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【クリエイティブ生活】ダンセイニ作『二瓶の調味料』を読みました

 『二瓶の調味料』ロード・ダンセイニ作(ハヤカワ・ミステリ新書)より。今年で13年目のロングセラーですね。ダンセイニ自身は1952年にこの小説を書いたそうです。

 格調高い古典的なファンタジーで著名なロード・ダンセイニですが、この本には彼が書いた推理小説の短編が収められています。表題作『二瓶の調味料』は、中でも名作とされた一品のようです。

 ワトソン役の小男のセールスマンの語りによって物語は展開します。風光明媚な田舎で起こった殺人事件。ホームズ的探偵役のリンジーに頼まれ、現地におもむくシーンがありますが、「読者が関心のないであろうことは、たとえ田舎の良い景色のことでも、あえて語りませんよ」といった風な文があり、それはいわば基礎的な創作技法の一つだなと思いました。

 私自身、小説を書くのですが実に参考になりました。

 何が読者の関心のないであろうことかは、小説によって異なります。推理小説では、殺人事件に関することでなければ関心がないだろうから、田舎のきれいな風景などは、ほんの少しの描写で済ませますよ、とダンセイニ自身が語り掛けてくるかのようです。全く描写しないのも、あまり良くないのでしょうね。

 長めに書いた場合、全く書かなかった場合、で想像してみると、ダンセイニのやり方は正解だったと思います。

 多めに書くと展開が鈍くなり、田舎の風景が事件に関係があるのかと誤解させてしまうかも知れません。

 少な過ぎたり、全く書かなければ臨場感に欠け、ぞっとするような結末も、これほど際立ったエンドにはならなかった気がします。穏やかな田舎の風景とで、落差を感じさせるテクニックなのだと思いました。

 事件は見事に解決しますが、衝撃と共に後味の悪さを残してもいます。実に見事な1品でした!

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