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魚々子打ちの難しさについて

個人的に「現代の石黒」と言っても過言ではない程の超絶技巧でいつも驚嘆させてくださる個人的にも凄く推している(応援している)彫金工の方がいらっしゃいます。

辻本啓さんという方で、主に時計やナイフなどに彫金を施す仕事をされているのですが、少し前より刀装具の製作も始められたようで、初めての作品がもはや初めての製作と思えない程の完成度の高い作品で、細部まで作り込まれており一言で言えばとんでもない人が出てきたな、という感想なのですが、そんな辻本さんの初作品が現在開催中の現代刀職展の後期展示に展示されています。
が、細かすぎて展示ではまず間違いなく細部が見えない気がするので以下を見た方が良いかもしれません。

さてそんな辻本さんが、X(旧Twitter)で魚々子打ちの難しさについて教えて下さいました。
その話がなるほど!という程に良い話で面白かったのでブログにもまとめておこうと思った次第です。


・魚々子打ちの難しさ

きっかけは以下の投稿です。

素人目には「小さな粒が綺麗に並んでいて凄い」程度の感想だったのですが、辻本さん曰く、「一点ずつ(魚々子を)打ち込んでバリを立たせず島を残していないことに驚く」という何が凄いかを具体的に記しており、これは詳しく聞かねば!と思った次第です。

「バリ」とは金属を加工した際に出る出っ張りやトゲのことだと思います。
これが無いという事がまず凄い事だと。
「島」については分からなかったのでお尋ねした所、粒と粒の間に発生する隙間のような所をそのように呼ぶらしいです。

つまりバリを出さずに粒と粒の隙間(島)が出ないようにぎっしりと敷き詰める事がどうやらとても難しい事で凄い事のようです。
以下は上記Xの投稿内の動画をスクリーンショットしたものです。
上が石黒政常、下が辻本さんの魚々子です。

石黒政常の魚々子(辻本さんのXより引用
辻本さんの魚々子(辻本さんのXより引用

辻本さん曰く、政常は高精度にぎっしりと粒を詰めており辻本さん自身もまだまだ追いつけないとの事でしたが、素人目には両方上手く感じ、正直違いが良く分からなかったのですが、それは辻本さんの求めているレベルが非常に高い故でしょう。

さて、上記動画を見ていて粒の間隔が政常の方が僅かに広いようにも見えたので、粒を敷き詰める幅というのも難しさに影響してくるものなのか?とお聞きしたところ、広すぎても狭すぎても問題があるようで…。
ベストな間隔を見つけて均等に打っていく、これが魚々子打ちの難しい所なのではないかと実感した次第です。


この話を受けて改めて手持ちの太刀鐔にある魚々子をマイクロスコープで見て見ました。

き、綺麗だ…。
江戸時代にマイクロスコープなど無かっただろうによくここまで均等に隙間なく打てるものだと感心します。

きっと実際にやって見ないと魚々子打ちの本当の難しさは分からないのでしょうが、以前よりも魚々子に対する見方が変わり、刀装具を鑑賞する際の視点が1つ広がった気がします。
改めて辻本さん、素敵なお話をありがとうございました!


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それでは皆様良き御刀ライフを~!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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