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親の愛がげんこつだった時代(静岡神奈川旅行log① 浜松編)

友人と二人で静岡・神奈川(+山梨)方面へ5泊6日のドライブ旅行に行ったので、内容を纏めておきますね…
浜松→熱海→江の島→鎌倉→横浜→横須賀→山梨の順。

今回は一日目、静岡の浜松で秋葉神社に行ったりさわやかでハンバーグを食べたり変わった温泉に浸かったり。


一日目(静岡県浜松市)

▼2月中旬、特に深い理由もなく横浜方面へ旅行に行った。強いていえば横須賀や鎌倉というまだ一度も行ったことのない有名どころをそろそろ訪れておきたいという思いがあったぐらいだろうか。刺激に飢えた日常を送っているとどうにも全く知らない土地に行きたくなるものである。

▼ちなみに今回は行き先のあたりはつけているが、ルートは当日までほぼ決まっていない全くの無軌道旅行。その日の気分次第では平気で旅程をカットできるフレキシブルさが魅力的だ。私は普段からこういう計画性のない旅行ばかりするので無計画旅行は悪くない、むしろこのラフさとデタラメさが好ましいとさえ思っているが、一方で最近こんな旅行しかできない自分に対し焦燥感を覚えるようになってきた。計画性を身につけなければという危機感を持てることは間違いなく成長だが、これまで純粋に楽しめたものが素直に楽しめなくなることは成長と呼んでいいものだろうか。


出発(大阪〜浜松)

▼大阪市内で今回旅路を共にする相棒である友人「ソノダ」の駆る車と合流して新名神高速に乗り、静岡県は浜松市を目指す。ソノダはドライブと地元浜松市をこよなく愛するユーモア溢れる豪快な男であり、自身がネット上で執筆している恋愛小説に最近出版社から書籍化の話が舞い込んでいる小説家の側面も併せ持つ繊細な男でもある。その強すぎる地元愛のあまり、遠州地方は愚か、静岡県全土はすべて浜松市の隷属地域だと思い込んでいる過激思想の持ち主で、最近はVtuberのしぐれういにハマっているらしい。今回は彼の運転する車に乗せてもらい、二人でドライブ旅をするという形になる。感謝。

▼人に運転させておいて言うことではないが、車というものは大変楽でいい。特に屋根とエアコンがあるというのがお気に入りポイントだ。普段愛用するバイクの人機一体感も堪らないのだが、やはり快適さに於いてはバイク側に勝ち目は今後も存在しないだろうな。そんな暖かい車内から寒空の中重装備で高速を駆け抜けるバイクツーリング集団を眺めていると思わずつい笑みが溢れてしまう。そんな底意地の悪い自分に対してもニヤけが収まらないのだが、自分もその苦行の辛さを知っているぞという共感からもこの感情が生まれているような気がしている。


刈谷ハイウェイオアシス

▼そうこうしていると知らない間に愛知県に突入していたらしい。私達は途中にあるサービスエリアで昼食を摂ることにした。偶然立ち寄ったこの刈谷ハイウェイオアシスは地上からでも高速道路からでも利用できる大きめな複合施設らしく、サービスエリアと聞いて私が勝手に想像していた倍の広さを誇っていた。多すぎるほどの飲食店のみならず入浴施設や公園、あと今回立ち寄りこそしなかったがデラックストイレというあまりにも豪華すぎて全国的に有名なトイレがあったらしい。そんなのどこにあったんだと思い後で調べると、ジョジョ第三部のDIO邸でテレンス・T・ダービーがジョジョ達に仕掛けた空間みたいなところだった。あそこか〜じゃあトイレの前何回か通ってたわ、知ってたら行ったのに惜しいことをした。

