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お店の刀を飾らせて頂く【PART5】太刀「備州長船(以下切政光) □年八月(以下切)」

お店の刀を製作した展示ケースに飾らせて頂く企画第5弾です!(第4弾はこちら
第4弾に続き今回も銀座長州屋さんより展示刀をご提供頂いています。
第5弾は「備州長船政光」の太刀です!
約630年前の備前の太刀です。

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①備州長船政光について

政光は南北朝時代から室町初期にかけて刀工で(延文年紀~応永年紀の作が現存)、兼光門の1人。
同時期の別系統の長船派に長義や元重がいます。
兼光門で政光の他に有名な刀工といえば、倫光や基光など。
政光は兼光の子とも言われている。
「五ヶ伝の旅 備前伝長船鍛冶の黄金期(著:田野邉道宏)」によると、政光の作刀の多くは南北朝末期の年代の為、身幅が広く大切先の体配というのは少なく、身幅尋常で中切先の形状が多いとのこと。
今回の太刀も後者。


②姿

腰反りが付いて中切先の姿。

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刃長 :二尺三寸一分(70cm)
反り :五分五厘 Sori (1.67cm)
元幅 :九分九厘(3cm)
先幅 :六分六厘半(2.02cm)
棟重ね:二分五厘強(0.76cm)

僅かに減っているとはいえ、時代を考えるととても健全。

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何となくであるが、下の赤線位置くらいで錆の雰囲気が変わっているので、摺上げ前は赤線辺りにハバキ下面が来ていたのではないだろうか。
すると刃長が80㎝位になるのでやはり長い。
黄緑矢印の先にある線はハバキを無理やり下ろそうとして付いた疵に思える。(刀には良く見ますが無理やりハバキを下ろそうとするとこのような傷が付く事があるので注意しましょう。ハバキが止まる所で止めて手入れするのが良いかもしれません)

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帽子も鮮明に確認でき、よく残っているのが分かる。

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備州長船まで読めるが以下が切れている。
恐らく後世の時代になって、兼光に極められる事を狙い切った可能性もあるとのこと。年紀もそれに伴い「年八月」の部分くらいしかはっきり読むことは出来ない。
恐らく意図的に潰しているのだろう。
出来が良い分実に勿体ない…。

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③刃文

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尖り刃や腰が開いたような刃が見られる。小足といって刃境から刃先の方にかけてちょんちょんと小さい刃が入っている。
匂い口の締まる刀だが、匂い口が明るく冴えている。
佩き表と裏で刃文が異なるのも面白い。
佩き表は腰の開く刃文が見られるが、佩き裏は尖り刃が盛んに見られる。

佩き表↓(腰の開く刃文が良く見える)

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佩き裏↓(尖り刃良く見える)

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淡く乱れ映り立つ。

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④地鉄

板目に杢を交え、流れ肌が見えます。

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⑤押形&詳細写真

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(画像出典:銀座長州屋

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(画像出典:銀座長州屋 ←詳細画像の続きはこちら)


⑥終わりに

こちらの政光は重要刀剣の指定を受けています。
南北朝という時代を考えても健全で地鉄も変化に富み見れば見るほど深みにはまっていく感じがしました。
こういう刀は1ヶ月程時間を掛けてじっくりと楽しみたいですね。

また刃文が表裏で大きく異なるのも1振で2振楽しめているようで面白い。
(村正の特徴として表裏の刃文が揃う事、と言われるくらいなので基本表裏で刃文の形が異なる事が普通なのですが、ここまで違う形の刃文を焼いているのは面白い)
重要刀剣になると値段も跳ね上がるんですが、その分やはり出来や健全性も良くなるのでやはり値段はある程度正直なのかもしれない。

※注意
こちらの刀は執筆時点においてお店で販売されている刀になります。
ここに書いた内容は個人意見であり自身の刀歴からいっても刀の状態を的確に捉えられているわけではありません。
また本記事は購入を勧める為のものではありません。もし刀を買う場合は必ずお店で現物を良く見てご自身で納得された上でご購入されてください。


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それでは皆様良き御刀ライフを~!

よろしければ以下もご覧ください。

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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

プロフィール_1

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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