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【詩】春、遠望

川面が、なびいている
むこう岸の逆さ絵は、薄くぼやけて
空の青さを見上げている

山をくだり、海をめざして
平地を分かつ風道は
いちめん、苔色に染まって
菜花の茂みの鮮やかさも
桜並木の華やかさも
塗りつぶされ、埋もれて

燕が飛ぶ、鶯が啼く
真昼は、押し黙ったまま消えてゆく
かなたの山が、もやに白んで
輪郭だけ、浮かべている

待ち侘びた、あふれる日差し
川床は、おだやかに満たされて
駆けてくる、颯のにおいに
もう、夏の声が聞こえてくる

©2023  Hiroshi Kasumi

お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。