見出し画像

東京都支部鑑賞会①入札鑑定、鑑賞刀振り返り

昨日は日刀保東京都支部の鑑賞会でした。
鑑賞刀のテーマは平安期の三条から慶長新刀の埋忠明寿までの山城物、刀装具は奈良三作(安親、杉浦乗意、奈良利寿)で刀、刀装具共に名品が並びました。
会場はいつも以上に混んでいた気がしますが、案の定刀装具は人も少なくじっくり見れました。
ありがたやありがたや…。

刀装具は明日振り返るとして、今日は入札鑑定の振り返りをします。


・鑑定刀

1号刀 助真(太刀)

刃長2尺3寸8分、反り6分。一見慶長新刀のように見える姿。
人の後ろから見ている時はこれは新刀の南紀辺りか?と思って見てみたが、どうも映りが出ている。刃は丁子や重花丁子と乱れている。特に物打ち辺りは盛んに乱れている。
刃中には金筋や砂流しなどの働きも盛んに見え、地鉄も相州のように見える箇所がある。
沸が非常に小さくふわりと見事についてる辺りから南紀も一理ありそうな気もしたが、映りもある事から一文字辺りを疑うが、それにしては匂口が深過ぎる気がする。
以上の事からもしかすると郷ではないかと思い、郷義弘に入札し✕。
結果は相州の祖とも言える助真の作でした。
茎を見るとすり上げ姿。10~12㎝ほど摺り上げているとのこと。
銘の位置で立ててみると見事に優美な姿になりました。


2号刀 新藤五国光(短刀)

刃長7寸、内反り。小ぶりな短刀で内反り気味。フクラ枯れ気味。
鉄に非常に潤いがあり見事な直刃を焼いている。
地鉄を見ると小板目や板目、杢目などが見え肌立ち気味。
匂口の新雪が降り積もったような細やかな今にも溶けそうな沸で青みがある。
行光であればもう少し大振りになりそうな気持もし、新藤五国光に入札し当。
振袖茎の見事な姿の国光でした。


3号刀 則重(短刀)

刃長8寸4分、内反り。フクラが枯れているような切先。
うねるような地景から一見して松皮肌の則重の特徴が良く出ているように見える作。
しかし以前南北朝期の「秦長義」という則重のような刀を作る刀工の存在が脳裏をよぎる。
これが則重なのか、秦長義なのか。
地鉄を見ると黒っぽい。肌を見ると相州上工に見られる黒色の地景が見える。大きめの沸が所々についているが全体的なバランスを邪魔する事なく綺麗にまとめている。
姿は小ぶりで2号刀の国光と大きさ的にはあまり変わらない印象である事から、やはりこの時代の則重ではないかと見て入札。当。
金象嵌銘入りの重美の則重でした。

4号刀 貞宗(刀)

刃長2尺3寸8分、反り6分。
反りはあまりない。しかし中切先にやや伸びた姿はいかにも南北朝時代を表しているように見える。
この時代の物ではありつつも刃は小さな沸で構成されており全体的に柔らかい印象を受ける。
しかし、相州特有の上品な地景が刃の部分と絡んでいる箇所がよく見られる。(特に横手下あたり)
沸はそこまで荒々しいものが付いているわけではなく上品にまとまっている印象があり、棟近くには二本樋が入っている。
以上から正宗というよりは貞宗かと思い貞宗に入れ、当。
特重指定の貞宗。
ただしずっと正宗として伝来してきた刀のようで、今回は刃の働きなどから正宗と入れるのが一番良い入札ではないかとの事。
正宗、貞宗の違いは難しいですね…。


5号刀 廣光 延文三年三月(小脇差)

刃長1尺1寸。反り僅か。重ねが薄く、小脇差サイズ。
皆焼である事から長谷部が頭に浮かぶ。
しかし気になるのは帽子にある長い返り。
こんな長い返りはしていただろうか。
皆焼はその上から重ねるように焼かれている。
何と言うか二回焼き入れをしているようなそんな印象を受ける。(この感想は個人的なもので適当)
長谷部なのか疑問を持ちつつもそれ以外の刀工が頭に浮かばず長谷部国信と入れ同然。
正解は廣光。
あぁ…南北朝期の皆焼と言えば廣光、秋廣の両名がいました…。
因みに長谷部であればとても薄いので今回の半分くらいの薄さになる、と。地は板目で刃寄りあるいは棟寄りが柾に流れる。その為、飛び焼きが柾に連れて角ばるように見えるのが長谷部とのこと。

という事で今回は75点でした。

天位は満点が2人、人位でも90点と非常にレベルの高い争いでした。
そこには遠く及びませんでしたが、外した1号刀も途中までは惜しい見立てを出来ていたのと、最後まで時代は外さなかった点は自分を褒めたいと思います。


・鑑賞刀

■テーマ:山城物
①太刀 三条
②太刀 無銘粟田口
③太刀 粟田口国吉
④短刀 国吉
⑤小太刀 吉光
⑥太刀 来国行
⑦短刀 来国俊
⑧短刀 来国光
⑨太刀 来国光
⑩短刀 来国光
⑪太刀 無銘 長谷部国重
⑫短刀 三条吉則
⑬短刀 平安城長吉
⑭短刀 平安城吉房
⑮短刀 埋忠明寿

個人的に1番好みだったのは②の無銘粟田口。
乱れ映りが鮮明に立ち、飛び焼きのようなものも見られる。
非常に反りが高く、覇気と優美さが共存している珍しい太刀。
茎の目釘孔を用いて枝菊の絵が描かれている。
粟田口?!と思った作で、率直な感想で言えばもっと古い物に見える。
解説を聞くと、もともと佐竹家に伝来したものらしく、菊御作として伝わったものの様子。城を守る太刀として崇められてきたらしいとされる太刀。
なるほど、そちらの方が個人的にはしっくりきます。
解説を聞くと、粟田口なら国友あたりではないかとのこと。

①の三条も非常に素晴らしい太刀で、2尺5寸1分、反り6分9厘、生ぶ茎姿で光徳刀絵図(石田本)に収録された名品。石田本は9代本阿弥光徳が秀吉からの贈刀を絵図面におこして石田三成に渡したもの。
焼き落としや打ちのけも綺麗に入っており、正直三日月宗近よりも状態が良いように感じる。姿も非常に優美な姿で、こうした作を手に取って拝見させて頂けるのは本当に有難いです。

⑤の吉光は成瀬家伝来の有名な小太刀で京のかたな展にも出品されたものです。手に取り拝見させて頂くのはこれで2度目でしたが、やはり地鉄が抜群に良く引き込まれます。

⑮の明寿の短刀は第1回の特重に指定された龍の彫のある短刀。
個人的な印象でいえば国広の天正打ちのような地鉄をしている気がしました。ただし刃はもっと冴えている印象。同じ時代に生きていた者同士、通じる作風などあるのでしょうか。


・終わりに

次回は4/20(土)との事で、相州物(仮)とのこと。
ちらっと聞いた感じで次回も凄くなりそうな感じで非常に楽しみです!!

明日は刀装具(奈良三作)の方について振り返ろうと思います。


今回も読んで下さりありがとうございました!
面白かった方はいいねを押して頂けると嬉しいです^^
記事更新の励みになります。
それでは皆様良き刀ライフを!

続き

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?