第26首 月を待つ心

※このノートでは、秋の和歌をご紹介します。各和歌のイメージを記した【イメージ】のあとに、【ちょこっと古語解説】というパートを設け、和歌中の古語を簡単に説明しています。和歌によっては、【ちょこっと背景解説】というパートがあるものもあり、そこでは、鑑賞する際に知っておくと、より深く和歌を味わうことができる知識をお知らせしています。

風の音も なぐさめがたき 山の端に 月待ちいづる 更科の里
《かぜのねも なぐさめがたき やまのはに つきまちいづる さらしなのさと》
(新後撰和歌集/土御門院小宰相《つちみかどのいんのこさいしょう》)

【イメージ】
 ここ更科で、秋風の音を聞くにつけても心慰められることはない。
 それなのに、どうしてだろう。
 あの山の向こうから、月が出ることを待ってしまうのは。
 月を見ても、気持ちが落ち着くわけでもないだろうに。

【ちょこっと古語解説】
○がたき……元の形は「かたし」で、「難しい」という意味を添える。
○山の端《は》……山の、空に接する部分。山の稜線。
○更科《さらしな》の里……今の長野県の更級郡上山田《かみやまだ》町から更埴《こうしょく》市付近。月の名所として歌に詠まれる。

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