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散文詩

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2018年11月の記事一覧

ゼリー色。

夏休みの昼、なぜか君と二人で歩いていた。
空には大きな雲が浮かび、蝉の声が僕らを覆っていた。
無口な君と、学校の帰り寄り道して、ジュースを買って、
それなのに僕だけがどぎまぎしていた。

「ゼリー色」
「えっ」

水たまりに青空が写っていた。

「水だけど、水じゃないから、ゼリー色」

また君は歩き出した。

「明日はアイス買おうよ」

都合よく蝉が鳴く。
映り込む空はゼリー色。

全き死よ

死よ
全き死よ

万雷の喝采が
私を迎える

道端の日常より
唐突な裂け目が見開く

死よ
全き死よ

無味無臭の和音が
嗚咽を呼ぶ

膝をつく間も無く
あらゆる感覚は焦点を失う

死よ
いざ万来する







失ったものよ

失ったものよ

待ってくれ

行かないでくれ

気づけない私が悪いのか

それとも

過ぎ去ったものの美しさが

私の心を動かすのか

夏の夜の涼しさ

夏の夜の涼しさは四季を通じ参照されるのであって
寝床で感じられる手持ち無沙汰の代名詞である
いまは窓を開けようものなら凍えてしまうので
あの夜が羨ましい

日中に募る焦慮はついに爆発し
度を越した虚しさが仰向けの胸から溢れ出す
黒く重たいものが床に伝うと
同じく窓から入り込んだ冷気と触れる
すると両者は反応を起こし煙となって浮かんでゆき
窓を抜け星空へと帰ってゆく

あくる日

あくる日僕は灰になって
昨日来た方角に飛んでゆく
知る人は雨の薫りに僕を思い出し
暗雲の向こうに目をやるだろう

あくる日僕は風となって
万来の光線を全身に浴びる
無限に近い光は時の彼岸に僕を追いやり
一切の差異が消滅するだろう

あくる日僕はバッファーになって
世界の理を補佐する
裂け目に流れては縫い合わせ
人の世につかの間の安寧を与えるだろう

あくる日僕は断続になって
繰り返し痙攣する君の頬

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