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「ぜんぶ、すてれば」には、面白い生き方のヒントが詰まっている

本を読むことは、考え方や生き方をより良くするのに、それほどの即効性はありません。読んでみて、感動したり、わかったつもりになったりはするのですが・・・。

でも、残念に思う必要はありません。

今日は、そんなお話です。

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Appleの創業者である故スティーブ・ジョブズが、スタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチは、多くの人々の感動を集めました。2003年にすい臓がんの摘出手術を受けた後の2005年のことです。

養子だった彼は、大学に入学したものの、育ての親が授業料のために貯蓄をすべてつぎ込んでしまうことに心を痛め、そして中退します。

しかし、彼は大学を去らず、友達の部屋の床に寝泊まりさせてもらいつつ、カリグラフィ(文字を美しく見せるための技法)の授業を、こっそり受講したのです。

スティーブ・ジョブズのスピーチ

私は退学していて、通常の科目を受講する必要がなかったので、カリグラフィのクラスに出席して、このやり方を学ぼうと決めました。(中略)
それは美しく、歴史を有し、科学という意味ではとらえきれない芸術的繊細さをそなえていました。私は魅了されてしまいました。(中略)

10年後、私たちが最初のMacintoshコンピュータを設計していた時に、それがすべて蘇ってきたのです。(中略)Macは、美しい活字フォントを備えた最初のコンピュータとなったのです。(中略)

もし、私が中退していなかったら、カリグラフィのクラスに入ることはなかっただろうと思います。そして、パソコンが現在のような素晴らしい活字フォントを備えることもなかったかもしれません。

もちろん大学にいた時は、将来を見据えて、点と点(カリグラフィとMac)を結びつけることは不可能な話でした。(中略)あとで振り返ってみた時にしか、点と点を結びつけることはできないのです。(中略)

点と点がいずれ将来に結び付くと信ずることは、自分の心に従う自信をもたらします。たとえそれが、あなたを多くの人が通る道から外れる道に導くとしても、大きな違いを作り出すのです。

本を読むことも、スティーブ・ジョブズの言う「点」のようなものです。

あせらず、今を楽しみながら一歩ずつ進んでいけたら、いつかきっと点と点が結びつくはずです。

・・・

今回ご紹介する本は「ぜんぶ、すてれば」中野 善壽(著)

中野 善壽(なかの・よしひさ)
元寺田倉庫代表取締役社長兼CEO 1944年生まれ。
千葉商科大学卒業後、伊勢丹に入社。1973年、鈴屋に転職、海外事業にも深く携わる。1991年、退社後すぐに台湾に渡る。 台湾では、力覇集団百貨店部門代表、遠東集団董事長特別顧問及び 亜東百貨COOを歴任。 2010年、寺田倉庫に入社、2011年、代表取締役社長兼CEOとなり、2013年から寺田倉庫が拠点とする天王洲アイルエリアをアートの力で独特の雰囲気、文化を感じる街に変身させた。2018年、日本の法人格としては初となるモンブラン国際文化賞の受賞を果たす。2019年6月寺田倉庫退社、2019年8月、地域や国境を越えた信頼感の醸成をはかり、東方文化を極めたいという飛躍したビジョンを持つ東方文化支援財団を設立し、代表理事に。現在に至る。


文章から垣間見える「点と点のつながり」

著者の中野さんは、個人的にも若い芸術家を支援しています。それも、すごい金額のようです。

なぜ、そのようなステキな行動ができるのか知りたいと思ったのですが、本の中にヒントが隠されていました。

インタビュアーの「何を捨てて、何を残すのか。その選択のセンスはどうやって磨くんですか?」という質問に、中野さんはこう答えています。

「ぜんぶ、すてれば」P43
僕の経験を遡ると、その原点は幼い頃に祖母から手ほどきを受けた「生け花」の稽古だったように思います。(中略)
無限のパターンから、どう生けるかを決めるレッスンは、大人になってからの"直観を信じる決断力"の基礎になったかもしれない。

さらには、こんなこともあったそうです。

「ぜんぶ、すてれば」P20
当時、僕は質素な学生寮に住んでいました。
決してきれいとは言えない殺風景な日常に、せめて彩りをと、花屋の閉店間際に一輪だけ買いに行っていたのです。(中略)