▼あとソノダが「ここにはえびせんべいの基地があるんやで!」と教えてくれたが、えびせんべいの里だった。えびせんべいの基地て。


▼昼食、どうせ愛知にいるんだし何か郷土料理を…と逡巡したが、結局何を思ったのか厚だし巻きたまごサンド(二個セット)というよくわからないものを購入してしまった。美味しそうだったんだもん…欲望には抗えない、遥か太古より人が絶えず進化を続けられた所以である。味は卵焼きが甘く仕上げられておりとても美味しかったのだが、風味がどうしても単調になりがちな上に思ったよりも量が多いので少食な私は最後の方ほぼ死にていだった。これ多分一人で食べる用じゃない、二個を二人で分けるやつだわ。心なしか体調も悪くなってきた気がする、気づくのが遅すぎたんだ…。おそらく一日の許容量以上の卵を胃に詰め込んでSAを出発する。


▼刈谷を出るとそこからはあっという間に浜松市に着いてしまった。高速道路を車で飛ばせばこんなに速いとは。以前大阪→浜松を125ccのバイクで下道のみで向かった時のしんどさに思いを馳せる。その時はたしか5,6時間ぐらいは掛かったんじゃないだろうか。人に運転させているというのも多分にあるだろうが、まさかここまで楽速とは想定以上である。

▼浜松市は全国第二位の面積を誇る遠州の政令指定都市である。田んぼや山、湖など自然豊かな景色からはのどかな雰囲気を覚えるが、人口では県庁所在地である筈の静岡市を優に超え、県庁所在地を除く都市では第五位の人口を有する大都市だ。ホンダやスズキ、ヤマハに代表される自動車・バイクのメッカであり、また楽器の街としても知られるなど、遠州の文化・産業の中心的位置にある。西に浜名湖を有し、こうした豊かな自然からもたらされる浜名湖うなぎは誰しも一度は名前を聞いたことがあるのではないだろうか。そしてそんな浜松は徳川家康や井伊直虎、国学者の賀茂真淵、ゆるキャン△の主人公の一人「各務原なでしこ」とばらえて豊かな愉快な仲間たちの出身地であり、今回の旅のパートナーであるソノダの出身地でもある。彼にとってこの旅行は偉大な地元への里帰りも兼ねている、一石二鳥のお得旅行である。


秋葉山本宮秋葉神社

▼平野は地元浜松に帰省すると必ず、彼が秋葉さまと呼ぶ神社へとお参りに向かうらしい。せっかくなので今回は私も連れて行ってもらった。

▼彼の言う秋葉さまこと正式名称「秋葉山本宮秋葉神社」は、赤石山脈の南端秋葉山の山頂に位置する神社で、全国800社以上存在する秋葉神社の総本山である。江戸時代に巻き起こったお参りブームでは伊勢神宮に並ぶほどの人気を博したらしい。主祭神はかつて「神産み」の際に母イザナミに火傷を負わせ死に至らしめたとして父イザナギに殺害されたことで有名な「火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)」であり、またその信仰には修験道のルーツも一部組んでいるとされることもあって、特に火防(=火災防止)のご利益が大変有名であるとされる。ちなみに東方Projectに縁のある神社でもある。

▼余談だが、ソノダは昔からこの火防で日本一有名な神社を個人的に信仰しているが、昨年には自身の吸った煙草の不始末で自室を半分焼き払うという奇しくも火に纏わる災いに見舞われている。よほど日頃の行いが悪いと見える。秋葉様で庇いたて出来ないならもう喫煙そのものを改める他ないだろう。


▼二人で上社に向かう。秋葉山の麓にはこれとは別に下社があるらしく、そこから標高差750m、2時間以上山道を登った先に秋葉神社上社が存在する。ありがたいことに上社まではほぼ上社にいくためだけに存在する車道が整備されており、上社境内には広大な駐車場も複数用意されている為、必ずしも歩きで登山する必要はない(が、下社→上社ルートはハイキングコースとして人気が高いので興味がある方は是非)。しかしその道は気持ち幅狭めかつカーブの連続と、若葉初心者ないしペーパードライバーの同志らには少し注意が必要と思われる(初心者は大変かもというレベルで、ほとんどの人は気をつけて進めばほぼ問題ないと思われる)。実際見通しはいいとは言えない、車に関してはほぼペーパードライバーである私には少々厳しそうな山道を地元民ソノダは法に触れない程度のスピードで駆け上がっていった。

