見出し画像

【詩】高千穂通り

宮崎駅前、高千穂通り
強い息づかいで、クルマが行き交う
クスノキの並木の歩道は
風の抜ける、自由の通り路だ
青々と茂る梢の下に
置かれたベンチに
人は、思い思いに腰掛けて
朝のひとときを、みつめている
ペタリと開けた広い道幅のむこうに
雲ひとつない空を見あげて

浴びせかける夏の太陽
露わなひなたに、乱反射する
浜の風と山の風が交錯する
ここは、海辺と山辺の接触点だ
寄せて返す、波打ち際で
歩みゆるやかに、足をすすめて
急ぐことなく、風にまかせる

時は、起伏なく静かに過ぎてゆく
足を急ぐクルマさえ
なぜだろう、おだやかだ
タイヤのリズムを急かしはしない
時間を、追いかけることもなく
時間に、追われることもなく
あるがまま、流れてゆく

立ち並ぶ、クスノキの幹
苔むす枝の袂に、たよりなく
デンドロビュームの柔らかいツルが
絡みついて、微かな呼吸に揺れている
花の季節には、色とりどりに咲くという
樹と花の、やさしい共生に
まなざしを、奪われて

おだやかに、通り抜けてゆく
南九州の、暑い日差しのほとりで
心を寄せ合う、日向の道すじ


2022 Hiroshi Kasumi

お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。