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今年の個人的ベスト鐔

来週末が大晦日だなんて未だに信じられません。
気が付けばもう今年も終わりですね。

今年はヤフオクやフリマサイトなどでも鐔を買ったりなどした年でした。
割合で言えば「7(刀剣店):3(オク等)」位でしょうか。
時代の上がる古そうな鐔を中心に買い集めた年でしたが、オク等では基本的に3~5万円程度の物が中心で、一番高い物でも10万円ちょっと、といった感じだったかと。

総じて言えばやはりお店で買った物の方が物としての格が高いというか、質も出来も良い物が多いので飽きが来づらい物が多いのを実感するのですが(値段もその分高いのですが)、今年買って一番気に入った鐔は何かと言われると実はヤフオク産の鐔でした。
これは値段に対する質(コスパ)という観点ではなく、質だけを比較して一番気に入った物。

一度買うと机の中にしまい、見る頻度が2日に1回、3日に1回などと鑑賞頻度が落ちいずれ興味が失せてしまいがちな鐔も多い中、この鐔だけは本当に例外で何度も何度もなぜか手に取りたくなる不思議な魅力があります。

無銘埋忠極めの鐔(詳細はこちら

値段だけ見れば安鐔ですが、織部焼のように綺麗な円ではなく、あえて歪ませるなど形に変化を加える事で楽しさや詫びを表現するのはどこか桃山頃の気風が感じられ、その感覚が好きなのかもしれない。
金や銀などで華やかにしていないのもまた自身の好みと合っているのでしょう。

(画像出典:文化遺産オンライン 織部黒茶碗

この経験をして以来ヤフオクも捨てたものではないと感じ、度々気になった鐔を落として見るものの、やはり1ヶ月もすると興味が失せ手放しても良いかと思える鐔ばかりなのだから、なかなか上手くいかないものですね。

重要指定が付いているから良い鐔だ、値段が高いから良い鐔だ、これらを否定するわけではないものの、そうした物は言い換えれば既に誰かが美を見出した物、と言ってもよく…。
手元にそうした物を置いてみると実際とても良い物が多い事に気が付くし、故に高い値段が付けられる事は必然であるようにも感じる。
しかしだからと言って「安い物=悪い物」という事にはならない(ならないがしかし悪い確率が高いのもまた事実である)。

良いと言われる物を手に取りじっくり鑑賞した上で、それがなぜ評価されているのかを自分なりに理解した上で、他の人がまだ大して評価していない物を自分が美を見出して評価するという行為は本来の美術品の楽しみに通じる物があるのではないかと感じる。

良いと言われる物をしっかり理解する前に自分の価値観だけで物を見てしまうと、自分の価値観や感性が正しいという偏りある傲慢な見方になってしまい井の中の蛙状態になるだろうし、常に慢心せずに目の前の物に真摯に向き合い続けてこそ「他者が評価する美」を受け入れる力が培われるのかもしれない。
そしてそれを受け入れる事が出来た時に初めて眼が成長するのかもしれない。

そしてそして、それが形になって表れるのが最終的にその人のコレクション、という事になるのだろうから「蒐集品を1つ見ればその人のコレクションの質が分かる」という言葉は実に論理的で故に至言なのであろう。

この鐔は何かの所載品でもなければ、鑑定書も保存刀装具であり、言うなれば誰からも大して評価されてこなかった鐔であるが、私自身はとても気に入っているのでこの鐔から感じた事を出来る限り文章で残していきたいと思う。並行して名品などもしっかり見る事で偏りのない眼を作っていきたい。
そしていずれはこの鐔の作者に辿り付きたいとも思っています。


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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