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佐賀県武雄市立図書館 見学記

今さらですが、武雄市立図書館に行きました。私は無知のため、武雄市立図書館の問題は「Tカードによる個人情報の問題」しかしりませんでした。改めて、感じたことをまとめ書きします。

【新婚旅行での九州訪問と武雄市立図書館の印象】

新婚旅行で九州を訪れた際、私と夫は図書館界隈で話題の武雄市立図書館へ行くことにしました。この図書館は、TSUTAYAが運営し、図書館、書店、スターバックスカフェが一体化した施設として注目されています。図書館への深い興味と、かつての図書館勤務経験を持つ私にとって、この訪問は特別な意味を持ちました。この文章では、武雄市立図書館の訪問体験と、図書館の役割、価値、公共性、営利性に関する私の考察を述べます。

【武雄市立図書館の魅力】
武雄市立図書館は年中無休で、朝9時から夜21時まで開館しています。利用者は本やDVD、CDを借りたり購入したりすることができ、スターバックスで飲み物を楽しみながら読書をすることも可能です。全国どこからでも本を借りることができ、返却はコンビニで行えます。Tカードを持っていれば、登録なしで利用できる手軽さも魅力の一つです。これらのサービスは、図書館の利便性と快適性を向上させ、図書館に興味がない人でも気軽に訪れることを促しています。私自身も、図書館の枠を超えた快適な空間として、非常に居心地の良さを感じました。

【夫の視点から見た図書館】
私の図書館への関心とは異なり、一般利用者である夫も図書館の利用について独自の見解を持っています。彼は「購入していない本をカフェで読むことには抵抗があるが、図書館の本であれば気兼ねなくカフェで読めるため、快適だ」と感じています。また、自習室で飲み物を持ち込めることについても、「気軽に飲み物を持ち込めるのは学習環境として大変快適」と述べており、この点が彼にとって大きな利点であることがわかります。社会人としての仕事の傍らで実務的な資格の勉強を続ける彼は、図書館で関連する実務書を借りて学習に役立てており、図書館のヘビーユーザーです。特に、武雄市立図書館の広い自習室と、飲み物を飲むことができる環境には、彼は感動していました。

私たちが住む三重県津市では、平成の大合併により町が拡大しました。しかし、住まいの近隣の図書館は夫が求める「学習席が多い滞在型図書館」ではなく、「読書と資料保存を主目的とした図書館」です。
津市に隣接する松阪市立図書館(松阪館、嬉野の方ではない)には広い自習室があり、三重県立図書館も自習室が広いと感じます。しかし、県立図書館の資料を利用する際には使い勝手に課題があると感じています。これは個人的な感想です。図書館利用者へのニーズに応えるためには、学習席の充実や利用のしやすさが重要であると考えます。

【武雄市立図書館の課題】
しかし、武雄市立図書館には改善すべき点も存在します。図書館の公共性と民間企業の営利性の間には、矛盾や葛藤が生じています。図書館は平等な利用を保証するために無料または低額でサービスを提供すべきですが、そのためには公的資金が必要です。一方で、民間企業は利用者からの収入によってサービスの維持や向上を図ります。このバランスを取ることは難しい課題です。武雄市立図書館では、図書館の予算は市とCCCの共同出資で成り立っており、書店やカフェの収入は両者に分配されていますが、分配率や管理方法に透明性が欠けるとの指摘もあります。この問題を解決するためには、契約内容や監査結果を公開することが求められます。

もう一つの課題は、図書館で働く人々の専門性の確保です。図書館職員は専門的な知識や技術を持つ必要がありますが、知識の更新に必要な研修費用は多くの場合、自己負担となっています。にもかかわらず、高度な知的サービスが要求されています。非正規雇用が多い現状では、職員自身の生活を支えることも困難です。武雄市立図書館では、職員は市の職員ではなくCCCの社員であり、図書館の専門性や品質を保証するためには、CCCの教育や評価が重要です。しかし、その内容や基準は公開されておらず、情報の不透明性が図書館の信頼性に影響を与える可能性があります。

【結論と期待】
武雄市立図書館は、図書館の新たな可能性を示す一例として、多くの注目を集めています。しかし、革新的なサービスを提供する一方で、図書館の根本的な使命と公共性を維持することが不可欠です。私たちは、図書館が提供する知識や情報、文化の価値を理解し、それらがどのように社会に貢献しているかを常に考察し、評価する必要があります。新婚旅行での訪問は、図書館に対する新しい視点を提供しました。

図書館は、時代の流れと共に進化し、社会の多様なニーズに応えるべき施設です。この進化の過程で、図書館が持つ本質的な価値や公共性を見失ってはなりません。図書館は、誰もが自由にアクセスできる知識と情報の宝庫であり、そのアクセス権を保護するためには、運営の透明性を確保し、専門性を維持し、利用者の声を反映させることが求められます。武雄市立図書館の取り組みには評価を与えつつ、さらなる発展に期待を寄せます。

また、飲み物を自由に飲める環境や広い自習室を備えた滞在型図書館は、利用者層の拡大に寄与します。新しい図書館では、こうした新サービスの導入が可能ですが、既存の図書館においては、長年にわたる利用者の慣習や期待に応えつつ、時代に合わせた変革を実現することが挑戦となります。図書館が単なる本の貸出や読書の場に留まらず、学習やコミュニティの中心として機能するためには、地域社会への広報をしつつ、その埋もれたニーズ汲み取ることが必要です。

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