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「現代作家の傑作が欲しい」という考えは間違っていたのかもしれない

最近というかここ1年程、刀装具などに加えて日常で使える茶碗なども何か良い物は無いかと定期的に探している。
刀装具は故人の作を探しているが、茶碗は現代作家の物を探している。

まだ良く分からない(刀装具も良く分からないのだが茶器よりはまだ少しは分かる)ので作者がはっきりわかる物を買いたいという気持と、気兼ねなく使いたい想いがあるので、現代作家の作中心に探している。
特に以下のような作が好みなのだが、良いと思う物は大体既に売約済みであったり、サイズが少し欲しい物と異なっていたりなどなかなか見つからなく難しい。

他にも以下のような現代にしか出てこない発想、現代ならではの魅力を持った作には引き込まれれるものがある。
実にへうげていて欲しい欲が沸々と…

さて、刀装具と茶器(現代作)を探す中で、出来れば傑作と言われるような作が欲しい。
これは蒐集している人であれば極々自然に出てくる欲、ではないだろうか。

故人の作は大体既に市場評価が出来上がっているので傑作は大体決まっている。
寧ろ有名な蒐集家が本を出してそこに掲載されている物が傑作と呼ばれていたり、その業界で有名な大先生と呼ばれるような人が傑作と言ったものがそのまま傑作として扱われているケースが多いように個人的には感じる。
著名な作家のそうした作は大体美術館に納まっているか、個人数寄者が秘蔵していて、掘り出し物として出て来る事は偽物をおいてまずない。

対して現代作家の作はまだそれが出来上がっていないケースが多い。
まずはギャラリーなどで取り扱いが決まり、その後有名な蒐集家に注目されたりアートオークション会社が作家作品を取り上げていく事で作家の評価や地位が確固たるものになっていき市場価格が需給と共に形成されていく、というのが1つの王道パターンではないだろうか。
しかしこれは上手く軌道に乗った作家に限っての話であり、そこまで到達しない作家の方が多い。
しかしその中に引かれる物があるのは事実であるし、そうしたまだ市場評価が定着していない手の届く物の中から自分で見出して買ってこそ本当に自分好みの視点で買ったと言えるのではないかと思うのである。

しかし一方で現代作家の作を買う場合はあと数日、数か月待てば新作が出て来るかもしれない…そう考えてしまい手が止まる事が過去に何度かあった。
相当気に入れば即買いするが、悩むのは自分の中で80点位の気持ちの場合である。

刀や刀装具を買う時は、この状態で買ってみて暫く時間が経って100点になった物もあれば、20点位になり手放した物もある。
故に悩む。
気に入らなければ売れば良いという人もいるかもしれないが、それもなかなか手間が掛かる。当然お金も掛かる。
なので自分ルールを設けて時間を掛けて日を置き、3回程見て尚欲しければ初めて買うのであるが、直ぐに売れて無くなって後悔した事も多くこればかりは難しい。
今はそれも含めて「縁があるかどうか」を判断材料にしているわけであるが…。

考えてみれば私自身刀の展示ケースを製作している身でもあり、きっと同じような悩み(数か月待てばもっと良い新作が出るのでは?という悩み)を依頼下さっている方も抱いているのかもしれない。
その場その場でベストな物を作っているつもりであるが、確かに10年後と今を比べると10年後の方が良い物を作っている可能性は高いと思う。いや、むしろ作っていなければ駄目であると思う。
しかしその10年後を迎えるには今支えてくれる人が必要であり、もし居なければ迎える事が出来ない。
なので今が作家としてのピークとなる。

そんな事を考えていると自分自身でもハッとしたのであるが、今買う事は今作家を支える事にもなるのである。
しかし他に支えてくれていそうな人が沢山いそうな場合は待ってみるのも手かもしれない。高い物をそんなに何度も買う事は出来ない。
10年後まで待ってみればもっと良い物が出来ている可能性が高い。その分価格は上がっている可能性も高いが。

■製作しているケースについての話(本題から脱線)
因みにこれは私のポリシーではあるのですが、初期に買って下さった方がもっと待っておけば良い物が手に入ったのに…と損した気分にはなって欲しくないので、改良のタイミングなどで少しづつ値段を上げています。
まだ誰にも知られていない時に制作依頼を下さった方というのは私の中でもやはりとても嬉しく、そうした方の気持ちを蔑ろにしたくはないのです。
故に値下げもしておりません。

色々考えを巡らせていたが、そもそも故人の作ならまだしも、「現代作家の傑作が欲しい」という考えそのものが間違っていたのかもしれない。
作家が存命の内は作品が出続けるのは当たり前であるし、物に傑作と書かれたわけでも無し、その物がその作家の生涯通じての傑作かどうかを今時点でどう判断するのか?
ずっとその作家の作品を買い続けている人であればその物がどの位の出来かを判断する事は出来るかもしれないが、それでも結局その作家の生涯の中での傑作は、その作家が作品を生み出す事がなくなるその日まで分からない。

故に傑作かどうかなどは気にせず、「好き、欲しい」と思ったタイミングで買うというのはある意味正しい行動な気がしてきた。
自分の中で80点でも買ってみるという行動が後々後悔しないのかもしれない。暫くして仮に20点になって手放す事を決めても、その過程で得られる知識や作家との交流など何かしらあるだろうし、それが次の蒐集の糧になるかもしれない。
などと思ったり…。


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。


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