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東京都支部刀鑑賞会(2024.4.20)

今日は東京都支部の刀鑑賞会へ。
テーマは「正宗十哲展出陳刀を中心として」で、先日の刀剣博物館で行われた「正宗十哲展」に並んだ刀5振をはじめ、相州伝の名品が並びました。

①鑑賞刀

■鑑賞刀
短刀
 銘 国光(新藤五)[重要刀剣]
短刀 銘 鎌倉住人行光 元亨二年三月
太刀 銘 長谷部国重[重要刀剣]
脇指 銘 長谷部国重 文和二二年八月日[特別重要刀剣]
脇指 銘 長谷部国重[重要刀剣]
短刀 銘 兼氏
 無銘 備前兼光[特別重要刀剣]
 無銘 備前長義[特別重要刀剣]
太刀 銘 則重[特別重要刀剣]
太刀 銘 筑州(以下切)(伝 左文字)[特別重要刀剣]
脇指 銘 安吉  刀 (金象嵌銘) 
貞宗 光遜(花押) 
短刀 銘 国広(堀川)(包丁正宗写し)
(引用元:「つるぎの屋@日本刀買取専門店 X」より)


個人的に気になったのは長銘行光の短刀です。
正宗のような長谷部のような刃が何重にも絡む様子は常に行光の作で言われる「大人しい」という表現は一切似つかず、変化の激しい躍動感ある作でした。解説では「京極正宗のような」と仰っていましたが、まさにその通りの作風で。
あの作を見ると何が行光なのか、が良く分からなくなってしまったというのが正直な感想で、やはり相州伝は難しさを感じます。
因みに京極正宗は以下です。

他にも希少な長谷部国重の在銘が3振り並んだり、なんと則重の在銘太刀まで並びました。
則重の互の目調の刃文は匂口が結構締まっている印象でそこまで深くなく、姿もそこまで反っていないのでぱっと見は新刀のような印象を受けたのですが、地景の入り方は相州上工のそれがびっしりと入っており、見事の一言でした。


②鑑定刀

鑑定刀の振り返りです。

1号刀:小太刀 古青江助次(重美)

重ねが厚く帽子もしっかりと残っており、反りはそこまで強くないものの、二筋樋が鎺の上で丸止めしている様子から大摺り上げではなく小太刀と判断。樋は後から入れた可能性もあるのでここだけで判断は出来ないのですが健全なので生ぶと考えました。
因みに焼き出し映りなどは見えず。
地沸がびっしりと付いており、見えづらいものの僅かに地鉄の奥に低めの映りが見える。
古備前のようにも思えたが、澄肌のような来肌のような芯鉄のようなものが随所に出ている。
二筋樋は南北朝あたりの刀で良く見る気がするので悩んだが、匂口が締まり気味な点から古青江と判断。
但し個銘までは分からないので古青江と入札。
古青江の助次が正解。個銘は当てれなかったものの情けで20点を頂けました。

画像出典:「つるぎの屋@日本刀買取専門店 X」より


2号刀:刀 備中国住次直 (重美)

大切先で南北朝の大摺上げものと判断。
帽子や匂口から青江っぽさを感じるものの乱れ映りのようなものが見える事から元重や兼光のような線も考える。
しかし確か中ほどの刃の少し上に段映りが見えたので、青江と判断。
但しこちらも個銘までは分からないので青江(南北朝)と入札。
正解は南北朝期の青江次直。
個銘は当てれなかったもののこちらも情けで20点を頂けました。

因みに金象嵌で「毛利元康所持 依此刀利埋忠磨上之 」とある刀で号は「朝霜」とのこと。1号と同じく重美指定品。

画像出典:「つるぎの屋@日本刀買取専門店 X」より



3号刀:脇指 肥前国住人忠吉作(初代)

