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「日本刀 記録の系譜」展は名展でした

7/30まで刀剣博物館で開催中の「日本刀 記録の系譜」展を見てきました。
日本刀の姿や刃文、茎の情報をどのように記録に残してきたか、にフォーカスした展示で今までにない面白い展示でした。
刀剣の展示もあり名刀ばかりです。

■展示は6部構成

展示は全6章で構成されています。

・1章 記録の歴史

1章では茎や刃文の記録といったものが、どういう過程を経て進化してきたかが分かります。


ざっくり書くと以下のような変化です。
最初は雑だった絵が忠実に記録していくという視点で進化していっている様子が分かりました。

①ただの絵
②忠実に模写。文字が添えられている事で現存作との照合も可能になる。
③紙を押し付けて出来た跡を墨でなぞり描写したと考えられているらしい。
紋部分は版画技法を応用、より忠実な記録へ。
④木版印刷により大量生産が出来、本として普及。
しかし茎の長さが規格化されて全て同じなど客観性に乏しい。
⑤規格化した茎を変えて、刃文も描かれるように
⑥江戸時代後期になると茎に直接墨を付けその上から薄い和紙を載せて採択した直接押形が出現。
⑦同じく江戸後期に登場した茎の上に和紙を載せて硬い墨で擦って採択する間接押形。
こちらの方が茎を痛める事が無いので現在では主流に。
⑧そして写真へ


・2章 刃文の記録

2章では刃文の記録にフォーカスされます。
よく見る刀身全体が描かれた「押形」が登場します。



・3章 記録された刀剣

3章では当時の記録写真と実物を比較する事で、刀の状態が時代と共に変わっているのだという実感を得られます。
ここに展示されていた安綱は製作当初の形を留めており、地斑映りがはっきり立つなど童子切にも負けず劣らないクラスの名品だと個人的には思いました。

この安綱は凄い
地斑映りがはっきりと
生ぶ茎


・4章 古実家による記録

4章では拵を色鮮やかに模写している記録の展示が見れます。
記録されていたのは刀身ばかりではないのですね。


・5章 文化財調査と研究

5章では実際に江戸時代後期に火災で焼けてしまった茎?が展示されていました。鑑賞時は焼けた本物の茎と思って見ていましたが、しかし解説を読むと「型取り資料」と書いてあるので何か型を取って複製しているのかもしれません。
ここは私の理解が追いつかず、どちらが正しいか分かりません。
見に行かれた方ぜひ教えてください。

刀身を内部分析した版画などもあり、構造が分かり楽しめました。
全部で4枚展示されていましたが、刀によって構造が全然違うので実際に展示を見て色々比較してみると面白いと思います。


・6章 江戸から現代の記録者たち

最後は現在押形を書かれている方にフォーカスされています。
個人的にも今の押形が過去一番美しくかつ情報が詰まっていると感じました。そういう意味でも歴史と共に記録が進化しているのだと実感します。

刃中の働きや映りまで再現した現在の押形は写真が発達した現代においても無くすことが出来ない貴重な記録方法で、かつ歴史上今が一番に個人的には感じました。


■終わりに

今回の展示は「刀の記録」についてフォーカスされた前例のない展示に思いました。
昔の記録があるからこそ今伝来のはっきりした刀の存在があり、記録がもたらす貢献度は計り知れないものがあります。
こうした資料は貴重なものも多く、普段目に出来ない物も多いのですが、そうした実物を見る事の出来る貴重な機会ですので是非都合をつけて行かれると面白いかと思います。
刀の展示も全て名品で圧巻でした。個人蔵で撮影不可の名品も多いです。
「日本刀 記録の系譜」展は両国にある刀剣博物館にて2023/7/30まで行われています。

古備前友成
助広
武蔵正宗



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それでは皆様良き御刀ライフを~!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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