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エッセイ:「正常な嫉妬」
今日、僕は珍しく明らかな嫉妬をした。
嫉妬とか物欲があまりないと思っていたんだが、我ながら珍しい。
歳をとるに連れて、周囲の人間もライフステージを上げることに力を入れ始めてきた。
ブランド物の服とかバッグとか、車とか腕時計とか。
そういった話を聞くと「いいねー」という感想は当然抱く。
ただ妬ましいというのとは違う存在。
貰えるなら貰うが、自分から手を伸ばすことはない程度。
それらへの嫉妬かすらもわからない感情は随分と遠くに在る。
最早他人事の感覚に近い。
僕の欲しい物はだいたい機材に向いている。
「あのギターが欲しい」、「あのアンプが欲しい」、
「このプラグイン欲しい」、「このペダル欲しい」。
(楽器に関しては結構物欲あるな……。)
僕が嫉妬する物はだいたい音楽や創作関係に向いている。
嫉妬の場合は小説や漫画のような物語系が多い。
秀逸な展開やばっちり予想を裏切られた時に「うわ、やられた」となる。
その時出てくる感情は不思議と「悔しい」。
おかしいよね、小説を書いてるわけでも漫画を描いてるわけでもないのに。
同様に音楽に関しても嫉妬が湧くことがある。
音楽の方がより苛烈だ。
心を動かされる作品に出会った場合、「クッッッソっっっっ!!!」と心の底から悔しくなる。
有名なアーティストの新譜が良かった場合「先を越された!」となる。
(いやできないんだけどね)
妬ましくなり、自分にはできない無力を痛感する。
嫉妬の中でもマシなのは"ルーツのわかるモノ"。
「なるほど、これにインスパイア受けたのね」と、脳内で設計図を書ける。
これは再現性がある。
その次が"思いつけもしないし、再現できないモノ"。
明らかな実力差を叩きつけられる。
悔しいけどこれは納得してしまう場合がほとんど。
「諦めがつく」という表現が近い。
最も最悪なのが"理解はできるのに思いつけないモノ"。
後から紐解けば何をどうしているかはわかる。
頭や知識では追いつける。
ただ「どうやってこれを思いついたのか」が微塵もわからない。
この時はもう絶望。
絶望からちょっと嫉妬。
でも結局絶望で終わる。
理解ができたところで思考や感受性、吸収してきたセンスの差をまじまじと見せつけられる苦痛。
ここで指すセンスとは安直な才能ってことじゃない。
これまで何を「いいモノ」として食べてきて、「自分ならどうするか」と研究してきた成果のこと。
長年取り込んできたモノの結果なのだから、付け焼き刃で適う訳がない。
こういうモノには、嫉妬しながら尊敬する。
ただしこうした嫉妬は自身の成長を促すモノだと学んだので、積極的に妬むようにしている。
「嫉妬しない」というのは一見美徳のようで聴こえがはいいが、その実「興味を持てない他人事」でもある。
自分の大切なモノに近いのなら、嫉妬が無いということこそおかしな話だ。
じゃあ今日は「何に嫉妬したのか?」
いや、あの、これめちゃめちゃシンプルな話しなんだけど、実は「これから始めようとしていた活動名がつい最近、知名度のある人のサブ活動として使われ始めた」ってだけなんだよね……。
恥ずかしすぎて飲み会のグチみたいになってしまった……。
ここまで随分と仰々しく語っておきながら、本題は風が吹いたら飛ぶほど小さい話なので笑われてしまう……!!!
笑ってくれ!!!むしろ笑え!!!!!
この記事自体が、なぜあまり嫉妬しない自分が珍しく頭を抱えてしまったのか。
その原因を書き出してメタ認知するためのもの、という側面もあるのでご容赦願いたい…………。
まず嫉妬の原因。
これは上にも書いた通り、僕は「自分により近いテリトリー」に関してのみ強い感情を抱く傾向にある。
この場合、音楽に関係していることが当てはまる。
次に「苦手なことが出来たタイミングだった」というのもある。
苦手なことというのはネーミングセンス。
僕はほんと、マジで、どうしようもなく、ネーミングセンスが、無い。
ネーミングに悩んだらまず神話や古事記を引くような現役厨二病患者にとって、一般ウケする名前というのはハチャメチャに難易度の高い行為なのだ。
共感性や客観性の能力はある程度自負しているが、"言葉"にイメージを与え、キャラクターを変え、アレンジする能力には乏しい。
今の時代、0から1にするのは限りなく難しい。
しかし1を10にするくらいは後天的なスキルで誰でもできる。
ただ1を"壱"、"位置"、"ichi'なんて読むセンスは僕の頭には無い。
あとは10を"自由"と読むとかね。
あ、"G.U."ってそういう意味なのかな。
「一歩目という意味から取って"初"で"イチ"と読みます」みたいなこと言われたら僕が持っていないセンス過ぎてヒザから崩れ落ちてしまうだろう。
(持ってない能力の説明をしているので例文にすら実力不足があるのは見逃してほしい…)
そんな僕が珍しくまともな名前を作れた。
YouTubeで調べてみると、残念ながら最近活動を始めたバンドを見つけた。
MVにも力を入れているバンドで、「あーもう作られちゃってたかー」という気持ちになった。
ここに嫉妬は特に無かった。
仕方がないので少しもじってアレンジをした。
アレンジをした方でググってみた。
残念なことにこっちも被ってしまった。
そう、問題はこっちだ。
複数人で活動しているクリエイターグループだが、一人は知っている人だった。
しかも全員がメインは別界隈で活動している人で、各自のジャンルでそこそこ名前も知られているようだった。
それぞれが何かしらのクリエイターであることから、「アーティスト集団だーすごいなー」と思い曲を再生してみた。
驚いてしまった。
これは、かなり、ヤバい(悪い意味で)。
曲の形は成しているが、(嫌な言い方になってしまうが)、とても聴けたものではなかった。
正直に言うと歌詞の恥ずかしさと、曲が無理すぎて軽微な頭痛を起こした。
しかし不思議なことに、少ないながらも一定数のファンが居ることに驚いた。
まともに音楽を聴いている人ならば、”インディーズ”と言うのも忍びないこのグループを好んで聴くことは難しいだろう。
単純にヘタとかそういう次元の話ではないの。
聴いているのって特に音楽好きでもない元々のフォロワーな気がしている。
(名前は出せないんだ!伝わってくれこのもどかしさ!)
