君のクイズ

やってくれたなぁという一言が出た。 


 こんにちは渇晴です。
 以前から気になっていた小川哲さんの『君のクイズ』を読了したのでつたないながら感想を書いていきたいと思います。ネタバレも含んで書いていくので気を付けてください。

 テレビのクイズ大会の決勝で主人公三島玲央の対戦相手である本庄絆がゼロ文字押しをして優勝を決めるシーンから物語は始まった。番組からのヤラセではないかと疑った主人公はなぜ本庄が問題文を聞かずに正解することができたかの謎を追っていく。
 ミステリーは昔好きだったので何冊かは読んでいたけど早押しクイズが題材になっているものは初めて読んだ。

 小川哲さんの文章は初めて読んだのだけれどとても分かりやすくサクサクと読み進めることができた。また、読んでみて驚いたのは競技クイズに対する描写がとても詳しいことだった。あとがきを読んでわかったのがこの本を書くのに際して伊沢さんの本やQuizKnockの動画などを参考にしていたらしい。まだクイズを始めたばかりだけれども、プレイヤーたちの答えを導くまでの思考回路はとても正確に描かれているなと思った。

 今回印象に残ったワードとして「クイズに正解することがそのまま自分を肯定することにつながる」というものがある。この言葉は主人公が本庄絆のゼロ文字押しの謎を探るために決勝の映像を見返している際に、自分の正解した問題が過去のつらい経験に由来していたことに気づいたときに出たものだ。確かに自分も短いクイズ歴であるがそのような感覚に陥ったことがある。自らの人生に関わってきたものを答えてそれが正解になる。その時に鳴る正解音が自分の人生を丸ごと肯定してくれる、そんな気がする。けれどこれはクイズをしている人目線からの感想なのでそうではない人がどのように思うかも気になるけれど自分の周りの非クイズプレイヤーでこれを読んでる人がいないので聞けなくて残念。


 ここまで割と肯定的な感想を書いてきたけれど、最初の文を読んでもらったらわかるように読了した後の感想はやってくれたなぁだった。あらゆる可能性を考慮してついに真相にたどり着いた主人公が本庄絆と対面して告げられた真実はこれまで積み上げてきた感動の種を潰してしまうような物だったと思う。真相に至るまでの経緯は納得がいく物だったけれど、そこから導き出された真実をあの方向へ持って行ってしまうのかと思ってしまった。面白い本だと期待値が上げられてしまっていたが故にあの終わり方は残念に思う。とはいえそれ以外にどんな終わりがよかったのかと言われればそれは難しいし、ぱっと思いつくことは出来ない。小川哲さんの“クイズ”はそういう物だったのだろうという感想。

否定的なことも言ってしまったけど全体を通してみるとクイズ描写も素晴らしく文章も読みやすいとても面白い本なので、僕の感想をここまで読んでまだ読んでいない人たちは是非読んでみてください。そして感想を語り合いましょう。

それではさようなら。


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