇跡なので
余程のことがない限り
魔法を常時使用することは
ありません。

杖は魔法使いのみ所持していて
修行者本人が木から削り出し
先輩や師匠に仕上げを頼むのが
習わしのようです。

この作品では
魔法使いに向いていた人間
魔術師に向いている人間

という分かれ方のようです。

上記3作品を上げましたが、
それぞれ魔法の表現、
生活様式、所持概念が異なります。

『フリーレン』の世界では
職業として魔法使いが存在し、
その他にもシーフ・戦士・僧侶・勇者など
様々協力して生活をしています。

大きな荷物の移動などは
魔法使いに頼みやすいのか
海辺の掃除やお使いみたいな仕事も
フリーレンたちは行っていました。

この世界には魔導書が存在し、
そこに魔法が記されています。
大切な魔法だけでなく
生活魔法もたくさんありました。

カビを消滅させる魔法
銅像の錆を綺麗に取る魔法
パンケーキを上手にひっくり返す魔法

なんかもありました。身近。

ファンタジーにおける魔法は
作家の創作ルールの中で
劇薬なのかもしれないと感じます。

解釈を広げすぎれば
なんでもありになる、
厳しくしすぎれば
魔法の意味がなくなる。

やはり作品づくりは
とても楽しいです。

【最後に】

原作にあった絵の美しさが
そのままアニメーションに生かされ
加えてアニメならではの効果が
存分に生かされていると感じます。

特に戦闘シーンの魔法は
フェルン・フリーレンが
規格外の強さのため
描き込みの枚数がえぐいはず…。

キャストを見たときに
正直好きな声優さんしかいなくて
安心してみることができました。

特に種崎さんの感情の匙加減。
フリーレンの感情表現は
あまりにも微量な差異が多いので
とても難しいのでは…と思いながら感激。

あとはサントラが最高です。
設定でも話していますが、
正直サントラ円盤買おうと思います。

人気がトップだった理由が
本当に納得しきりでした。
本当に良い作品です。
ありがとうございました。

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