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日刀保横浜支部(2023年6月)入札鑑定振り返り

本日横浜支部の刀鑑賞会がありました。
日刀保から刀を借用しての会です。
いつもながら入札鑑定の振り返りを行います。
尚、今回は講師の方が来られず解説が無かったので、個人的な所感を述べるだけのブログです。


・入札鑑定振り返り

以下が入札用紙で結果なのですが、本日講師の方が不在で支部の別の方が代わりに採点をして下さったのですがその方も慣れていないと仰っておりました。
私もその場では気が付かなかったのですが、後程確認したところ一部採点に間違いがあり、以下は正しくは「①能、②当、③当、④能、⑤同然」です。

正しくは「①能、②当、③当、④能、⑤同然」


1号刀 与三左衛門祐定(太刀)

匂い口が締まり気味の丁子に尖り刃の付いたような刃文、梵字の彫が表裏に入る。
刀身の中間あたりで反っているように見えたが、先反りが加わっている事による事が理由と思われる
映りが微かに立っていた事から、末備前物と判断。
梵字もあった事から山城の信国あたりを疑うが、刃文から盛光に入札。
するとまさかの「時代違い」と採点。
古刀の自信があった為「え、新刀?!」と混乱するが、新刀で可能性のある刀工は石堂しか思いつかず、取りあえず石堂是一と入れて「当」。

と思いきや、これは恐ら採点時に4号刀と勘違いされていたようで、正しくは祐定が正解とのこと。
盛光で同然との採点であったが後程調べると同然ではなく、国入り能く候の「能(よく)」が正しいとの事。
という事で、盛光に入れて「能」
祐定の存在を忘れていたが、確かに刃文を見ても典型的な作でだった。


2号刀 野田繁慶(短刀)

元幅に対して先幅が異様に狭い、さつまあげ(刺刀、さすが)のような変わった姿。
平造りで大肌が目立つ。
匂い深いのたれ刃に互の目や飛び焼きなどが入り、そこに大肌の地景がまじりあって賑やかな様相を呈している。
刃はかなり冴えており、新々刀にしては地鉄が黒い。
悩むこと数分、4年位前にこの独特な姿を見ていた事を思い出した。
大肌は「ひじき肌」かもしれないと思い野田繁慶に入れて「当」
いや、これは「見知り」と書くのが正しいだろうか。


3号刀 保昌貞興(短刀)

総柾目で帽子は焼き詰め。
刀身はかなり研ぎ減っている。
直刃で小沸が綺麗に付き、そして地鉄を見ると鉄に潤いがありどう見ても古刀であるので仙台国包の線は外す。
次にノサダ(二代兼定)が写している線も考えたが、白け映りのようなものは一切なかったので素直に保昌貞興に入れて「当」。
なんと在銘。


4号刀 石堂運寿是一(刀)

一番悩んだ刀。
反りのある姿であるが、地鉄は詰み完全に新刀の地鉄をしている。
匂口が非常に深く刃全体が光っているように見える。
そうした作風は過去虎徹などに見たような気がするが、基本的に尖り刃のような刃文をしており、どうも虎徹ではなさそう、という事で殆ど作を見た事が無いのだが和泉守兼重(虎徹の師匠)に入れて「能」
茎を見ると石堂運寿是一の銘が!
石堂は備前のイメージしかなかったので、このような作風もあるのだと大変勉強になりました。
刀としても出来の非常に良い作に感じた。


5号刀 古備前国縄(太刀)

大板目に杢を交え、腰反りの深い体配。地沸が厚く付いている。
この時点で古備前か古伯耆と検討。
刃文を見ると丁子。
大肌が立っており映りは目視しづらいが真ん中あたりに地斑映りのようなものが見えた。
古伯耆、例えば安綱などであればもう少し肌は落ち着いて地斑映りも鮮明に見えるような気がする。
ただ見た事のある数が圧倒的に少なくこの考え方が正しいかは不明。
という事で現時点では古備前へ入札。

今まで見た事のある古備前は正恒や友成、吉包、などだがそれらのどれとも地鉄の様子は違う。
その為個銘は分からない。
分からないのでひとまず古備前と入札し「同然」
個銘書かなきゃ!と言われたがそれが出来たら苦労はない。
いずれにしても今回並んだ刀の中では頭一つ出た名品というオーラが伝わってくる。重要美術品であった。
茎を見ると4センチほど区を上げているが在銘で、茎尻も恐らく削っていない貴重な生ぶ姿をしていた。


という事でまとめると、「①能、②当(見知り)、③当、④能、⑤能」でした。
何が同然になるかなど自分でもしっかり勉強しておく事の大事さを感じました。
同然表は今まで持っていなかったのですが手に入れる時がそろそろ来たのかもしれません。
いずれにしましても今回の入札鑑定で「時代」と「位」を外さなかったのはとても嬉しかったです。

そして家に帰り刀を鑑賞。
やはり重美も素晴らしいが愛刀が一番…!
恐らく多くの愛刀家の方が感じているだろうこの不思議な感覚は一体。

今回も読んで下さりありがとうございました!
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それでは皆様良き御刀ライフを~!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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