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【クリエイティブ生活】『日本霊異記』序文と最初の2話を読了

 小学館の『新編 日本古典文学全集』から、10巻目の『日本霊異記』を読みました。

 平安時代の初期に書かれた仏教説話集です。薬師寺の僧の景戒(きょうかい)が、自分の見聞きした日本の説話を編集したものです。

 仏教色の薄い伝説的な話もあり、また単なる教訓話てもなく、当時の庶民の苦しい生活ぶりなどが、今に至るまで伝わるほど明確に描かれているのが特徴だそうです。(訳者の中田祝夫氏による解説より)

 今回は、景戒自身による序文と、最初の2話、『雷を捕まえた話』と『狐を妻にして子を産ませた話』を読みました。

 景戒いわく、仏教説話と言えば中国のものだけをありがたがるのではなく、日本にもある話を集めなければならないと、いても立ってもいられない想いで編集したとあります。

 中国から様々な文化が伝わってきて、それを日本は受容してきたのですが、同時に「日本ならではのものを」そんな思いも強くあった。そんな当時の知識人の考えが強く伝わってきました。

 割とこの辺りの考え方は、日本人が諸外国から物を学ぶ際に、いつの時代も念頭に置いてきた意識なのだと思います。

 本題の説話ですが、まず『雷を捕まえた話』では、天皇に仕えた忠臣が、天皇の許に連れてくるために雷の神(鳴神なるかみ)を捕まえる話です。筋自体は単純なのですが、当時の世界観、人々が世の中や自然現象をどう見ていたかが伝わってきて面白かったです。同時に天皇の権威付けが当時いかになされていたかもよく分かりましたね。

 『狐を妻にして子を産ませた話』は、いわゆる異類婚の話で、婿探しをしていた美しい娘を嫁にしたら、実は狐であった、そんな物語です。その息子は、怪力と足の速さを受け継いで生まれてきたとあり、ある種の動物信仰の名残りなのかなと思いました。

 筋だけを書いてしまうと、本当に単純に思えるのですが、読んでいると当時の世相が見えてくるようで、不思議な物語でありながら非常に生々しさ、現実感がある。それに、がちがちの教条主義な物語ではない。とても面白く感じる。そこが時代を越えて残り続けた理由かなと思いました。

 ここまでお読みくださってありがとうございました。あなたのクリエイティブ生活のヒントになれば幸いです。

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