くーちゃん

昨日、実家で飼っていたネコが亡くなった。
13年生きた。名前はくー。
骨壷に名前を書くとき、最後なのに母は「くー」か「くぅ」で迷っていた。

くーちゃんは農家で生まれ、ももという兄妹ネコと一緒にもらってきた子だった。
中学一年生のとき、部活が終わって体操服のまま家に帰ると、まっしろいふわふわが私を見上げていた。片手に乗るくらいの小さな体で、一生懸命ミーミー鳴いていた。
母は「1匹残すのはかわいそうだから、2匹もらってきちゃった」と肩をすくめた。
突然一家にやってきた小さな天使だった。

くーという正式な名前をつけるまで、しばらく時間がかかった。
真珠のような薄いブルーの瞳、乳白色でやわらかい毛並み、長いしっぽが素敵で、どことなく洋風な雰囲気(雑種)から、お洒落な名前にしようと始めは片仮名の名前を付けていた。
それなのに家族全員その名前を覚えていられず、結局私が「くーちゃんって感じ」と決め、それが定着した。

くーちゃんはくーちゃんっぽい性格だった。
誰かを呼ぶときや何かを訴えているときは、高くてか細い声で鳴いた。あまり声が通らないので、私たちに聞こえるよう、毎回一生懸命鳴いているのが伝わってきた。

かわいい声の割に身体は大きくて、彫刻のような綺麗な骨格をしていた。ご飯をよく食べる健康体で、ネコらしからぬ足音を立てて階段を降りていた。そのためかかなり存在感があった。
ひとり家で留守番をしているときに、トン トン トン…と誰かが歩み寄る音が聞こえてビクッと振り返ると、決まってそこにはくーちゃんがいた。

人見知りをあまりしないタイプで、来客が来ても姿を見せてくれた。特に家族全員集まると、必ず輪の真ん中にいて持ち前の存在感を発揮していた。
私や弟が上京して中々帰れなくても、帰省した日の夜は、必ず私のベッドまで来てゴロゴロ喉を鳴らして甘えてくれた。

家の中で飼っていたけれど、ストレスが溜まらないようにと一日一回、庭かベランダに出していた。そういえば、ベランダに出したら屋根の上から降りられなくなったことがあった。なんとか戻って来てくれたときには、肉球に汗をかいていた。
外に出ると、必ず体をゴロンと横たえ目を細めて、風や草の匂いを嗅いでいた。気持ち良さそうで、私も嬉しかった。
そのあとは決まって庭をぐるっとパトロールして、気が済んだら一生懸命鳴いて私や母を呼んだ。
家に入れる前にお尻を軽く叩いてやると、ゴロゴロ喉を鳴らして喜んだ。お尻を叩かれるのが本当に好きで、お尻を突き出して叩かれるのを待っているくーちゃんは、完全に野生を忘れていた。


くーちゃんは本当にかわいい子だった。
いつも誰もがくーちゃんに癒されていた。
もうあのやわらかい毛並みを撫でられないことが信じられない。足音を聞けないことが信じられない。部屋に入れてと一生懸命鳴く声に応えられないことが信じられない。
日記にするとくーちゃんの存在を過去にしてしまうようで、まだ苦しい。
でも、くーちゃんが最後まで頑張ってくれたことをちゃんと覚えていたい。
どうか天国が今日のような晴れた空でありますように。そして気持ち良い風や草の匂いを感じられて、穏やかに幸せに暮らせますように。

くーちゃんがくれたたくさんの愛情をお守りに、私も大事な人たちを助けられるように頑張るね。

もち

※日記の更新かなり遅くなりました。柏ごめんね。

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