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東京都支部の刀鑑賞会に参加しました(22年10月度)

昨日東京都支部の刀鑑賞会に参加してきました。
毎回テーマが設定されますが、今回は「鎌倉殿時代の刀剣」と「刀装具の作成手法」がテーマでした。

会場となった東京美術倶楽部

鎌倉殿時代とはNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の時代を指しており、つまり平安末期から鎌倉前期にかけての刀剣です。
並んだ鑑賞刀は、菊御作、五条兼永、安綱、古備前包平や成高を初めとする古備前、古一文字、福岡一文字吉房、豊後国行平、古千手院など重要美術品3、特別重要刀剣4と豪華すぎる内容。
殆ど全てが在銘で、中には超健全な生ぶ茎の品もありました。
指定が何も無いからと言って侮る事なかれ。
何も書いてなくても文化財級の刀が並んでいます。
そんな事もあってか会場ではいつも以上に鑑賞時に注意を促すアナウンスが多かったように感じます。

①気になった鑑賞刀など

鑑賞刀ほぼすべてに度肝を抜かれっぱなしであったのですが、中でも古備前包平には感動しました。
包平は言わずと知れた大包平の作者です。
佐竹家伝来の作で生ぶ茎に包平と二字で銘が入っており、踏ん張りが付いて腰反りが高い。
大包平の健全さに迫る作…というよりも同じ位健全なのではないだろうか。
刃肉がたっぷり残っており、持つとその重さと覇気に驚かされる。
地沸が微塵について刃中の働きが区から切っ先まで盛ん。
見所が多すぎてとても1分、10分、1時間では見切れない。

因みに銘半分が棒樋によってかき消されているが、これは佐竹家が幕府からの献上命令を避けるために行ったと考えられているらしいです。
他にも佐竹家伝来の作で、例えば吉房には同様に銘の半分が切れている物があったり、光忠の作も銘の一部が磨られているような感じになった物があったりと、佐竹家では結構意図的にこのような事が行われていた様子。
とかく佐竹家伝来の刀は異様に健全で出来が良い物が多い気がするのは私だけでしょうか。


②鑑定刀(一本入札)

今回鑑定刀は6振並びました。全て豪壮な姿で重厚な新々刀です。
1号刀~6号刀の正解は以下の通り。

①次郎太郎直勝
②固山宗次
③源清麿(正行銘)
④細川正義
⑤栗原信秀
⑥作陽幕下士細川正守

まず結果から。
今回は30/120点でした。
6号を除いて全て時代が当たったので良しとしよう…。

・1号刀 次郎太郎直勝

水心子正秀に入れて同然。
地鉄が詰んでおり、片落ち具の目のような刃文にそれを上下に分断するように長い太い金筋や砂流しのようなものが入っていました。
刃は明るく冴え、刀身には不動明王ではない何か四天王のような凝った浮彫が施されています。
以前水心子正秀の作で似たような作を拝見した事がありましたが、刀身彫もまま見られるので水心子にいれてみました。
水心子一門は彫が上手い…。
大慶直胤に入札された方が1番多かったようで、次郎太郎へ入れた方は1名のみという結果でした。


・2号刀 固山宗次

左行秀に入れて×。
これは全然分かりませんでした。
ただ刃が明るく豪壮な体配という点から勘で入れました。
解説を聞くに、刃文が特に長運斎綱俊のような出来との事で、そこへ入札していれば素晴らしいとの事。
固山宗次は天保年間に地鉄の美しい傑作が多いとの事で、「天保年間の作であれば錆びてても黙って買え。儲かるから」と解説者の方は昔よく教わったそうです。笑
地鉄と刃の冴えからか清磨に入れられた方もいるようですが、清磨は平肉がここまで付かないとの事です。


・3号刀 源正行(清磨)

11代和泉守兼定に入れて×。
地に柾がかった箇所が随所に見られた部分からここに入札していたので、清磨と聞いてびっくり。割と自信あったのですがまだまだでした。
尚、天保15年の作で、銘の鏨の入れ方から小諸打ちとみられる作とのこと。
尚清磨の作は約25年間の作刀人生で小刀なども入れて現存数は約200点ほどですが、これはかなり少ない数らしく、その技量も相まって高額になっているとの事。

・4号刀 細川正義

長運斎綱俊に入れて×。
これは大反省。
以前刀屋さんでハートのような特徴的な刃文を見せてもらっていた為だ。
どこかで見た事のある刃文と覚えてはいたものの、刀工銘を忘れてしまっていて確かこんな名前ではなかっただろうか…という事で長運斎に入れてしまった。
まさに以下の写真のような刃文であった。
この左右から足の入る丁子は細川正義とよく覚えておきたい。

霜剣堂さんにて


・5号刀 栗原信秀

源清麿にいれて同然。(栗原信秀は清磨門の第一人者)
こちらも豪壮な姿。しかし姿がどこかシャープで地と刃が特に冴えているように感じたので清磨に入札。
今の自分には清磨と信秀を見極める力はないのでもう同然で充分である。


・6号刀 作陽幕下士細川正守

現代刀匠無鑑査の吉原義人さんと入札して×。
細川正守は細川正義の嫡男との事ですが、初見でした。
匂口が締まりいわゆる4号刀と同じような躍動感ある細川丁子で、区には生ぶ刃が残っていました。
生ぶ刃から現代刀という考えが頭を離れずその線でばかり思考。
丁子と言えば吉原さんか大野さんに思いましたが、吉原さんぽさを感じたので入札。
こちらも今思えばせめて刃文の形から細川正義に入れるべき内容でした。
しかし解説者の方曰く、刀屋さんは細川正義と細川正守を見分けられないと駄目だ、とよく怒られたそうです。
姿形などが違うようですが、私には一切違いが分かりませんでした。
諸用で解説後に見直す時間が取れなかった事が悔やまれます。


③終わりに

今回鑑賞刀が凄すぎたので、鑑定刀は各2回程だけ見て後は全て鑑賞刀と刀装具に時間を当てました。
刀装具は目貫や小柄の作り方など、どのようにそれが出来ているのか、という事を並べて分かりやすく解説してくださいました。
小柄の構造などは初見でとても勉強になりました。
これはいずれブログにも書きたいと思います。
特に最近よく調べていた後藤家の龍と獅子の目貫(二代宗乗作)もあり、間近で造り込みを拝見出来たのはタイムリーで非常に勉強になりました。
東京都支部の鑑賞会は本当に毎回名品が多く並べて下さる方々に感謝しかありません。
次回が今から楽しみです。

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それでは皆様良き御刀ライフを~!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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