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刀展示ケース製作日記⑥ 壁紙

私が作る展示ケース(刀箱漆)の制作工程を複数回に分けて書いています。
完成した展示ケースは以下の物です。

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動画でも刀展示ケースの機能を一通り紹介してます。


・前回までのあらすじ

前回は製作した外装に配線をして、ライトが点灯するようにしました。

今回は刀の背面にあるバックボードと、土台の作り方について書いていきます。
メインである刀を如何に引き立たせるか(刀を邪魔しない物か)が肝になってくる大事な作業です。
完成するとこのようになります。

・バックボードと土台取付後

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①バックボードの壁紙選定

刀の展示ではよく黒、青、赤といった色が背面に使われる事が多いのですが、鑑賞時に「目が疲れない」「刀が引き立つ」という考えのもと、黒系統で選ぶ事を決めました。
黒の壁紙といってもグレーぽい物から、濃い黒まで様々です。
実際に刀に合わせてみないとイメージが湧かない為サンプルを取り寄せ1枚ずつ何度も合わせてみました。

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結果、グレーは光を当てた際に刀が背景と溶け込んで見えづらいということが分かりました。
柄入りは柄の主張が強く、刀を引き立たせるという目的から外れる為除外、
最終的に濃い無地の黒が合うという判断に至りました。


②壁紙の貼付

・バックボードへの貼付
壁紙を決めたので、次はバックボード(木材)に貼っていきます。
正面は後程黒い壁紙を貼るので裏面のみ黒く塗装しました。

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まずシーラーで下処理をします。
これにより壁紙と壁面の吸着が良くなり剥がれにくくなります。

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次に空気が入らないように注意しながら壁紙を貼っていきます。
このシートは粘着テープが付いているものを使用しています。
(糊タイプの物を使用する場合は後述する「土台への貼付」で記載)

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貼り終えたら以下のようにはみでた部分をカッターで切り、完成です。

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・土台への貼付

壁紙の裏に糊が付いている(糊を付ける)タイプはこのように貼ります。
まずサイズに合わせて大まかに切り土台の上に載せます。

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ローラーで空気を抜きながら綺麗に貼ります。

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壁紙をピンと張り、糊が剥がれ皺にならないよう、念のためタッカーを打っておきます。

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1日乾燥させたら完成です。

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③土台の壁紙選定について

これは完全に個人の感性次第と思いますので、人それぞれ良い悪いが分かれると思います。
また飾る刀によっても合う合わないがあります。
そのため、製作依頼を頂いた際は依頼者の方とよく相談して決めたく考えています。

ここを上手くまとめる事が出来れば、刀を飾った際により刀が際立って美しく見る事が出来ます。


・刀によって合う合わないがある

例えば以下は慶長新刀の堀川国広です。
土台の壁紙によって見え方が変わるのがお分かり頂けると思います。
(カメラの補正で写真の映り方が若干変わってしまっていますが)

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個人的には新刀のように肌が詰んでいて刃が明るい場合には最初の写真のような無地に近いシンプルな壁紙が合う気がします。
逆に刃文や地景の複雑な古刀であれば、柄入りの壁紙(または漆板)が合う気がします。
以下は鎌倉期の相州行光です。

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下は漆板です。

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勿論上記以外にも沢山の壁紙があるので、依頼時に「こんな色、柄が良い」などあれば近い物を探し提案させて頂きます。


④終わりに

この工程は大体2~3時間くらいです。かがんで作業するので腰が痛くなります。大きな台が欲しい…
地味な作業ですが刀を見たときにパッと目に入るため気の抜けない作業です。
次回は最後に少し紹介した漆板について書こうと思います。


今回も読んで下さりありがとうございました!
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記事更新の励みになります。

それでは皆様良き御刀ライフを~!

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