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愛好家が一番満足出来そうな蒐集の形

確かコンプトン氏だった気がしますが「なぜ名刀ばかりを集めるんだ?名刀でない刀も集める事で初めて名刀の価値が分かる」というような事を言っていたように、名品は単体で見ても勿論美しいのですが、後世に真似て作られた作などと比較する事でどの部分に差が出るのかなどが分かり、本家の凄みが身に染みて分かることを実感しました。

しかし何でもかんでも両者を並べるのは金銭的に難しく現実的ではありません。
そのような中で刀屋さんに行くと、例えばテーマを決めて一流作と二流作を比較して見せて頂ける事があります。
例えばテーマが「布目象嵌」だとすると、遠目で見て素人目には両者大差ないように感じても、ルーペで布目象嵌の象嵌部を拡大して見てみると一流作は布目象嵌時に地に付けた格子状のヤスリ目のような部分が見えないようにしっかり処理されて作られている事に気が付きます。
これが二流作になると、このヤスリ目のようなものが残っている箇所が見て取れます。
一流作は例外なく細かい部分まで丁寧に作り込まれています。

このように刀屋さんに行くと刀にしても刀装具にしてもちょうど良い比較対象を用意して下さり比較させて頂ける事があります。(〇〇を勉強させてほしいと具体的に伝えた方が教えて頂けるかもしれません)
比較させて頂いたからといっていわゆる「鑑定」が出来るようになるわけではないのですが、「良い物」を知る上で非常に為になる知識に間違いありません。
これを完璧に理解するのはなかなか難しいものの、こうした知識というか自分の目で見て一流品と二流品の区別を自分なりに付けられるようになる事は、鑑定書に頼らない目の育成にも役立つ気もします。

これこそが愛好家の人に本来必要な知識(鑑定書依存にならない為の)であるように感じますが、これはネットでだけ買っていてもなかなか身に付けられない知識です。
資金が豊富にあり自分自身で一流品と二流品を揃えて比較できるのであれば別かもしれませんが…。
ただその場合も何をもって一流品、二流品と見なすのかは個人判断によるところが大きくやはり判断が難しいです。
例えば刀装具で言えば重要指定の指定書をもって名品と判断するのか?
しかし指定書があるからといって必ずしも名品であるとは限らないと仰る方も多いです。

結局は鑑定書を信じるのか、刀剣店の方の言葉を信じるのか、それとも鑑賞会などの先生と呼ばれる方々の言葉を信じるのかなど、何を信じるのかによって「良い物」の判断基準は変わってくる気もするのですが、いずれにしても「それがなぜ良い物なのか」を教えてくれる所で買いたいとは個人的には思います。
私の場合はそれが刀剣店であるので、刀剣店での購入をお勧めしている次第ですが、この前提が変わるとお勧めも変わるので、是非皆さん前提を考えそれに有った行動を取られてみると良い気がします。

私自身まだまだ出来ないのですが、自分で物の良し悪しが判断出来るようになると、銘や鑑定書に振り回されずに物の選定が出来るようになるはずです。
自分の目に自信があれば人からどういわれようと気にならないはず。

「自分自身の価値観で蒐集する」

これはとても面白い未来な気がしますし、愛好家が一番満足出来そうな幸福度の高い形であるような気もします。

世の中には鑑定書が付いて大金で取引される良い物ものもあれば、鑑定書が付いておらず二束三文で取引されている良い物も存在します。
自分で物の良し悪しが判断出来ないうちに鑑定書の無い物から掘り出し物を見つけようとすると大概失敗するのは間違いないですが、掘り出し物を見つけるという視点ではなく、自分の気に入った作を集めるという視点でかつ自力で良い物を見つけられるようになると世界は広がり面白そうです。
そこに行きつくには数多くの出費と失敗も必要なのかもしれませんが。



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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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