もう全く分からない。時代からして良く分からない。
地鉄は特に鎺上から20㎝位の範囲は相州伝のような異種の鉄を混ぜたような杢目に板目の地景が入っている。
物打ちあたりには食い違い刃が見られる。
分からなさすぎて5回位見ていたような気がするが、一番悩まされたのは反りの強めな姿。一見古そうに見えるが脇差のサイズであり大摺り上げとして見るには姿おかしい。
そのような点から新刀と判断。
相州伝の得意な新刀で考えると南紀か堀川だが、堀川の地鉄ではないので南紀重国と入札して×。
正解は初代忠吉でした。
忠吉?!
いやはや頭の片隅にも出てきませんでした。
尚、南紀ならもう少し柾目がかかっても良いとの事。


4号刀:脇指 近江大掾藤原忠広 延宝二年八月吉日

ぱっと見で新刀の姿。帯状の匂口から肥前刀と見る。
帯状の匂口がよく見られるのは確か3代あたりだっただろうか。
これは分かりやすい!と思って用紙に書こうと思ったのですが…。

改めてよく見てみると地鉄が詰んでいる。しかし小糠肌というよりは別の詰み方をしているようにも見える。他に匂口の深い直刃は助広や真改がいるが、それにしては鋒が大きめで大阪っぽさが感じられない。
何より両者であれば匂口はもう少しグラデーションとなって「帯」とは分からないような溶け込み方をしている印象もある。
そんな折最近虎徹の直刃を見た際に同じく匂口は深いものの帯状になっているような物を見た記憶がある気がして、虎徹であれば大き目の切先にも納得がいく。
そんなところから肥前は罠と思い虎徹と入れて×。
肥前の二代忠広でした。尚、「延宝二年八月吉日」の年紀が入っている。
うーん、難しいです…。


5号刀:脇指 細川正義

匂口が深く、杢目がはっきりでて一見則重に見える。
しかし先反りが強く帽子が大きい姿は、古刀に見るには違和感がある。
昔このような姿を月山の脇差で見た事がある。
杢目を綾杉肌として見れば月山という事もあり得えそうにも思い月山と書こうか悩む。
しかし月山の刃は正直なにも覚えていない。
匂口に目を向けると小沸がとても深く付き見事な出来をしている。古刀のようにも見える。
すると新々刀の清麿あたりか。
しかし荒い沸がどこを探しても見つからない。
清麿ではなさそうである。
ここでもはや分からなくなったのだが、徳川の鎺が付いている。(←ダメな見方)
姿はわけワカメなわけであるが、地刃の出来はとても良い。
そうすると多種多様な極めのつく正宗あたりが妥当なのだろうか。
そう感じ正宗に入れて×。
正解は細川正義の相伝写しで「天保十二年辛丑八月日」の年紀が入っている。
細川正義というとよくハート形の刃文を思い浮かべるが、相伝はかなり上手く、摺り上げて古名刀に化けたものも多くから注意が必要と解説者の方は語っていた。
尚、今回は「大慶直胤」に入れれば充分とのこと。
杢目に見えたのはいわゆる「うずまき肌」との事でした。

因みに以下が以前霜剣堂さんにて見せて頂いたハート型の刃文が見える細川正義。


という事で結果は40点でした。
1号2号は情けが入っているので実際は20点位でしょうか。

今回はとても難しく頭が蒸発しかけたのですが、なんと天位の方は100点。
地位の方が複数人いらっしゃり80点だとか。
ちょっと皆さんどれだけ刀見えてるのですか!
恐ろしいのですが…!


③終わりに

今回は正宗十哲をテーマに鑑賞刀が並びましたが、出来以上に資料性としても貴重な物が多く眼福でした。
尚、今回正宗は借りれなくて申し訳ないとの事でした。
重要や特重の正宗は海外でも特に人気で既に沢山出てしまっているようで、もはや国内ではなかなか借りてこようにも物が無いとの事。
予想はしていましたが鑑賞会にも円安の波が届いているようです。
あと、今回の刀装具は縁頭がテーマだったのですが、興味の対象から外れていたので今回は殆ど見ておらず刀の鑑賞に専念していました。
その為刀装具の振り返りは出来ません。申し訳ありません。


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それでは皆様良き刀ライフを!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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