その日も世間話のついでに、おばさんが聞いてきたのです。
「ところで、中野くん、就職はどうするの」
「いや、まだ決まってないんです」(中略)
「それだったら、うちの従兄弟が勤めている会社があるから、聞いてみてあげる」

そうやって紹介されたのが、新宿にある百貨店、伊勢丹。僕の就職は、花一輪の導きで、急展開となったわけです。

「生け花」の稽古が、就職に結びつきアーティストの支援につながっていったのかなと思いました。

スティーブ・ジョブズの言葉を思い出してください。

「点と点がいずれ将来に結び付くと信ずることは、自分の心に従う自信をもたらします。たとえそれが、あなたを多くの人が通る道から外れる道に導くとしても、大きな違いを作り出すのです。」

私は、すでに還暦を過ぎましたが、今までに実現できたのは、ほんのわずかしかありません。でも、「点と点がいずれ将来に結び付く」ことは信じたい。

そのほうが、きっと幸せだと思います。


参考にしたい!身軽な生き方

中野さんは、寺田倉庫時代に受けたインタビューで「僕は両親がいなくて、育ててくれた祖父母も小学生の時に亡くなりました」とおっしゃっています。

大変な幼少期だったことが想像されますが、そんなことを一切感じさせない気持ちの強さに驚かされます。

また、徹底したミニマリストぶりにもビックリ。

「ぜんぶ、すてれば」P44
捨てる以前に、持たなくていい。
家もクルマも、時計さえも。


僕は捨てる以前に、モノをできるだけ「持たない」ライフスタイルを選んできました。家は台湾に一応ありますが、賃貸暮らし。家具もごく限られた最小限のものだけで、(中略)
服は通りすがりのアジア各地でパパッと、いつでも捨てられるくらいの気軽なものを。(中略)

何より身軽な生き方が好きなのです。

片付けトントンは、ゴミ屋敷や汚部屋の片付けの仕事をしていますが、作業完了後のお客さまのお言葉が、「身軽な生き方」の大切さを証明してくれているような気がします。

お客の声

「とても多いゴミの量でしたが、きれいに片づけて頂きありがとうございました。部屋の中がこんなに広いなんて、声が響くなんて、床に座れるなんて・・・幸せです。頑張って生きて行けます。」

今は部屋に入れた喜びに浸りたいと思います。本当に勇気を出して電話してよかったです。」

「いろいろと自分なりには事情があり、この様なことになってしまいましたが・・・今回、お世話になり、気持ちも吹っ切れ、心機一転頑張っていこうと思いました。

中野さんは、本も読み終わったら処分(古本屋に売る)するし、服も2年持っていれば長い方だとおっしゃっています。

「ぜんぶ、すてれば」P80
僕が学生時代、粗末な学生寮で生活しながら、毎日毎日、花一輪を生けていたという話を前にしましたね。
あの頃の僕にとって、一輪の花は心を豊かにするもの。贅沢であり、究極の自己満足。そして、文化そのものでした。

同じように、若い人でも好きな絵を一枚、部屋に飾れる"自己満足の生活文化"がつくれたらいい。
(中略)
一枚の絵を飾るためには、絵を邪魔しない空間をつくらないといけません。壁際に置いているモノを片付け、余計なモノを捨てる。結果的に、持ち物の数は減るでしょう。

でも、そのほうがずっと贅沢なのです。

根本にあるのは、こういった考え方だと思います。


まとめ

「ぜんぶ、すてれば」には、面白い生き方のヒントが詰まっていて、とうてい感想のすべてを書ききれるものではありません。

ちょっとだけ、見出し部分をご紹介します。

周りになんて、合わせなくていい。
自分の中のレジスタンスを
守り抜く。


目標はいらない。
がんばり過ぎたら、やめていい


迷いなく、やると決める。
ただし、朝礼朝改。

なんだか読んでみたくなるでしょう?

この部分は、次のリンクをクリックすると読むことができます。

この本も・・・

ひょっとしたら、あなたの人生の「点」になってくれる一冊かもしれません。



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