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うつみ宮土理さんと来国光

昭和頃に日本刀に興味を持っている女性は少なく、その代表格と言えば勿論元佐野美術館館長の渡邉妙子さんであっただろうが、実は女優の「うつみ宮土理さん」もまた刀に興味を持っていた女性の1人である事はあまり知られていない。


「愛刀百華選(著:林盈六ほか)」を見ると、うつみ宮土理さんが来国光に惚れた一面が取り上げられているので紹介したい。

かねてから妹が日本刀の勉強をしており、たまたま私も恵まれて拝見したのがこの来国光の短刀です。
刀というものは「刃物」という考えが強く、それまでは何か恐ろしく思っておりましたが、この来国光を見た瞬間、この考えはまったく変わってしまうほどでした。美しい地鉄と直刃の上品さが調和し、見ている私に何かを語りかけています。

中心(なかご)の文字も作者の素朴な人柄を物語っているようです。
当然武器として作る事を要求された時代にあって、それらの条件を満たし、しかもこんなにも気品ある作品を残した人たちがいて、数百年を経た今日、私たちが鑑賞する機会をもっていることに単なる偶然以上のものを感じます。
本当に来国光が「私の愛刀」となるように、無理に割愛をお願いしている所です。(引用元:「愛刀百華選」より)

画像出典:「愛刀百華選(著:林盈六ほか)」より


上記のように愛刀百華選にはこの来国光の写真と寸法が掲載されているが、なんと元重ねが0.7㎝もある。
かなり重ねが厚く健全な様子が伝わってくる。
さてこの来国光は特重あたりの指定を受けているのだろうかと探して見たところ見当たらない。
次に重要美術品全集を調べて見たところ…なんとそれらしいものが。
茎孔を1つ埋めているようだが同一のものっぽい。
重美指定の際は埋金されていなかったようだが、愛刀百華選が出版された際は鉛などで埋められた事が分かる。

画像出典:国立国会図書館デジタルコレクション「日本刀重要美術品全集 第1巻」
画像出典:国立国会図書館デジタルコレクション「日本刀重要美術品全集 第1巻」


ところでうつみ宮土理さんの過去を少し調べてみたところ、実母である内海ツルさんは宮土理さんが小学校4年の時に亡くなられたようで、その後は実母の姉の内海ハナさんが代わりとなって宮土理さんを育てていたようです。
宮土理さんの父は世田谷の豪農の家に長男として生まれ、何千坪という広い土地で酒屋(今でいうスーパーマーケット規模のもの)を営んでいた様子。
以下はその父が出征した時の写真との事で、手には軍刀が持たれています。(宮土理さんの父はその後戦死)

(画像出典:婦人画報

「愛刀百華選」でうつみ宮土理さんが「刀というものは「刃物」という考えが強く、それまでは何か恐ろしく思っておりました」と述べていたのは刀がまだ戦争に身近なものだったからかもしれません。

そんな中において、うつみさんを魅了した来国光の短刀とはどれだけ美しいものだったのでしょうか。
そしてうつみさんは結局この来国光を手に入れられたのでしょうか。
はたまた現在何かしらの刀を所持されているのでしょうか。

個人的には日本刀を勉強されていたという宮土理さんの妹さんの今についても非常に興味があるのですが、残念ながら情報を見つける事は出来ませんでした。


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それでは皆様良き刀ライフを!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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