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雨の日の小説

本屋に行き「好きなだけ居て、買っていいよ」と言われ立ち歩いたり窓際に腰かけてさわりを読んだりして半日を過ごし、次来たときの楽しみにと厳選した5冊だけを買って帰り机に並べて眺めて1日置く。

翌日窓の外を見て「今日は雨かぁ」と雨の日に合う1冊を選びお気に入りの椅子でクッションを抱き大事にプロローグに入り込む。
第1章に入りかけたところで「飲みもの」と呟きしおりはどこに置いたっけなとあたりを見回す。「雨の日は温かいカフェオレに限るよな」なんて知った風な口を聞き、カップを温めるのもそこそこに急いで注いで戻り腰を下ろす。

一呼吸、軽く現実を振り払ってふたたび新しい文字を追う。止まる必要はないけれど、本を抱えたまま息を整えるように外を見やり雨が上がったことに気づく。本に落ちる影をあしらうように手首を少し傾ける。

第3章の扉に手をかけてやめ、机に置いたままの下巻に目をやり、楽しみはゆるく長く染み入るように味わおうとほくそ笑む。雨もひとりも本となら。

読んでいただけただけで万々歳です。