【お題企画】はじめて買ったCD

noteの公式でこのお題企画のお知らせが流れてきたので、今まで書かなかったのだが、これを機にお題企画もやっていこうと思う。
今回は、はじめて買ったCD、ということで、結論から言うとTOKIOかB'zなのだが、ここで俺はタイトルを「私と宙船」とか「私とULTRA Pleasure&ULTRA Treasure」とかにするのがなぜかこっ恥ずかしいので、中学生が仕方なく課題で書いたみたいな題名にするという一番恥ずかしいやつにしてしまった。たぶんこれからもお題企画をやるときはこうなる。

俺はそもそも音楽というものを意識して聴く子供ではなかった。古くはウルトラマンや仮面ライダー、スーパー戦隊などのオープニングとエンディングや、ドラゴンボールや幽☆遊☆白書、るろうに剣心などのアニソンで気に入ったものを口ずさむ程度の子供だった。おそらく周囲に比べて、音楽というものにちゃんと興味を持つのが遅い子供だったと思う。
そんな俺の転機になったのが、小学校五年生のころの誕生日である。そのとき俺はなにを思ったか、イヤホンで音楽をきくのが最高にクールだという謎の憧れに取り憑かれた。俺は親に誕生日プレゼントとしてウォークマンをねだったのである。
最初に買ってもらったウォークマンは、今のような小さい本体にデータとしてたくさんの曲を入れられるようなものではなく、アンモナイトのような形状でパカッと開き、CDを一枚だけ直接入れるものだった。とにかくそれを買ってもらった。
が、これだけがあっても無用の長物である。俺は親にその旨を言って、当時ハマって毎週土曜に欠かさず観ていた『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』の主題歌であるTOKIOの『宙船』のシングルも買ってもらった。それが俺のはじめて買った(買ってもらった)CDである。同時に、それは当時俺が所有している唯一のCDであり、これしかウォークマンで聴けなかった。俺は最初、宙船だけを気違いのようにリピートしていたのだが、当然ゲシュタルト崩壊のようなことになってくる。

何の試験の時間なんだ、何を裁く秤なんだ、何を狙って付き合うんだ、何が船を動かすんだ………

………マジでこれ何の試験の時間なんだ? 何を裁くハクァリ(俺にはそう聴こえていた)なんだ? まだわからねえけど何を狙って付き合うんだ? マジ何が船を動かすんだ? ………一体なんなんだ? なんなんだ?
 
小学五年のガキにとって、作詞作曲中島みゆきというのは少々難解だった。音として認識して気に入っていたのだが、鬼リピートの末に歌詞を意識するようになり、脳髄がパンクしそうになった。

ここで俺はB面の曲に進む決意をしたわけである。次の曲は『do! do! do!』という曲だった。これはなかなかキャッチャーなメロディが耳に残り、俺はしばらく、ドゥー! ドゥー! ドゥー! と口ずさむだけのガキになった。この曲はXbox360のCMソングでもあり、俺はお年玉でXbox360とブルードラゴンを買った。

do! do! do!もゲシュタルト崩壊してきたころ、俺は次の曲に進んだ。このCDはよくよく考えると『宙船 do! do! do!』となっていた気がしたので、前に挙げた二つは両A面だったのかもしれない。となると、このCDの本当のB面は『リプライ』という曲である。この歌は最終的に一番長く聴いたかもしれない。シングルをアホみたいに聴きすぎると、B面のほうがいい曲に思えてくるものである。
このリプライという曲は特殊だった。ロック色の強い宙船と、キャッチャーなdo! do! do!、その後のリプライはバラードだった。ただバラードなだけではない。ボーカルが長瀬智也ではなく、山口メンバーなのだ。この山口メンバーの歌唱が切ないメロディと歌詞にとてもマッチ(ジャニーズの話でマッチなどと言うとややこしいが)しており、俺は山口メンバーのファンになった。俺はいまだに陰ながら山口メンバーを応援している。
定義を、はじめて買った(買ってもらった)CD、とした場合、以上のようにTOKIOの宙船となる。あのころの俺は宙船のシングルCDに入ってる三曲で半年ぐらい持ったのだから、すごいものである。たしかに今でも宙船ふくめて全部名曲だと思うが、ちょっとマジでアホの子だったんじゃないかと不安になる。