▼上社前のバカでかい鳥居を潜り、多くはないが決して少なくもない数の階段を登ると、やがて上社社殿が見えてくる。写真を取り損ねたが途中には「西の閽の神門(にしのかどもりのしんもん)」という大層な名前の門や、小さな皿に願い事を記入しそれを谷底に設置してあるフープに投げて、見事皿がくぐったらその願い事がいい感じになる「天狗の皿投げ」なるアトラクション秋葉山に伝わる天狗伝承に基づいた由緒正しい願掛けがあったりした。以前どこかで書いたかもしれないが、私にとってこういうタイプの願掛けはミス=その夢は残念ながら叶いません、みたいに言われてる気がしていて、なんだかやるの気が引けるんだよね…


▼山頂にある上社社殿に到着。全身ゴールドに塗装された如何にもご利益のありそうな鳥居が、階段を踏破した或いは下社からの登山道を遂に終えた私達を迎える。ここまで長々と書いているが、駐車場からここまで5分ぐらいで、しかもいうほど苦労せずに着ける。

▼上社境内がある山頂からの眺望は東海一とさえ言われる絶景らしいのだが、私が過去数回訪れた際と同様に今回もその眺望を拝むことは叶わなかった。まあそのうち何回は夜に来ているので眺望も何もあったものではないが。次回来る機会があれば是非見てみたいものだ。こういう後悔も旅の醍醐味だと思う。

▼帰りの車内ではソノダお気に入りの頭文字Dで峠を攻める際に流れているBGMを流しながら法や安全マナーには抵触しないであろうギリギリの速さでうねる山道を下っていった。メーターこそ見えないが、曲だけで体感10〜20km/hほど速くなってスリルが増しているような気がするのはきっと彼の腕とBGMによる錯覚に違いない。


さわやかハンバーグ

▼静岡県の名物と言ったらやはりお茶と鰻、そしてさわやかのげんこつハンバーグだろう。ヘルエスタ王国静岡に馴染みのある皆様なら一度はその名を聞いたことがあるのではないだろうか。そうでなくとも最近ではメディアに露出する機会も増えたことで世間一般の知名度は格段に上がっており、まだ聞いたことのないという方の耳に入るのも最早時間の問題といえるだろう。正式名称は「炭焼きレストランさわやか」、赤みを残したハンバーグと静岡県内にのみ出店をしていることが大きな特徴である。新鮮な牛肉を炭火で炙ったレア状態のハンバーグが大変人気で、静岡県内にしかチェーンを出していないにもかかわらず、県内外に多数のファンを抱えており、人気すぎていつ行っても並んでいる。今回も平日の晩御飯にしては少し早い時間帯に行ったにも関わらず平気で一時間並ぶこととなった(これでもまだマシな方らしい)。


▼しかし並ぶだけあって名物メニュー「げんこつハンバーグ」の味は絶品。一応レアが苦手な人の為に焼き加減を事前に聞いてくれたりもする丁寧な仕様。ちなみに名前の由来は父の愛情としての「げんこつ」という今だったら命名した側にSNSから言葉のげんこつが飛んできそうなものだった。創業47年の歴史の深さを感じさせられる。最も意外なことに創業当初は喫茶店からスタートしたらしいが。

▼美味し〜〜〜〜〜〜〜ボリュームも申し分ないねえ〜〜〜〜並んだ甲斐があったというものだ。この文中では色々ごちゃごちゃと書いているが、食べている現場では大体これぐらいのテンションで生きている。これがリアルだ。

