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「礼儀作法を科学する」マナー講師が派遣社員になったらどうなるか②

「礼儀作法を科学する」礼儀作法・マナー講師の葛西美雪です。

前回の続きです。

礼儀作法とマナー講師として長年活動する中で
「ビジネスマナーが本当に役に立つのか検証したい。」と6年間大手企業の派遣社員を渡り歩きました。

こちらはその1つ目の会社のお話となります。


1, 派遣先選定

その頃、大学に所属し論文製作中だったこともあり
頭を使う業務ではなく、手足を使う作業系で何かないかと探していた私。

よくネット広告で出るのが、シール張り。
座ってできるだろうし、シールを張るだけであれば頭では論文のことが考えられる、
こんな塩梅で仕事先を考えておりました。

そこで出てきたのが、
「作業着・長靴の準備と、長靴を洗う仕事:時給_1550円」でした。

これなら作業系であり、長靴を黙々と洗っていられる、
頭の中は自由にできる!そう思ったのです。

2, 派遣元との面談・その日に派遣就労決定

マナー講師として活動し、15年目の頃の話です。
私のいつも働くスタイルである、上質なスーツ・髪は夜会巻きに仕上げ、
派遣元である新宿まで出かけました。

身嗜みは完璧です。

派遣元のお二方と面談した際、お二人は私を見て
「貴方がするような仕事ではないです。きっと不満に思われると思う」
とおっしゃいました。

結局は外側のみの判断です。
私のしっかりした格好、入室時の丁寧な挨拶、はっきりとした自己紹介、
この短時間のコミュニケーションのなかで、
このようなジャッジをされるのです。

つまり、第一印象は本当に大切なんだと実感しました。
私の内側ではなく、包んでいる物を見て人物を判断されたのです。

3, 派遣先の面接時に相手を緊張させる

就労前の派遣先に面談のお話です。
長靴を大量に洗う業務と聞いたので、どこかの工事現場かと思いきや
都心のお洒落なオフィスビル。

会社はお国と連携して、道路建設を行う企業でした。
求められている業務は、議員や官僚の方々が建設現場見学をする際の
ヘルメット・作業着・長靴の用意と、返却時のメンテナンスという訳です。

業務内容を伺うほど、今の私にジャストな仕事である、
とワクワクしました。

ところで、道路会社の方々は全くの理系男子。
繰り返しますが、パワーのあるファッションをしている私を目の前に
やっぱり外側しか見ずに、
「こんな方に長靴を洗ってもらうなんて」と言います。

ではどんな人であれば、長靴を洗ってもらっても差し支えない
と思うのでしょうか?
言葉の裏側にハラスメント的意識があることすら気付けない方々でした。

4, 配属3日後:座席後ろに役員が立つようになる

配属され、簡単な軽作業を喜んでする私。
汚れた長靴や作業着を綺麗にして管理するだけ。

その他、諸々業務はありますが、特に難しい仕事はなく
電話対応等、簡単な作業を機嫌よくこなしておりました。

すると、配属してわずか数日で、
役員の方が座席後ろに無言で立つようになります。
ある時、電話対応が終わると話しかけられました。
「何かしてたの?」「どんな業種にいたの?」と。

機嫌よく、積極的に仕事をしている、
そして正しい言葉遣いができる、
ということは相当なスキルであると感じました。

実は、出来ない人が多いのです。
この会社の方々は不機嫌そうに、だるそうに、
イヤイヤな態度で仕事にあたる方が多かったのです。
どうしてそうなってしまったのでしょうか?

5, 配属1週間後:代表電話を取る部署に異動させられる

役員の方に話しかけられた後に、どうやら直属の上司が呼び出され
何やら話をしているようでした。

その後、派遣元の担当者から電話があり
「派遣先で、葛西さんの配属を変更したいと申し出があった。
対応可能ですか?」と。

具体的な業務内容を聞けば、総務課での代表電話の受電とのこと。
一人でもくもく長靴洗いの業務から、離れてしまうことになりますが
求められていることには応じたいとも思う性格なので、
引き受けることにしました。

代表電話受電は、ひっきりなしに電話があり
主に工事現場に対するクレーム・要望で、怒鳴られることも多々あります。
実は、この電話が怖くて社員の方は出られないという内情があったのです。

ビジネスマナー、特にクレーム対応を活かせるときが来ました。
既にこの道路建設会社に対しては、
印象の悪い会社であると感じていた私ですので、

電話対応では、お客様の気持に寄り添いまくって、情報を細かに聞き出し、
いただいたご意見を私が代弁してやろうという気持ちで、
一つ一つ丁寧に対応しました。

社員と云えば、この対応が出来ず、
「面倒くさい相手からかかってきたぞ」と、
話しをお伺いする心すら持っていなかったのです。
電話を切った後、悪態を述べる始末。

このような姿勢が電話の向こうにも伝わっている、
こんな基本的な事さえ分かっていない方々ばかりだったのです。

6, 配属2か月後:ビジネスマナー(主に電話対応)研修を開催

上記のような、やる気のない社員を誰が教育するのか
「上司が指導すればいいじゃないか」と思うのですが、
昨今では難しい状況のよう。

社員の「できない」に対し、パーソナリティーを傷つけないように
意見するのは大変難しいコミュニケーションです。
パワハラ・セクハラに繋がりかねません。

ということで、白羽の矢が私に当たりました。
「葛西さんからビジネスマナー研修を受けたい」というご要望です。

全くできていない社員に対して、派遣社員が研修をする。
やりづらい状況ではありましたが、何とか必要なことを伝えました。

改善したと思われますか?
残念ですが、「派遣社員の話を聞くなんて」な態度のまま
全く改善とは至りませんでした。

その後も、役員の方から「みんなに何か教えてやってほしい」と
フンワリした要望を言われ
「ふふふ」と交わしながら、1年半程でその会社からは卒業いたしました。

7, 検証結果:ビジネスマナーは大いに役に立つ(一社目での気づき)

さて、ビジネスマナーは役に立つか、の問いに関して
一社目の検証は以下の通りです。

①身嗜みを完璧にするだけで、相手は勝手に私のステイタスを上級ランクに設定する。
②正しい話し方・電話対応をするだけで、絶大な信頼感を得られる。
③いつも機嫌よく仕事をしているというのは、実は大きなスキル。
④ビジネスマナーが出来ていない方は、中年の方こそ多い。
⑤マナーや心遣いは運動神経と一緒。意識していないと途端に鈍感になる。
⑥自信のないことを克服しないままでいると、「やらない人」から「できない人」と認定されてしまう。
【重要】ビジネスマナーさえできない人は、プライベートでも心遣いができない人と結論付けれらる。

魅力ある愉しい生き方をしたいのであれば、
他者とのコミュニケーションは欠かせません。

同性異性問わず、
自分の目標とする人や、素敵な方と一緒に居いたいのであれば
マナーは最大の手段・武器となり得るのです。

しかしながら、他者への思いやりすら持てない人が多くいるのだ。
一社目の派遣先で以上のことを実感いたしました。

続きます。

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