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【詩】ペルージャにて

麓のターミナルでバスを降りて
石の城塞をつらぬく
エスカレーターで丘をのぼる
古史を偲ぶ暗がりのむこう
ウンブリアの陽光があふれ出る
 
イタリア、アペニンの山懐
ペルージャのいただきの
小さなふたつの広場をつなぐ
五百メートル足らずの目抜き通り
コルソ・ヴァヌッチは
老若男女、あふれる人が
行ったり来たりをくり返す
 
丘の斜面に張りついた
この町に住む人々も
通りすぎる旅人たちも
夜となく昼となく
飽くことなく、そぞろ歩く
 
古びた街なみに刻み込まれた
車道もなく歩道もない
昔ながらの石畳に
のぼりつめ、散っていく
ペルージャのすべての水は
この場所からほとばしる
出会いも、別れも
約束も、すれ違いも
この道すじに集い合う
 
わたしは、部屋の窓から
とめどなく行き交う
騒めきの有り様を眺めていた
賑わいに紛れこもうとする
己の生き様を追いかけて


©2022  Hiroshi Kasumi

お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。