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JICA海外協力隊を経験した私が、10代の居場所づくりに挑むワケ

Profile
太田 蒔子(おおた まきこ)
ユースセンター起業塾/起業準備コース1期生、b-lab(ビーラボ)職員

1991年生まれ、千葉県八街市出身。大学卒業後、株式会社図書館流通センターに就職。2018年、休職して独立行政法人国際協力機構のJICA海外協力隊に参加し、ソロモン諸島イザベル州教育局にて中学生の読書推進活動に携わる。2022年6月から「ユースセンター起業塾/起業準備コース」の1期生として、カタリバが文京区で運営するユースセンター「b-lab(ビーラボ)」で働きながら、地元で10代のための居場所立ち上げを目指す。

カタリバは2021年、10代の居場所づくりに取り組む人を支援するインキュベーションプロジェクト「ユースセンター起業塾」を立ち上げました。ユースセンター起業塾のコースは主に2つ。1つは10代の学びの機会や居場所づくりに対する事業に助成と支援を行う「事業創造コース」。もう1つは起業・事業づくりを目指す人がカタリバの現場で働きながら準備を進める「起業準備コース」です。

今回ご紹介する太田蒔子さんは、ユースセンター起業塾/起業準備コースの第1期生。出身地の千葉県八街市に10代のための居場所を作ることを目指し、2022年4月からカタリバが運営するユースセンター「b-lab(ビーラボ)」で働きながら起業準備を進めています。

本記事ではそんな太田さんにインタビュー!起業準備コースに応募した理由や目指すもの、現在の活動内容などについて聞きました。

JICA海外協力隊で行ったソロモン諸島が私のユースセンター像のルーツ

 ― 太田さんは大学卒業後、図書館流通センターに就職して図書館の総合支援に携わっていたそうですね。そこからなぜユースセンター設立を目指そうと?

図書館流通センターは社内の雰囲気がとてもよくて、仕事にもおもしろさを感じていました。ただ、4年ほど勤めた頃から「何か新たなことに挑戦したい」「ステップアップしたい」という想いが強くなってきたんです。

そこで休職してJICA海外協力隊に参加し、2年ほどソロモン諸島で活動しました。そこでの体験から、ユースセンターを自分で作りたいと強く思うようになりました。

 ― JICA海外協力隊ではどんな活動を?

島で1つだけある小さな公共図書室に勤務しながら、読書の啓蒙活動をするのがミッションでした。でも、交通機関がないので、公共図書室には近所の人しか来れません。

そこで、現地の人に船を出してもらい、各地の学校1つ1つを巡って先生方と交渉し、学校の図書室を整備したり読書イベントを行なったり。

限られた期間の中でゼロから一つ一つ作り上げていくのは大変でしたが、次第に手伝ってくれる先生や生徒がどんどん増え、みんなで良い場を作り上げることができました。そういう挑戦をもう一度したいという想いが、帰国してからずっとありました。

 ― その想いがユースセンター設立を目指すことに結びついた理由を教えてください。

ソロモン諸島のような環境が、日本の子どもたちにも必要だと感じたからです。

ソロモン諸島では村全体が1つの大きな家族みたいな感じで、全員で子どもたちを育てます。食事の時間に近所の子が家にいたら、その子にもご飯を食べさせますし、そのまま寝てしまったらみんなで朝まで一緒に寝ます。子どもも、小学生になったら自分より年下の子をおぶって遊ぶなど、小さい子の面倒を当たり前のようによくみます。

結果的に1人の子に向けられる目がとても多く、その中で子どもたちは安心して明るく伸び伸び育つんです。

日本にもこのような環境があれば、子どもたちがもっとイキイキできるのではと思いました。そして、ユースセンターならそれに近い場所になれるのではないかと考えたんです。

JICA海外協力隊として活動している太田さん

 ― ユースセンター設立を決意してから、どう行動したのでしょうか。

JICA海外協力隊から戻って図書館流通センターへ復職し、1年半ぐらいたった頃、たまたまSNS広告でカタリバのユースセンター起業塾を知って。JICA海外協力隊での経験を活かして何かやりたいと思っていたものの、動けていない状況だったので、直感的に惹かれてユースセンター起業塾のオンライン説明会に参加したんです。

 ― 説明会参加後、すぐに応募を? 

いえ。会社に不満があったわけではないので、2〜3週間ほど迷っていました。そんなとき、カタリバの方が直接連絡をくれたんです。

実は私、オンライン説明会の話にとても共鳴し、アンケートにかなり熱い書き込みをしていて。カタリバの方がそれを見てくださって、「ぜひ受けてください!」と。それが後押しとなりました。

 ― 既存のユースセンターで働くのではなく、なぜ起業を選んだのでしょう?

 “村社会由来のユースセンター”というアイデアを実現したかったので、それにはすでにできあがってるユースセンターで働くのではなく、自分でいちから作っていきたいと思いました。

成功できる自信は全然ありませんでしたが、本当に価値あると思えることに全力でトライできたなら、それで失敗してもいいと思っています。年齢的にも、まだまだやり直せますから(笑)

現場体験2カ月で知った、ユースセンターだからこそ生まれる「つながり」

 ― ユースセンター起業塾の起業準備コースでは、カタリバの現場で働きながら起業準備を進めるとのこと。太田さんも2022年6月からカタリバのユースセンター「b-lab(ビーラボ)」で働いていますが、現在はどんなことをしていますか? 

