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【詩】デシジョン

世の中、変わった
君にまかせると決めた日から

早くて確かで間違いがない
そう、信じていたから
なにもかも、君にゆだねている
困り事は、君に聞けば
君の言う通りに、うまくいく
君のすすめに、逆らわず
言われるがまま、暮らしている

君が良しとするものを、良しとして
君が美しいとすれば、美しいと感じている
君がよろこびとするものを、よろこんで
君が好ましいとすれば、好ましく思う

おすすめの料理を食べて
よく効くという薬をのむ
型にはめられた運動をして
言いつけられた時間に寝る

向いているとされた仕事をして
相応しいとされる報酬で満足する
流行りのゲームで頭を鍛え
選び抜かれたニュースで気を晴らす

提案どおりの買い物で
計画どおりに支出する

迷うことは、時間の無駄だ
思い煩うのは、体に悪い
考えるのは、諦めた
任せてしまえば、安心だ

早くて、確かで、間違いがない

でも時に、迷ってしまう
本当の美しさって、なんだろう?
正しいって、どういうことなのだろう?
なぜ、生きているのだろう?
真実は、どこにあるのだろう?
考えるだけ、無駄なのに

もしも、君が間違っても
君は、受け入れられるだろう
人は間違えるもの、だから
たぶん、君は間違いない
たとえそれが、嘘だとしても
嘘が、真実なのだろう

正しさも、美しさも
もう、きれいに忘れてしまった
思考も、思想も、理想も、理念も
惜しげもなく、捨ててしまった

それでも、知っているはずだ
君が「考える葦」になることはない
それだけは、間違いない
君が自我に目覚めても

©2023  Hiroshi Kasumi


お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。