第1首 秋の始まり

※このノートでは、秋の和歌をご紹介します。各和歌のイメージを記した【イメージ】のあとに、【ちょこっと古語解説】というパートを設け、和歌中の古語を簡単に説明しています。和歌によっては、【ちょこっと背景解説】というパートがあるものもあり、そこでは、鑑賞する際に知っておくと、より深く和歌を味わうことができる知識をお知らせしています。

秋きぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる
《あききぬと めにはさやかに みえねども かぜのおとにぞ おどろかれぬる》(古今和歌集/藤原敏行《ふじわらのとしゆき》)

【イメージ】
 秋が来たと、この目にはっきりと見えたわけではない。
 まだ夏の風情が漂っている。
 しかし、この風の音。
 寂しげなその音に、秋の訪れを感じずにはいられない。

【ちょこっと古語解説】
○ぬ……完了を表す助動詞。「~た」ほどの訳。
○さやかに……元の形(=辞書で引く時の形)は、「さやかなり」で、「はっきりしている」意。
○ね……元の形は「ず」で、打消を表す助動詞。「~ない」ほどの訳。
○ぞ……強調を表す語。訳には表れない。
○おどろか……元の形は「おどろく」で、「はっと気がつく」意。
○れ……元の形は「る」で、自発を表す助動詞。「自然と~される」ほどの訳。
○ぬる……元の形は「ぬ」で、完了を表す助動詞。「~た」ほどの訳。

→第2首へ

読んでくださってありがとう。もしもこの記事に何かしら感じることがあったら、それをご自分でさらに突きつめてみてください。きっと新しい世界が開けるはずです。いただいたサポートはありがたく頂戴します。