見出し画像

国広もなった「山伏」とは?

堀川国広は天正12年(1584年)に山伏だった事が刀の銘から分かります。
ではこの「山伏」とはどういう人の事を指すのでしょうか。

「白い服を着て、山にこもって修行する人」

正しいです。
ではどのような修行を何の為にしていたのでしょうか?
調べてみると想像以上に過酷な修行である事が分かりました。

画像2

(画像転載元:https://kougetsudo.info/yamabushikunihiro/)

①山伏とは

画像1

(画像転載元:https://hagurokanko.jp/341-yamabushisyugyou/taikenjuku/)

「山伏」は山に住んで修行する僧の事です。
日本各地の霊的で不思議な現象が起きやすいとされている霊山(恐山、比叡山、高野山、高尾山、大峰山など)と呼ばれる山々にて厳しい修行「修験道(後述)」を行い、山岳が持つ自然の霊力を身に付ける事を目的としていました。
山は一般の人々の日常生活からかけ離れた「他界」に属するものと考えられており、この他界に住んで山の霊力を体に吸収した山伏たちは、常人にはない力を持つと人々から信じられていました。
山伏はその力によって祈祷(農作物が育つように雨乞いなど)や呪術で人を救ったりなど多くの役割を担っていたようです。
一方で山伏は全国通行の自由を保障されていたので、政治や軍事に利用されたことも多かったとも言われています。


②山伏の服装

ほら貝の使用タイミング(後述)など面白いです。

画像4

・頭巾
黒漆で塗り固めた布で作った小さなもので、大日如来の宝冠を表現。

・法螺
法螺貝の笛の事。使用するタイミングは以下3つ。
①山の神に入山を知らせる為。
(これをしないと落石や地滑りなどに見舞われると信じられていました)
②山で遭難することなく修行が出来ている事を寺に知らせる為
③獣を避ける為

・手甲

手につける武具の事。外傷・汚れ・日射から肌を守る。

・最多高数珠

憑き物のお祓い、悪魔祓い、虫封じ、魔除けの意味があります。

・檜扇

木製の扇。

・鈴懸

麻で作られており、流派によって色を変えた様子。普通は白。

・脚絆

くるぶしに巻く布で、歩きやすく疲労を軽減する効果がある。

・八つ目草鞋

儀式や修行の時にだけ使用される丈夫な草履。

・笈

竹製の箱型、中には仏像・仏具・経巻・衣類・薬を入れていた。

・羅宇

竹製のキセル。

・結衣袈裟

細長く折り畳んだ布を輪状に紐で結び、所々に菊綴の丸い装飾をつけた物。

・金剛杖

四角または八角の白木の杖。稀に象牙や金属で作られているものも。

(参考:http://spi-con.com/what-is-yamabushi/)


③山伏の修行内容

山伏が行う修行を、修験道(しゅげんどう)と言います。
修験道とは、山での厳しい修行によって悟りを得ることを目的とした、日本独特の宗教の事です。
この修行を通して第六感による直観や洞察を得やすくなる為、修験道は
「内なる自分を開く」修行でもあるそうです。
因みに、修験道をする者は山に住んで(伏して)修行を行うことから、山伏と言われるようになりました。
その厳しい修行内容は「生まれ変わり」の意味を持つ10種があります。

地獄界: 地獄の苦しみに耐える修行(火渡りなど)
餓鬼界: 空腹と渇きに耐える修行
畜生界: 労働の苦に耐える修行
修羅界: 厳しい苦行に挫けそうになる心を克服する修行
人間界: 懺悔反省によって仏の心に生まれ変わる修行
天道界: 山頂からの眺めを楽しみ、喜びを感じる修行
声聞界: 喜んで仏の教えを聞く修行
緑覚界: 大自然と一体になり、迷いを振り払う修行
菩薩界: 助け合い、奉仕の修行
仏 界: 仏と一体になって世界平和を祈る修行
(参考:http://spi-con.com/what-is-yamabushi/)

これらを全て乗り切った者だけが本物の山伏になることが出来るそうです。
…うーん、私は天道界位しか出来そうにありません…。


④終わりに

山伏を調べる前までは「山ごもりして修行する僧」程度にしか思っていなかったのですが、修行内容が10種にも分かれている事に驚きました。
そしてこの厳しい修行を行った国広とは一体…。

国広は伊藤家に仕える武士であり文化人としての高い教養を育みつつ(他の人が使わない刀身彫刻や茎に難解な字を使っている事から高い知識、教養があったと考えられている)、山伏となって厳しい修行に耐えながらも、刀鍛冶として大成しました。
足利学校に立ち寄る前に一体何のために山伏になったのでしょうか。
山伏銘のある天正12年の作に初めて「不動明王」の彫物が登場する意味とは?何かしらの思想の変化によるものなのでしょうか。
多角的に調べると国広の人物像が少しづつ浮き上がってくるかもしれません。
また、山伏について知った上で改めて美術館などで国広の刀を見るとまた刀に込められた思想部分が見えてきて、刀の見え方が少し変わるかもしれませんね^^

そんな国広の生涯最後の作(年期入りの最晩年作)は一体どんな作か、気になる方は以下も合わせてご覧ください。

今回も読んで下さりありがとうございました!
面白かった方はハートマークを押してもらえると嬉しいです^^
記事更新の励みになります。
それでは皆様良き御刀ライフを~!

画像4

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?