▼味もさることながら、接客もとても丁寧なのが私的にとても好ましく思っているポイントでもある(書いてて自分で何様のつもりだよとは思うが)。「げんこつハンバーグ」が届いた後、店員さんがハンバーグを目の前で一刀両断してくれるという固定イベントがあるのだが、その後も焼き加減について聞いてくれたり、切る前に「動画撮影などはされますか?」と断りを入れてくれたり、厨房で焼いているコックさんの手元を何気なく写真を取ろうとしたら一瞬撮影しやすいように手をとめて下さる(申し訳ない)など、類を見ないほどの気遣いに長けた接客だと思う。よほど社内教育が良いのだろう。毎回丁寧な接客をしていただき本当にありがとうございます。


湯風景しおり(温泉)

▼私は旅行をする際、ほぼ必ず温泉に行くようにしている。これは幼少期の私によく旅行先で各地の温泉に入らせてくれた両親の教育と「ゆるキャン△」という作品が私の旅行ルーツに大きな影響を及ぼしていることに起因するが、今となっては最早旅における醍醐味の一つとなっている。何より色々巡った後に入るご当地の温泉は格別だ。

▼今回訪れた「湯風景しおり」は800円というそれなりに一般的な値段でバラエティーに富んだ内風呂・露天風呂を楽しむことができるのが特徴だ。特に露天風呂が豪華かつ豊富だったのが個人的にも嬉しいところである。また飲食スペースや漫画コーナー、リクライニングチェア完備の空間などの出た後くつろぎスペースもしっかり充実しているという今まで来たところと比較しても総合的に見てかなり設備が整った印象を受ける。

▼露天風呂は特に種類が多く、日本庭園を模した立体的な構造になっていたので入浴と同時にアトラクションを巡っているような感覚に陥りとても楽しかった。東屋の下に檜風呂があったり、日本庭園の池みたいなところがまるごとミルキー風呂になっていたのおもしろかったな、石橋かかってたし。その中でも箱から首だけ出して、首より下だけミストサウナになっているという外装だけ見れば中世ヨーロッパの拷問器具のような箱蒸し風呂(個人サウナ)があり、それが特別印象的だった。これは初めて見たかもしれない。私は水風呂が苦手故に普段あまりサウナは入らないのだが、面白そうだったので体験してみた。サウナとしては比較的低温な部類で、首も出しているからか特に苦しまずに長時間楽しむことができる。ずっと入れてて気持ちいい、これ家にほしいなぁ。

▼ただこの箱サウナ、眼の前にテレビがあるわけでもないので入っている間特段やることがない。普通のサウナと違って追い詰められている感が少ないのでインターネット中毒傾向のある私のような現代人によってはより「暇」を感じてしまうかもしれない作りだった。私も暇だったので、入りながら世の中の納得できない事象や理不尽な人間性に纏わることを指摘する内容をしりとりにした「悪口・指摘しりとり」というこの世の終わりのようなゲームを一人脳内でやっていた。このゲームは基本的に言葉のナイフがどこに何本に飛んでいくかわからないゲームなので、私みたいに一人脳内でやるか、複数人なら人がいないところか聞こえないぐらいの声量でやるのがおすすめだ。私に友人の少ない由縁が垣間見れる瞬間である。



▼本日の宿泊先はソノダの実家にお世話になることとなった。事前にお願いさせて頂いていたとはいえ他人様の家にお邪魔する際には感謝と申し訳ない気持ちでいっぱいだ。なのでその気持ちを大阪限定の有名店ケーキに変換し、お土産として渡させて頂くことにした。味方を裏切り敵陣営に寝返った時と友人の家にお邪魔させていただく時は手土産が肝心である。こういう作法も子供の頃から親に教えてもらって本当によかったなと思う。それと同時に自分の知らない作法がこの世の中にまだ沢山存在するという事実に恐れおののいている。あっ、お布団まで敷いていただいてすみませんねぇ…


▼明日はいよいよ熱海と江ノ島近辺へ向かうぞという感じで一日目はここまでになります。
続きます。

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