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軽井沢香澄
2018年10月29日 23:13
私は妄想した。上野の国立西洋美術館の入り口に、法悦した修道女の大理石像がある。濁った空は彫刻をまろやかな風合いにする。そのヴェールに手を添え、ぬるくなった頬に口づけをする。私はいま東京にいない。いたとしても、上野で待っているのは黒光りするロダンの彫刻だけである。これは純然たる私の妄想である。何かが私に空想を抱かせる。現実よりも甘美な、絶対的な充足を約束してくれる一連の刺激を思わせ
2018年10月16日 21:06
風よ止め風よ吹くな昨日の晩の彼のように私は落ちたくはないのだ松よ、信頼できる友よ私が生まれたとき、君ならばきっと大丈夫だと言ったなともに雪降る野山を見ようと約束してくれたなしかしどうしてだ春の嵐を前に、君はただじっと地を見つめるばかりだ松よ君は、私の枝とともに揺れてくれさえしないのか柳よ、情緒のある友よ君はどうして私に同情するのかまるで私だけ何も知らないようではないか
2018年10月12日 22:29
柔らかい日差しぬるい風砂利の音洗濯物の影が揺らめく鳥はいつもこんなに心地よい風を浴びているのだろうか陽に洗われているからあんなに綺麗な羽をしているのだろうかさんがつ坂道に風の形が浮かぶ午前両の手を思い切り広げる
2018年10月7日 23:14
陽と影と人の間よ陽射しの下では 涼風を求め彷徨い木陰に入りては 人目を憚るどこか居心地がよく、落ち着ける場所はないものか川を眺めては 眩しさに目がくらみ喧騒より隠れ 物陰を見つける雑踏は遠く聞こえ、座り込む地べたは心地よい見上げては遠く、空の間に雲が征く我がうちによぎる寂しさを感じる前を見ては壁あり、横を見ても壁あり我がうちに積る焦りを感じる不安より声を上げようとし、思
2018年10月5日 22:10
夏の終わりに吹く風は遥かに航空機をのせ雲を北へ運ぶ揺れる提灯は月を演じうかれて忙しなく揺れるのんびりとした雲が一つ老婆の顔をして南海を睨む灰を落としもう一服寂壮を空に返す