その後、俺はウォークマンに飽きてしまった。なぜだが宙船のCD以外を聴こうともせず、そのうち時代はiPodの時代になった。俺はiPodという舶来品にただならぬハイカラ感を感じ、ウォークマンのときのように憧れを禁じ得なくなっていた。小学六年の冬のことである。
俺はクリスマスプレゼントにiPodを頼んだ。iPodはかなり高価な品であり、誕生日に親に頼むのはキツイと思った。しかし同時に、あるいはクリスマスなら、とも思った。クリスマスプレゼントを持ってくるのはサンタクロースなので、親の財布事情などは却下の理由にならないのではないかと考えてのことだ。
クリスマスプレゼントの希望をきかれ、iPodと答え、iPodがどんなものか親に説明した。親は幾分いぶかしむような表情を浮かべたが、それはおそらく、高価な品をサンタクロースに頼み込まねばならぬ気苦労を憂慮してのことだろう。
俺の予想通り、クリスマスの日の枕元にはiPod nano(第三世代)が置かれていた。俺は狂喜乱舞し、天にも昇る気持ちだったのだが、ここで問題が発生した。
CDを入れる場所がねえ………、というかCDより本体が小せえ………。
この小さな板は、ほとんどお土産のラングドシャと同等の薄さである。俺は考え込んでしまった。
親父は昭和を濃縮還元した100%遺物ジュースのような男であり、携帯電話のメールもうてないので役に立たない。母ちゃんとてメールこそうてるが、役に立たない。弟はサンタクロースからもらったレゴで城みたいなのをアホみたいな顔で作ってる。俺は孤独に考えるしかなかった。しかし答えは出ない。8センチか? 8センチCDか? などと考えたが、無論ダメである。というか8センチCDなんて親のものしかない。そもそも最新のiPodが8センチCDのみの対応なんて頭おかしい攻め方をするはずがないのは、なんぼバカでもわかる。俺はゲームでもなんでも、説明書を読まない主義なのだが、これは読まざるを得なかった。読んでみた結果、よくわからなかった。俺はそれまで外で遊ぶか漫画、本などを読んでいるような田舎のアナログ少年だったので、さも当たり前のように使われている横文字ワードなどさえ理解し難かったのである。
そんな俺に、見かねた母ちゃんが助け舟を出す。従姉妹にきいてみたら?
俺の父方の従兄弟はかなり年上であり、既婚者で、その嫁というのがそっち方面にかなり明るかったのである。俺はすぐさま電話で従兄弟の嫁、すなわち従姉妹を隣町から呼び出した。
これはパソコンないと音楽入らないよ、と従姉妹は言った。その時期はちょうど、親が家族共用のノートパソコンを購入し、我が家にパソコンを迎えた時期だったので、胸をなでおろした。
俺は、従姉妹にiTunesというものを教わり、ダウンロードしてもらった。従姉妹は、CDとかあればこれで入れられるよ、と言った。俺は唯一の持ち弾であるTOKIOの宙船を従姉妹に手渡した。従姉妹はiTunesに宙船を取り込み、iPodに同期してくれた。
かくして俺はiPodでTOKIOの宙船、do! do! do!、リプライを聴くことができるようになった。

何の試験の時間なんだ、何を裁く秤なんだ、何を狙って付き合うんだ、何が船を動かすんだ
何の試験の時間なんだ、何を裁く秤なんだ、何を狙って付き合うんだ、何が船を動かすんだ

レコードも、カセットも、CDさえなんとなく仕組みがわかる気がする、でもなんでiPodは、どこから音が出てくるのだろう、どこに音が入ってるのだろう? だってラングドシャじゃんこれ、お土産でそこの観光地とかプリントされてたりするラングドシャじゃん薄さ、と不思議に思い、俺はしげしげとiPodを見つめながら宙船を聴いた。do! do! do!を聴いた。それから山口メンバーのリプライを聴いた。

その後、中学生になって色気づくまでの約半年間、俺はiPodで宙船と、do! do! do!と、山口メンバーのリプライを聴き続けた。



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