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お伊勢参りってやつ

土日に伊勢の地を初めて初めて訪れた。日本人の「心のふるさと」こと伊勢神宮だが、ならば僕はこの歳にしてようやく心の帰郷を済ませた心の郷里砂掛男だった。飾る錦も特に無く恥ずかしながら初めて帰って参りましたという気分になる。
そもそもの話、伊勢志摩とかいう地域は東海道や伊勢湾岸道からも思いっきり外れているから、例えば大阪に行くついでに寄り道しましょうみたいなやつができず、最初から目的を当地そのものに定める必要がある。学生の頃は伊勢なんて旅行の目的地とするにはあまりに渋過ぎるし、今は今で他に行きたいところも色々とあるし、行くタイミングなんて本当に一生無いものだと思っていたが、たまたま機会があったからこれ幸いと便乗した。

伊勢は遠い。新幹線で名古屋まで行って、そこから更に近鉄で二時間かけて向かう。近鉄には何種類かの特急があって、うち最も観光客向けに特化した「しまかぜ」に乗った。

観光特急しまかぜ。大昔にJRの北の方で走っていたアルファコンチネンタルみたいな巨大前面窓。

今では珍しいカフェ車両がある。昔風に言うと食堂車。即ち寝台車に並ぶ、鉄道旅愛好家にとっては永遠の憧れであり浪漫。

二階建て車両の二階カフェスペース。丸椅子がレトロフューチャーチックで洒落ている。

適当に写真を撮ったら自席に戻ろうと思っていたが、いざカフェスペースを目の前にして、何も飲まず食わずで引き返せるほど意志が強い人間でもない。いつの間にか「しまかぜ10thアニバーサリーソーダ」と、ついでにペールエールが手元にある。

10周年記念のクリームソーダ。変なかき混ぜ方をしたせいで大分濁ってしまった。

カフェ車両ではしまかぜのグッズも売られている。例えば10周年記念、座席に使われている本革とまったく同じ素材で作られたパスケース。
本革故の3500円。僕と彼女の分で7000円。それにしても我ながら周年とか限定とかいう言葉に弱過ぎる。まさか俺、電車の中で諭吉が丸々失くなるとは思わなかったよ。

空になった財布はともかく伊勢市に着く。僕は無知が過ぎてまったく知らなかったのだが、伊勢神宮は内宮と外宮に分かれていて、距離も結構離れている。内宮には天照大御神が祀られていて、あの有名な鳥居もナントカ横丁も全部そっち。
外宮は豊受大御神という食と産業の守護神が祀られている。僕のような日本神話に対してまったく見識が無いパッパラパー不敬罪人間にとっては「誰だよお前」に尽きるのだが、それが原因で一生飯抜きとか生涯食当たり人生とかになっても困るから、しっかり手を合わせておく。今日までうまい飯を食わせてくれて有り難うございます、せめてもう少し腹を壊す頻度を減らしてくれると嬉しいんだけど……。

あの鳥居。よく宣伝で見るのは、丁度真ん中に朝日が昇っている画。

外宮からバスで10分かかるかくらいで内宮に着く。よくメディアで目にする鳥居は入り口に構えられている。意外とそこまで大きくはないのだ。平安神宮や出雲大社の方が見た目の巨大さやインパクトはあったが、まあ何でもデカけりゃいいものでなし。
鳥居からやはり10分ばかり歩いて、正宮で手を合わせる。正宮で個人的な願い事を託してはいけない。世界平和とか、祖国の発展とか、その手のスケールが大きく漠然とした願い事を天照大御神にぶつけることになっている。

「なんかこう、色々うまいこと行きますように……」

馬鹿丸出しだが切なる願いである。願ったからには多分、これで万事うまく行くだろう。皆も期待しておいてもらいたい。

人波でごった返すおはらい町。ズームレンズで撮ったが大して望遠もせずにこの密集加減。

おはらい町は賑わっていた。古風な街並みを若者受けしそうなスイーツショップが埋める。川越で犬山で倉敷で何度も見た光景だが、結果この通り商売繁盛となると、それも参道系観光地の宿命なのかもしれない。
数十分も歩いているともういいやという気分になり、誰かに言われるがまま赤福を食べ、そのうち時間が来たからホテルへ向かった。赤福はそのブランドを知らない人間にとってはただのメチャクチャ甘いあんころ餅である。

伊勢神宮からもう少し奥へ行った鳥羽の街のホテルに泊まり、翌日に東京へ帰った。鳥羽の駅前は内宮の賑わいとは違ってあまりにもうら寂しい港町だったが、それに関しては次回に書くことにする。

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