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刀を鑑賞していて思うこと

今見ているものが約700年前に作られたという事がにわかに信じられない。
私は2022年現在34歳であるが、この刀は推定700~750歳なのである。
もしかすると「鎌倉殿の13人」と同じ時代に生まれているかもしれない。

壮大すぎて想像する事をやめてしまう事も多々あるが、真っ暗な部屋でライトを1灯だけつけて光にかざして刃文や地鉄を静かに鑑賞する。
時々使われた形跡であったり、刀匠のクセのような物を見つける事もあり、そうした物を見つけていく内に過去にどんな人が所有していたのだろうなどと、その長い歴史をつい想像してしまう事がある。

はて700年の間に何があったのか。
中高生の時に歴史の教科書で見た戦などについて思いつく所を取りあえず雑だが書いてみる。

1274年 元寇
1359年 筑後川の戦い
1467年 応仁の乱
1553年 川中島の戦い
1560年 桶狭間の戦い
1600年 関ヶ原の戦い
1637年 島原の乱
1732年 享保の大飢饉
1853年 ペリー来航
1860年 桜田門外の変
1864年 池田屋事件
1877年 西南戦争

これらが実際に起こった時代にこの太刀も確かにどこかに存在していて誰かが所有していたのである。
それが巡り巡って今手元にきてこう持つ事が出来ているのである。
そうした今と過去を繋ぐような物が手元にあるというのは実に不思議な感覚を得る。

当然ながらこの太刀は戦で使われているだろう。
何人もの人の命を奪っているだろう。
刀身についた刀を受け止めた時に出来るような切り込み疵(誉れ疵)があるなら、それこそ戦いの様子をリアルに感じる事も出来る。
疵も歴史を感じ楽しめる要素なのは間違いない。
それを怖いと感じる人もいるだろうが、私はそうは思わない。
それが刀の本来の用途を表していると思うし日本の歴史であるように思う。
それを鑑賞する事で感じ取る事が出来るというのは素晴らしい事だ。


他にも鑑賞していると刃文や地鉄がだんだんと景色に見える事もある。

例えばこの刀で言えば「森に霧がかかっている」ような景色に見えてくる (刀の地景が森、細かく沸付いた刃文が霧)。
そこから、もしかすると700年前に鍛刀場から見えた景色を再現していたり
などといった思考も出来る。
これは完全な思い込みでしかないが、それはそれで刀と対話しているようで面白い。

刀そのものは語らないが語っているように想像する事は出来る。
この刀を過去どんな人が持っていたかは分からない事が殆どである。
しかし歴史上に確かに存在していて今こうして残っている事は紛れもない事実である。
700年も前の物がこれだけ綺麗に残っていて数百万で買えるのは刀を除いてあまり無いのではないだろうか。
刀を買うという事は歴史を感じる機会を買う事でもあると思う。
刀との対話は面白い。

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それでは皆様良き御刀ライフを~!

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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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