異世界転生テンプレは世界観を損なう(場合もある)
異世界転生なるファンタジーがある。ウェブ小説投稿サイトにおいて今でも人気で、それだけで一つのジャンルを形成していると言ってよいだろう。
だから、ファンタジーを書くなら異世界転生のテンプレを使うと、読まれやすいし書きやすいと言われる。
そこを基本的に否定するつもりはない。ただ、私の考えでは、異世界転生テンプレも万能ではない。長所と短所は背中合わせである事も多いのだ。
そう、長所と短所は背中合わせである事も多い。これを認められない人も多いようだが。
読者の多くと同じような現代日本人が異世界つまりファンタジーの世界に転生する物語は、そのファンタジー世界を、読者の多くと近い立場から語れるため、親近感が湧きやすく、取っつきやすさを感じさせる。
しかしそれは、読者を完全に異世界に入り込ませるのではなく、あくまでも現代日本人の視点や価値観などから語ることになる。
これが少々どころでなく、都合が悪い場合もあるのだ。
精密に構築されたファンタジー世界を小説に書く時、没入感や臨場感が大切になる。
そのファンタジー世界を、その世界の者(現地主人公、なる言い方を、ウェブ小説界隈では使う)の視点で語るのか、現代日本人の視点で語るのか、それは作品全体の雰囲気、世界観の表現に大きく影響してくる。
別に現代日本人の視点や価値観などから語るのが駄目というつもりはない。それが合わない作品もあるというだけである。
たとえばこのフリー写真のような光景が異世界にあったとしよう。
現代日本人の視点で語るなら「いつか写真で見たような、ヨーロッパ風の大きな立派な城があった。湖のそばに建っている」となる。
現地主人公なら、一例をあげればこうである。「湖のそばに、大きな美しい城があった。壮麗さと品格をそなえ、湖面にその姿を映し出していた」となる。
確かに親近感や取っ付きやすさは前者のほうが上だろう。そしてウェブ小説の読者は、世界観より取っつきやすさを優先する人が多いのは事実だろう。
しかし、ウェブ小説において読まれやすいかを別にすれば、作品としての良し悪しなら、必ずしも現地主人公視点が劣っているとは言えないのである。
あとは、異世界転生に限らず、いわゆるなろうテンプレを使うと、例外もあるだろうが基本的には読者は一人称小説を期待して読みに来る。
三人称小説なら、テンプレを使わないほうがいいのではないかとも思う。
まあ少なくとも、ウェブ小説でファンタジーを書くなら異世界転生にしろと押し付けるようなものではない。
ここまで読んでくださってありがとうございました。また次回の記事もよろしくお願いします。
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