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刃切れの刀に価値は無いのか?

日本美術刀剣保存協会(日刀保)では刃切れのある刀は現在鑑定審査に合格しない(出しても返品される)事になっています。
以下は日刀保の保存刀剣の審査基準ですが、刃切れとは明確に記載がないものの、鑑賞に堪えられないと判断されていると思われます。

(画像出典:日本美術刀剣保存協会 審査基準


因みに刃切れとは以下のようなもので、刃に対して垂直に細い割れのような物が入っているものを指します。

(画像出典:日本刀専門買取.com

この刃切れが嫌われている理由としてはここを起点にして刀が破損しやすくなると考えられているようですが、日刀保新潟支部の実験によると刃切れがあるからといって直ぐに破断するなどはなさそうです。

みね打ちで刃切れ部を石に打ちつけてみました。10数回試しましたが、刃切れ部の口が開くのみで、破断はしませんでした。
(引用元:日刀保新潟支部 破断試験報告

(画像出典:日刀保新潟支部 破断試験報告

しかしそうした事に関係なく、刃切れがあると刀の価値も大幅に下がるのが実情です。
刀剣店で刃切れを明記した上で低価格で売っているところもありますが、基本的にはごく少数。
因みに刃切れの存在を隠して刀を売る事はもはや御法度のような感じとなっており、見つかった場合は返品が可能な所が多いです。

そんな事もあり、基本的に「刃切れ=致命的な疵」として日本刀の疵の中でもトップクラスにマイナスの扱いを受けているような状況ですが、鑑賞がメインの現代において本当に刃切れはそこまで悪いものなのか?と疑問に思います。
流石に疵のない刀と同列に扱うのは無理がありますが、少なくとも刃切れがあるなら刃切れと明記して鑑定書を発行すれば刀剣店でもそれ相応の価値で流通するはずですし、保管され後世に残る要因の一つになるのではないかとも思います。

もしいつの時代も刃切れの刀に価値が無いとしたら、早々に歴史に埋もれて無くなっていたはずです。(最近になって刀を落としたりしたことで刃切れが出来てしまった物もあるかもしれませんが)
そのような刃切れの刀が今現在も残っているというのは刃切れに対する考え方が今と昔で異なっていたようにも感じます。

日本美術刀剣保存協会。
「刀剣保存」というのであれば刃切れの刀に対する価値観を改めて、これらの刀も後世に残るように促すべきに思いますが如何でしょうか。
その方法は刃切れと明記した上で鑑定書を発行する事、だと私は思います。

刀剣店の方に聞いても重要刀剣クラスだけど刃切れがあって商品にならない刀も沢山あると嘆いている所もあります。
個人的には刃切れがあっても重要、特重クラスで出来が良い物であれば是非欲しいと思いますが皆さんはどのように思われますでしょうか。


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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