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世界を相手にすることは難しいけど、今の自分にできること(#高校生インタビュー)

はじめに

このインターンシップレポートは、NPOカタリバ Rootsプロジェクト(外国ルーツの高校生支援事業)が展開するRootsインターンに参加した高校生の体験をまとめたものです。

日本社会での進路を自分ごとに

「外国の人」ときくと、海外から来る外国人(旅行者や留学生等)を想像する方が多いかもしれませんが、今、日本の子どもたちとともに育つ外国ルーツの子どもたち(両親、またはそのどちらか一方が外国出身)が増えています。親の事情で来日した子がほとんどですが、環境の変化に前向きに、そしてしなやかに向き合っています。

多様な教育背景をもつ子どもたちの日本でのキャリア形成は、まだまだ事例が多くはありません。彼・彼女たちの目線で日本はどう見えているのか、そして今まさに越境を体験している高校生から、これからの未来について、この記事を読んでくださっているみなさまとも学んでいけたら幸いです。

今回の記事では、今年の夏にグーグル合同会社(以下、Google)で実施のRootsインターンに参加した、アメリカと日本にルーツを持つKさんのストーリーを紹介します。

「今の自分には、世界を相手にすることは難しいけど、それの小さいことはできるのかな、と自分にできることは何か考えはじめた。」

インターン後のふりかえりより

インターンで感じたことを自分ごとに置き換え、自分の夢について、改めて考えはじめたKさんのストーリーを巡ってみます。


私のルーツ

日本に生まれ、5歳のときから、中学2年生までアメリカにいて、そこから日本にきました。日本に来て今ちょうど2年が経ちました。

アメリカにいたとき、兄に同行して海の掃除ボランティアに参加したことがありました。海が綺麗になっていく様子が、気持ちよかったことを覚えています。自分が頑張ったことで周りの人を幸せにできるような仕事をしたいと思うようになりました。

アメリカで中学に入るタイミングで、コロナの時代になりました。新しい学校なのに友達と会えず、家にいなければならなかった時、YouTubeで「量子物理学」に出会って興味を持ちました。将来は、「量子物理学」の分野で人の役に立つ研究をしたいと思っています。

今、高校では、JRC(Junior Red Cross、ボランティア部)で文化祭でつくった石けんを売って募金したり、災害をテーマにした他の学校との共同のイベントをしたりしています。また、サイエンス部にも入って、研究のためにプログラミングを始めてみようと思っています。なので、プログラミングを学べる企業のインターンシップを選びました。

会社で働く=堅苦しくて気まずい?リアルを知りたい

企業に赴く前に、自分のルーツについて知ること・自分の置かれている環境が社会のどういう事情に影響を受けているのかを整理することを通して、新しい環境で失った自信を取り戻すことや、生徒が「今」取り組めることに集中できる状態を目指します。

Rootsインターン事前研修の意図

会社で働く、ということは堅苦しくて気まずい。映画で見るような、デスクが区切られていて、言われたことを黙々とやるところ。お昼休憩に「やっと終わりだ」という感覚になるようなものだと思っていました。
でも、どういう仕事に自分がつくかまだわからないから、会社で働くことも選択肢になるように、実際に見てみたいと思いました。

インターンの事前プログラムで、Googleについて色々調べました。WebサイトでGoogleがWildlife Insights(保護のため、野生動物のデータを扱うプラットフォーム)に協力していることを知って、普段目にする仕事以外に、なんでGoogleはその活動を一緒にやっているんだろう?ということが気になりました。

当日のようす

Rootsインターンは、1Dayの企業での体験を軸とした、半年間のメンタリングプログラムです。1Dayの企業体験では、プログラム全体を通して、お互いの背景理解や価値観についての交換を行います。

オープニングトークからスタート!半日のプログラムですが、
お互いの背景や想いをシェアしてチームになることを目指します。
スクラッチでのアプリ開発。全体のレクチャーをうけたあと、
さっそくコンセプトをきめて手を動かします。
発表と学びのシェア。誰に、どんな時にプレイしてほしいか。
お互いの作品にフィードバックを伝え、学びを深めます。

インターンシップを体験して

行ってみると会社のイメージに色がついた

参加者の学校はばらばら、他の高校生参加者との交流で仲間が増えました

実際にオフィスに行ってみると自分のイメージに色がつきました。同じ興味を持った人同士で会話しながら働くことは魅力的に思えたし、「もう終わっちゃうの?」という気持ちになりました。

学び①自分の仕事の悪いところも言えるのがかっこいい

コーディングの悪いところを全部消して、面白いことを全て集めたのがスクラッチです、と担当の社員さんが言っていました。自分の仕事だけど、楽しくないところがある、と言えるのがすごいな、と感じました。

学び②話し合うとアイデアが生まれる

社員さんにじっくり相談しながらアイデアを練るKさん

自分一人でやっていると全然終わらないことが、社員さんからアドバイスをもらったり、話したりしてアイデアが生まれました。

今学校では、文化祭の準備をしているけど、同じように感じことがあります。これやったらどうかな?という意見がいっぱい出て、それにプラスでこうしたいいかもね、が出てくる。話すことでより良くなることが楽しいことを知りました!

私のこれから

今の自分にできること、を考えはじめた

インターンで一番印象に残っているのが、社員さんの「Googleの使命は、世界の情報を整理すること」という言葉です。

インターンに行く前に、Googleが野生動物の保護活動に協力していることを知って、なんでやっているのだろう?と思っていたけど、「世界の情報を整理する」という大きな使命を背負っているからだとつながりました。

今の自分には、世界を相手にすることは難しいけど、それの小さいことはできるのかな、と自分にできることは何か考えはじめています。

まず、身の回りの人が困っていることの助けになるものを作ってみる

「マイアクション」では、身の回りの人の困っていることを聞いて、その助けになるものを作ろうと思っています。

まずは、周りの友達に困っていることを聞き、それに対して自分にできることを考えることからはじめました。「勉強に困っている」という声が多く、学校で友達に勉強を教えたときに「教えるのが上手いね」と褒められたことを思い出し、その経験をもとに、問題を解くときの思考回路を図にして「問題の解き方がわからない」人に向けて、「問題を解決するためのやり方」が伝わるような資料をつくろうと思っています。

あとがき
世界を相手に仕事をする会社で体感したこと、そこで働く大人たちに刺激をもらい、今自分にできることをやってみたい、とはじめたKさんのプロジェクトはまだまだ現在進行中です。

自分が頑張ったことが社会のいいことに繋がっている。
そんな仕事をしたいと思って目指し始めた研究者という夢への一歩を踏み出せるように願っています。

担当メンターコメント

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Rootsインターンについて🌱
Rootsインターンは、外国にルーツを持つ高校生に
「日本社会とのつながりと、応援してくれる人との出会い」を届け、

企業の方には、直接高校生と関わりを持つことで「身近にあるDE&Iを体感してもらい、可能性に出会ってもらう」ためにはじまりました。
*DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)

これまでに複数社とインターンシップを行い、私たちの想像を超えたつながりを生んでいます。

これまでのレポートはこちら:

問い合わせ先:
認定特定非営利活動法人カタリバ Rootsプロジェクト(外国ルーツの高校生支援)roots@katariba.net

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