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【詩】アヴェ・マリア

君の歌声は澄んでいる
透きとおり、震えている
悲しみを、響かせる
祈りを、捧げている
はるかな地平の、むこうに
青くひろがる、果てのない空
黄色くかがやく、小麦の畑
君は胸に手をあてて
豊かな大地に、想いをはせる
 
カッチーニのアヴェ・マリアは
哀しみの鎮魂歌
故郷を悼む、静かなまなざし
救いを求める、問いかけだ
 
実りは、蹂躙された
何もかも、灰色に埋もれて
もろともに、潰されてしまった
赤く降り注ぐ、雨のしずくが
剥き出しの髑髏に、滴りつづける
 
鼓膜を突き刺す、悲しみの叫び
とめどなく、波をたてる
目蓋にあふれる、熱いなぐさめ
こらえきれず、崩れてしまう
繰り返す、呼吸の足音
深い憂いに、心を揺する
旋律のもだえを、みつめている
 
紅い花のくちびるは
静かに、祈りを放ちつづける
涙に濡れた、声を限りに
変わらない愛を、うたっている
あまねく、罪を赦したまえ
君は、指先を震わせて
忌むべき、憎しみを遠ざける



©2022 Hiroshi Kasumi

お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。