雷雨とお菓子作り

3月13日の土曜。
目が覚めると、微かに雨の音が聞こえていた。そういえば今日は大雨の予報だったなと思い出す。6畳の部屋は沈んだグレーに染まり、朝なのか夕方なのかわからないように見えた。
動くのことが億劫でしばらく携帯をいじる。段々鼻が詰まってきて、花粉薬を飲まなきゃとしぶしぶ布団から出る。13時を過ぎていた。

夜は友人宅でジンギスカンをすることになっていたので、昼食は簡単でヘルシーなものを作ることにした。暗いキッチンに電気をつける。
買い溜めしていた糖質ゼロ麺を取り出し、水でよく洗う。こうするとこんにゃく臭さが少し和らいで食べやすくなるのだ。
次に麺を乾煎りして、水っぽさがなくなったら一旦取り出す。
同じフライパンで今度はソース作り。
オリーブオイルを垂らし、薄くスライスしたニンニクを香りが立つまで炒める。そこにツナ缶を投入。ケチャップと醤油も加え煮詰める。カロリーは高くなるけど小麦のパスタよりはましか、ということでチェダーチーズを一枚投入。
すぐにチーズがとろりと溶けて、ソースに粘度が出てくる。ここにこんにゃく麺を絡めれば、ツナとチーズのパスタっぽいものが完成!
上機嫌でマグカップにミルクを注ぎ、いざ食卓へ。
こんにゃく麺はつるりと喉越しが良く一瞬で食べ切ってしまった...
ダイエットを意識しているものの、やっぱり食べることが1日の中で何よりも好きだなと思う。

食べ終わるとなんとなく手持ち無沙汰になり、お菓子を作り始めようと思い立つ。あらあらダイエットへの意識が低すぎませんか。こんにゃく麺のくだりはなんだったのか。
そんな思考をねじ伏せ、やりたいことをやるだけモードになっていた私は、小麦粉とベーキングパウダーを使い切らねばならないことを思い出した。レシピを探し、レモン風味のパウンドケーキを作ることにした。

今回はバターの代わりにオリーブオイル、お砂糖の代わりに蜂蜜と糖質カットのパルスイートを代用。一応脂質と糖質を気にしている。
材料を準備し終えたとき、急に赤い閃光が走った。数秒後、轟音で僅かに地面が揺れた。
お菓子を作っているのが悪いことのような気がして、一旦手を止める。結構近いところで落ちたなあ。

毎年春が近づいてくると雷雨に見舞われている気がする。芽吹いた草花が濡れて青々とした香りを放ち、早咲きの桜は強い雨風で早々に散ってしまう。
そういう日は決まって、きのこ帝国の「春と修羅」という曲が聴きたくなってくる。
あいつをどうやって殺してやろうか
2009年春、どしゃぶりの夜に、そんなことばかり考えてた
もうそんなことばかり考える季節だ、去年の今頃は何していたっけと考えながら、止めていた手を動かし始めた。

お菓子は決まった配合で淡々と作業すれば出来上がるから好きだ。作業の先にある甘やかな香りと味を想像すると、何時だろうとお菓子を作りたくなってしまう。
生地に艶が出て良い感じだなとノリノリになっていたとき、また雷雨が落ちる。こんなときにオーブンを使っても良いのだろうか。ブレーカーが落ちたりしないだろうか。と心配になりながらも余熱を開始する。

2時間後、激しかった雨は止み、パウンドケーキは焼けていた。水分を含んだ生地はずっしりと重く、下の方が硬くなり失敗作になってしまった。
春の落雷に平気なふりをしていたけれど、ちょっと動揺していたのかもしれないな。

オチのない休日。
もち

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