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続カメラの系譜

J5を手放してからしばらくして中型免許を取り、バイクに乗り出した。
恐る恐る乗っていたのが一月も経てば大分慣れてきて、近場ではあるが海にしろ山にしろ、景色がいい場所へ出向くようになる。行けば写真を撮りたくなる。ぼくのかっこいいばいくは綺麗な景色をバックに燦然と輝いて然るべきだろう。
夏の盛り、バイクを東京湾フェリーに乗せて浜金谷へ行った。内房の海は信じられなくらいに青くさんざめいており、青空とバイクの濃紺のタンクも相俟って「これは映える」とスマホのシャッターを切ったが、いまいちのっぺりとして、奥行きが無い。勝手に修正がかかっているから青味だけやたら鮮やかで悪目立ちしており、そこで初めて「ん?」となった。
味付けが濃過ぎる。「お前なんてどうせこうしときゃ喜ぶんだろ」と言われているようでどことなく癪にも障る。ここでJ5を手元に残さなかったことを僅かに後悔した。
かと言ってJ5を取り戻すわけにもいかないし、社会人にもなって少しばかり金にも余裕ができたからもう少しいいミラーレスでも買おうかしらんなどとほざいていたが、そうした中でたまたまZ fcの予約が始まったとの広告をどこかで見て、じゃあ、これだろうと瞬時に思った。あの時ばかりは何故か躊躇いも無く思ってしまっていた。

Z fcの何がその気にさせたかって、結局あのレトロなフォルムに尽きるのだと思う。
僕は昔からクラシックなものやレトロなものに弱い、自転車ならクロモリのホリゾンタル、バイクならSR400、車ならローバーミニ……みたいな本当に分かりやすく弱い人間だから、Z fcの「ザ・君らが思うカメラでござい」なルックスに打たれないわけがなかった。
それでいて中身はZ 50とそうそう変わらないモダンなスペックであるところもいい。レトロ好きを標榜するならちゃんとあの頃のフィルムカメラを買って四苦八苦するのが筋なのだろうが、僕はそこまで根性も覚悟も無いから、そりゃ中身は新しいに越したことはない。この世で最も蔑まれるべき「ガワだけレトロ大好き人間」とは僕のことである。
最初は28mmの単焦点レンズキットが欲しがったが人気故発売が延期され、待つのもなあと思って16-50mmのズームレンズキットを買ったが、僕みたいな初心者にとってはベターな選択だったと思う。レンズに癖が無いし、ある程度広角も撮れるし、APS-Cだから50mmまでズームするとそこそこの圧縮効果を得られる。
おおよそ1型からAPS-Cになったことで撮れる画に劇的な変化があったかと言えば別にそんなことはないのだが、確かに僕が素人感覚で思っていた「ちゃんとしたカメラで撮れるちゃんとした写真」に限りなく近付いたものを撮ることができるようになった印象はある。
ちゃんと奥行きが付くし、いやらしい自動加工も無いし、何より写真は楽しいものだと素で思える機会が増えた。ミラーレスとしては廉価で、ターゲットも僕のような層に絞ったエントリー機だとは思うが、今のところはこれで十分だと思っている。

熱海の海岸と戯れる子供。本来の海の色って大体こんなもんだよなと思う。
汎用ズームレンズでもこれだけボケれば十分な気はする。
マジックアワーの海芝浦駅。若干トーンジャンプ。フルサイズだともうちょい自然になる?

十分だと思っていた。が、手に入れてしばらくしてしまえば次なる欲望に苛まれてしまうのが人の性ということで、ロクに撮影技術も向上していないくせに色々なことを考えている。
さっきも書いた通りZ fcはAPS-Cで、フルセンサーではない。僕は馬鹿だから、まずセンサーがどうのっては買ってから知った。画角とボケやすさ、光の取り込み量、階調……色々と違ってくると。こんな重要なスペックを買ってから知るのだから恐れ入る。
夜景なんて、いつだってノイズを出さずに撮りたいだろう。階調も滑らかな方がいいに決まってる。じゃあ、フルサイズモデルが欲しいねということになりますね。欲しいですねフルサイズ。お金無いけど。
更に、DX(NikonのAPS-Cフォーマット)とFX(フルサイズフォーマット)ではあてがうレンズも違う。厳密に言うとFX用のレンズをDXのボディに装着することはできるが、その逆はできない。だから将来フルサイズのボディを買った時の為にも、レンズもFX用のものを積極的に揃えておく必要がある。
今のところズームレンズ以外はお遊びと言うか、飛び道具的な安いレンズを二本持っているだけだから、これは中々優先度が高い課題である。それ以外にも色々と欲しいものはあるけれど、際限が無さそうだし真面目に書いていてもつまらないだけだからこの辺で抑えておく。

喋り過ぎました。
もうカメラに対して言いたいことは何一つありません。

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