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【クリエイティブ生活】リラダン作『至上の愛』を読了

 リラダンに関しては岩波文庫で短編を一つだけ読んだことがあります。死んだ妻を生き返らせようとする貴族の男の話でした。ジャンルとしては幻想文学に入れてよいと思うのですが、今回読んだ『至上の愛』には、魔術や怪奇的な要素はありません。

 リラダンは1800年代、19世紀頃のフランスの作家です。エドガー・アラン・ポーやナサニエル・ホーソーンとほぼ同年代です。ダンセイニはもっと時代が下って1900年代初期ごろ活躍した作家です。

 修道女になることを決めた清らかな美女への思慕がテーマです。単なる肉欲でも独占欲でもない、心からの敬意、言うなれば聖母マリアやその他の諸聖人に対するような崇敬を、その女性に抱いている、そんな男性のお話です。

 ダンテの『神曲』になぞらえて、美女はベアトリーチェに例えられます。私は『神曲』は未読なのですが、大体の筋は知っているので、これはリラダンのダンテ『神曲』へのオマージュなのだなとよく分かりました。

 簡素な英米系の短編文学と異なり、描写が丁寧に書き込まれ、話の筋運びもゆっくりです。とても美しい物語でした。精神的な美と物質的な美の双方がきちんと書かれていると思いました。

 天使のような美女の肉体的な美と、精神的な美の双方が自然に描かれている、そうした小説でもあるのです。

 中央公論社の『世界の文学 フランス名作集』より。昭和41年に出た本で、さすがに今は絶版です。検索すると中古市場には出ているようですね。

 ここまで読んでくださって、ありがとうございました。あなたのクリエイティブ生活のヒントになれば幸いです。

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片桐 秋
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