些か頭を抱えてしまったが、リンク先のTwitterを覗いてみた。
プロフィールや並んでいるツイート、本人達の肩書きは、オシャレなミュージシャンのソレであった。
「おお、まじか……」となった。
いや、いいんだよ?ブランディングって大事だし?
むしろしっかりしてると思うよ???
確かにこのグループ、「音楽以外」は流石本業というだけあると思う。
ただ「音楽だけ」が完全に黒歴史になっている。
そのオシャレセンスがありながら、なぜ気づけない。
どうやらサブスクにも公開しているようだった。
すごいな、これで本格的に活動するつもりなのか……。
なんて、そろそろ「オマエは何様だ???」という声が聴こえてきそうだけど、いやほんとその通りです!
だからせめて次の言葉は、一人の音楽好きとして吐きたい。
最近シティポップとか流行ってるじゃん?
シティポップって結構「エモい作り方」みたいのとかあるじゃん?
だからちゃんと作ればけっこう形になるじゃん?
今の子って音楽を始める時ギターじゃなくてDTMからってのも多いらしいね。
時代を感じるね。
「高校生が作曲してみた」とかそんな動画もYoutubeにゴロゴロ転がってるじゃん。
DTMの使い方も至る所に動画が上がってるよ。
しかも宅録でもかなりのクオリティを築ける時代になったよ。
レトロブーム来てるよね。
「ちょっと懐かしい感じ」が”エモい”ってやつなんでしょ。
いやわかるよ。思い出って脚色されるし。
満たされちゃったこの時代の生きにくさをから、ちょっと足りなかった時代に逃げ出したい気持ちを持っちゃうのは。
ただ、「チープ風」と「チープ」なのは別物なんだよね。
懐かしい風の荒い映像、拙い絵、あえて音質を劣化加工させたエフェクト、洒落たジャケット、洒落た写真、トドメに分厚いフォロワー。
それを抜いた時、本当に音楽だけで戦える曲?
思い出作り?
遊びならそれでいいよ。
でもクリエイティブなことやってる雰囲気すごいけど、
それ「オシャレなことやってます」ってファンを騙してない?
してない?ホント?
音楽舐めてない?
そっか、ならよかった。
偉そうに語りましたすみません申し訳ありません私が情緒不安定感情ジェットコースターモンスターですごめんなさい。
僕よ、衝動的すぎるぞ、躁か?
商業主義の悪魔を駆逐しろと?
音楽の悪魔にでも取り憑かれたとでも言うのか僕は。
そう、でもこの人達は拙いながらに活動を始めていた。
僕よりも早く活動を始めていた。
実際は名前のことはどうでもよかったのかもしれない。
思いを込めた名前と同じ名前を使って、曖昧な雰囲気詐欺みたいな活動をしていたのが気に入らなかったのだろう。
全くもって逆恨み。
全然「正常な嫉妬」ではない。
残念ながらこれでは「無敵の逆恨み」。
なのでこうして文章にして昇華してみた。
実際言語化により逆恨みの部分はだいぶ消え失せて、「チープでも先出しされたこと」への純粋な嫉妬のみが残った。
悪感情だけ蒸発するということは、やはり嫉妬は健康な感情のひとつなのだろう。
ところでいまだ名前なんかで歩みを止めている僕は1歩目すら踏み出せていない、ただの0の人である。
そんなところでモタモタせず、さっさと1歩目を踏み出すべきなんだ。
しかしネーミングセンスの無い僕はまたここで時間を取られる。
面倒だな、「さっさと初めの1歩目を踏み出せ」という意味から「”初”と書いて”イチ”」と読むのはどうだろう。
え?ダサい?
え~~だから言ったじゃん。
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