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刀の入札鑑定について思う所

刀の入札鑑定についてXで意見が飛び交っていますね。
私もガチ初心者の時(正宗と虎徹、村正しか名前を知らない時)に入札鑑定してみて、と言われて困惑した経験があります。
数日前に現代刀を手に取って見たばかりで、なにせ古い刀を手に取るのは初めてなので正直全然分からない。
取りあえず全て虎徹と書きましたが、全部ハズレ。
解答を聞いても誰それ状態。
解説を聞いても、専門用語が多すぎてお経のように聞こえる。
まぁ私に限らずガチの初心者はこんなものではないでしょうか。
あの時はつまらない、というよりもなぜ初心者にそんな事をやらせるのだろう?と主催者の意図が良く分からなかった。

最初から刀工銘を教えてもらって刀を鑑賞した方が得られる事が多いと感じた為です。
正宗か?虎徹か?村正か?どれだ??
と正解も分からないままずっと30分ほど考えながら見た後に、正解は「大慶直胤」と言われ、誰?!となるのですが、後で振り返る時にあの刀なんだっけ?村正?という感じで回答を聞いた1分間と自分なりに考えていた30分間では30分間の時間を要していた方の思考にどうしても記憶が引っ張られてしまうのです。
故にあの刀村正だっけ?という感じで記憶の入れ違いが起きてしまい、正解(大慶直胤)と刀が結びつかない事象がありました。
私だけかもしれませんが。

それであれば最初から大慶直胤と教えてもらい30分間見続けた方が、「(ほうほう、大慶直胤という刀工はこういう作風なのか…)」という具合で大慶直胤を頭に入れる事が出来たのではないかとも思います。
なにせ当時は刀を手に取れただけで高揚し、緊張し、光っている刃文を見ているだけで「なんて美しいんだ…」と感慨に浸ってましたから…。
その状態で作者を当てるのは不可能です。

そんな私も今は入札鑑定があれば積極的に楽しみながら参加しているのですが、自分で刀を買ったり刀を見せて頂いたりしている内に、段々刀の見方(時代や刀工の特徴)、名前などある程度分かってきたから楽しいのだと思います。
そして入札鑑定に参加する事でこの理解が加速したような気もします。

例えばやみくもに虎徹と入札していた時は言うなれば「0→10」と言う思考でしたが、入札鑑定する事でまず刀身の姿(長さや反り、重ねなど)から時代を絞って、次に刃文(焼き落としや帽子など)の形を見て、地鉄を見て…という感じで「0→1→2→3→4…→10」と10の解答に至るまでの1つ1つのポイントを刀の隅々まで確認しながら見れるようになった気もします。

つまり「さぁ虎徹を鑑賞しましょう!」と虎徹の刀を並べて鑑賞した際に、ガチ初心者の頃の直感で見ていた自分と、今では見ている刀が同じであっても刀の見えている範囲は広いと思います。
これは入札鑑定に参加して(勿論外しまくりますが)解説を聞く中で、刃文の形や地鉄の様子など1つ1つ追っていく事で、そうか日本刀はそういう所を見れば良いのか、と実感したからに思います。

でも入札鑑定をせずに同じように体系立てて見方を教えてくれるような所があればそれでも刀を見れるようになるかもしれない。
無言で同刀工の作を10振位比較しながら見続けられる場があれば、それだけでもその刀工の作だけは分かるようになるかもしれない。
こればかりは分かりません。

つまるところ大事なのは刀趣味を楽しむことだと思うので、嫌な気持ちになってまで入札鑑定に参加するのは違うと思います。
入札鑑定をする会、しない会、色々な会があるので自分の好みにあった所に所属するのがベストと思います。
私の場合で言えば、初めのうちは入札鑑定に参加した所でどうせ当たらない(刀工銘も分からない、刀もどこを見れば良いか分からない)で入札する気もあまり起きなかったのですが、刀が少し分かってくると途端に楽しくなったので入札鑑定に参加しています。

そういえば話を少し戻して、最初の入札鑑定に参加した後に刀屋さんへ行き入札鑑定のアドバイスを求めたところ、「鑑定なんかどうせ出来ないんだからしなくていい。鑑定よりも時代の区別がついてどういう刀が良い刀なのか(位列)を見極められるようになっておいた方が良い」と聞いて以来、自分の中では時代と位列を間違えなければ1本入札で0点でも良しと考えるようにしています。
凄い人は個銘まで当てていきますが、上を見たらキリがないのであくまで比較するのは自分自身にしています。
間違っていても前回よりも少し見えるポイントが広がっていたらそれは自分自身を褒めてあげたい。
そうすると結構楽しくなると思います。

因みに「なんでこんなものも分からないんだ!」と初心者に干渉してくる人は私の周りではまだいませんが、そういう人がいるという話もXでは出ていますね。
本当に刀が見える人が初心者に対してそのような言葉をかけることは無いと思いますので、そういう人が居たらもう災害と思い退避しましょう…。
その人との関わりを絶った方が刀が楽しくなるはずです。
自分が楽しいと思う事に全力を注ぎたいですね。


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それでは皆様良き御刀ライフを~!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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