主に音楽スタジオ管理や音楽イベント企画、ゲーム・Switch(スイッチ)に関する利用ルール作成などを、前任の方にフォローしてもらいながら進めています。その他、読書推進活動など、さまざまなことを体験させてもらっています。

 ― 音楽関連全般の管理やゲームのルールづくりなど、やってみてどうですか?

音楽もゲームも中高生の関心が高いものなので、責任感をもって進められています。特にSwitchは一番人気で、中高生から日々さまざまな要望があがります。それをまとめ、ルールづくりをしていくのはやりがいもありますし、腕の見せどころかなと(笑)

ゲームも音楽も友人グループの中だけで楽しんで終わり、ということが多いので、もっと横のつながりを作って、いろんな刺激を受けてほしいと思っています。

 ― そう感じる、何か具体的な出来事があったのですか?

先日、文京区にある音楽専門学校の先生による、音響機器の使い方講座をやったんです。b-labにはバンド練習のためにスタジオを借りにくる高校生が多いのですが、バンドごとに練習して帰るだけで、横のつながりはほぼありませんでした。

ところが、その講座で各バンドの子がごちゃ混ぜにチームになったり、即席バンドを作って演奏したりするうちに、みんなが仲良くなっている姿が見られたんです。

学年や学校、性別に関係なくコミュニケーションがとれる空間を、私たちが増やしてあげることができるんだと気づかされ、そんな空間をこれからどんどん増やしていきたいと考えているところです。

 ― まだ働き始めて2カ月ですが、現場で働くことをどう感じていますか?

現場で働くのは1年間と期限が決まっていますが、濃い体験になっています。実際にユースセンターの運営を肌で感じるだけでなく、音楽やゲーム、読書などの担当にもなって日々学ぶことばかりです。

中高生の支援を長年やってきているカタリバのノウハウを得られるのもすごく価値あることですし、b-labを通してユースワーカーの先輩や仲間とのつながりができたことも、とても大きな収穫です。

中高生の活躍のステージは、ユースセンターの中だけではなく外にもある

 ― 現場を体験して、当初思い描いていた “作りたいユースセンター像” に変化はありましたか? 

ありました。以前のユースセンターのメインイメージは、「誰でもウェルカムで、何を言っても認めてもらえる安全な場所」でした。

でも最近は、「チャレンジという軸がまずあり、そのためにウェルカムで安全な場所がある」というイメージが強くなりました。

 ― なぜ「チャレンジ」を軸にしたいと?

もともと私がイメージしているユースセンターは、ソロモン諸島の“村社会由来のユースセンター”で、中高生以外の人も利用できるものにしたいと思っていました。ただ、「誰でも利用できる」となると、中高生が心地よい空間づくりは難しくなるのではないかとずっと悩んでいました。

でも、例えばライブハウスのように、その空間に来る「共通の目的」「共通点」があれば、さまざまな年齢・性別・個性の人が集いながらも素敵な空間にできるのではないかと思うんです。「チャレンジ」を共通点としてつながれる居場所のイメージが、b-labで働いてより具体的に見えてきた感じがしています。

 ― どのようなチャレンジをイメージしているのでしょう?

大きなプロジェクトである必要はありません。例えば、「学校になかなか行けない自分を変えて、行けるようになりたい」「高卒認定を取りたい」など、自分の中にあるチャレンジでいいんです。

「何か変わりたい」「挑戦したい」と思っている人が集まる空間にできたらなあと思っています。

b-labには「中高生のための秘密基地」というキャッチフレーズがあるのですが、私が作るユースセンターもまさに子どもたちが作戦・行動を展開するための基地にしたいですし、私たち自身も「チャレンジ」を手助けしていきたいです。

 ― その実現に向けて、計画していることなどはありますか?

近い計画としては、中高生と一緒にユースセンターのあり方を考えるワークショップを行いたいと思っています。私が漠然と考えているユースセンターは、彼らにとってどうなのか、実際にb-labを利用している子たちの意見を聞きたいです。

それによって、私が目指すユースセンターにまた新たなポイントが加わるかもしれません。

 ― 近い計画ということは、遠い計画もありますか?

ユースセンターは中高生が主役の場所ですが、彼らの本当のステージは、ユースセンターの中ではなく外にあると思うんです。ユースセンターが賑わっているのはとても良いことですが、ユースセンターで力をつけて、早く社会で伸び伸びと生きてほしいと思います。そして、わからないことや困難にぶつかったら、また作戦を練りにユースセンターに来てほしい。

ユースセンターを作ることで、そんな循環を生み出していきたいと考えています。

今はまだ、そのスタート地点に立てたかどうかというところ。夢を実現するために、私自身これからもチャレンジを続けていきます!


-文:かきの木のりみ
=写真:太田さん提供

b-labで働きながら、ユースセンター立ち上げのために出身地である八街市での活動も始めている太田さん。現地を数回訪問するうち、「若者たちが集まる場所を作りたい」という想いをもつ方々との思いがけぬ出会いがあったそうです。

次回は、そんな方々と協力しながら子どもたちのチャレンジを引き出す「ユースセンター」づくりの一歩を踏み出した太田さんの活動をレポートするのでお楽しみに!


太田さんが参加しているユースセンター起業塾の起業準備コースでは、2期生の募集が始まっています。居場所づくりやユースセンターの起業を考えている方は、ぜひご応募ください!

起業準備コースの募集ページ

募集説明会の申し込みフォーム
https://forms.gle/2EWVSiU3ZxQCsXVa8

また、太田さんも登壇する居場所づくりに関するイベントも開催予定!ご興味のある方はぜひご参加ください。

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